Ka


 

加藤知子

Tomoko Kato

BWV.1001-1006

1999

 

 

川畠成道

Narimichi Kawabata

BWV.1004

2003

 

 

川原千真

Chima Kawahara

BWV.1001-1006

2007

 

 

久保陽子

Yoko Kubo

BWV.1001-1006

2004

 

 

久保田巧

Takumi Kubota

CHACONNE

1983

 live

 

久保田巧

Takumi Kubota

BWV.1004

1992

 

 

久保田巧

Takumi Kubota

BWV.1001-1006

2004

 

 

小林美恵

Mie Kobayashi

BWV.1004

2001

 

 

小林倫子

Michiko Kobayashi

BWV.1004

2006

 live

 

オレグ・カガン

Oleg Kagan

BWV.1001-1006

1989

 live

 

イリヤ・カーレル

Ilya Kaler

BWV.1001-1006

2007

 

 

ジュリエット・カン

Juliette Kang

CHACONNE

1994

 

 

セルゲイ・ハチャトリアン

Sergey Khachatryan

CHACONNE

2002

 

 

アナトリー・キセレフ

Anatoliy Kiselev

BWV.1004

 

 

 

アルバート・コチシュ

Albert Kocsis

BWV.1004

1960s

 

 

ルドルフ・ケールマン

Rudolf Koelman

BWV.1004

1986

 

 

レオニード・コーガン

Leonid Kogan

CHACONNE

1954

 live

 

ジェニファー・コー

Jennifer Koh

BWV.1004

2001

 

 

ユーリ・コルチンスキー

Yuri Korchinsky

CHACONNE

1970s

 

 

アロイス・コットマン

Alois Kottmann

BWV.1004

1981

 

 

アロイス・コットマン

Alois Kottmann

BWV.1001-1006

1997

 

 

ボジダラ・クズマノーヴァ

Bojidara Kouzmanova

CHACONNE

2002

 

 

デネシュ・コヴァーチュ

Denes Kovacs

BWV.1001-1006

1981

 

A B C D E F G H I JKr L M N O P Q R Sa Sk T U V W X Y Z &


 

加藤知子
Tomoko Kato

May 12-15, 1999  Jan 13-16, 2000
chaconne=14:30
( DENON COCQ-83389/90 )


 全曲CD。
 私は加藤の演奏を高く評価している。名演目白押しの邦人女流による無伴奏のなかにあっても、存在感は充分だ。
 加藤は82年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位となっている。第1位はムローヴァとスタドレル。3人全員がパルティータ全曲を入れているわけだが、その内容だけで比較すれば、加藤がトップとなる。 

(2007/07/08)



 

川畠成道
Narimichi Kawabata

Nov 02-04, 2003
chaconne=14:54
( VICTOR VICC-60386 )


 人気奏者、川畠成道による無伴奏パルティータ全5楽章。

 破綻のない演奏である。
 うまくいきすぎており、かえって落ちつきの悪さを感じるほどだ。私のようなヒネクレ者としては、こうした演奏を聴くと――失礼ながら――、そうとういじっているのでは?(つまり編集) と勘ぐってしまう。レコーディングであるので、悪いとは言わぬが……。

 すばらしい演奏としか言いようがない。だが、私には、この正確さ、マイペースぶり、不気味なほどの安定感がむしろ邪魔になり、この演奏を素直に享受することができなかった。
 私はもう10年以上音楽雑誌を手にしていないので、単なる勘だが、これはおそらくディスク評において、特選≠ノ選ばれたのでは、と想像する。
 私がもし、そういう役割をもらったとすれば、まず、特選印をつけるだろう。

 続けて、3度聴いた。すばらしい。
 しかし、酔えなかった。

 ともかく、鑑賞後に、いろいろと考えさせられた演奏だった。実はおのれの感受性が鈍化してきたにすぎないのでは……等々。
 一度、川畠のライヴを聴いてみたいものである。

(2009/01/05)



 

川原千真
Chima Kawahara

Apr 12-13, Jun 20-21, Aug 07-08, 2007
chaconne=14:13
( CREATION CRT-3100/1 CD-JAPAN )

 
 今年(2009)03月に発売された、川原千真による全曲。
 彼女は、「古典四重奏団」というグループがあって、そこの第1ヴァイオリン奏者として活躍中とのこと。

 バロック・ヴァイオリン使用であるが、それらしき特徴をとくに打ち出した演奏ではない。
 全体に美しく、淀みのない円滑な進行が心地よい。完成度は高いとはいえ、やや押し出しに欠けるか。 
 これがこの曲集の初ディスクであるか、あるいはそれにちかい人にとっては、まずまずの満足度は得られるだろう。

 録音は標準レヴェル。問題はない。残響やや多め、奏者とマイク間の距離を若干とっているか、といった印象である。
 ロケーションは、相模湖交流センター。

 ブックレットの解説が冗長で締まりがない。私としては、「約200年ほどジェノヴァの農家の納屋に埋もれていた」というこのヴァイオリンが、川原の手に渡るまでのいきさつに興味があり、だらだらとページ数を費やすくらいなら、そのあたりをもうすこし詳しく記してほしかった。

(2009/10/22)



 

久保陽子
Yoko Kubo

Jan-Jun, 2004
chaconne=14:02
( KUBOYOKO KBYK-1002/3 )


 ベテラン・久保陽子の無伴奏。
 音色にほどよいうるおいがあり、力まかせなところのない、女性ならではの演奏――と言っていい。
 派手ではなく、大胆さはない。軽やかで重量を感じさせはしないが、その代わり、竹人形を連想させる精緻、ていねいさがあり、掌中で温和な光を放つような魅惑がある。
 技巧もまったく問題ない。
 自分のペースというものを確実に理解していて、無理をせず、まるで窮屈なところがない。だが、安全運転とも違う。写真でいえば、シャッター速度と絞り、つまり露出が完璧に決まっているのである。

 最初の印象は「やや弱いか……」というものだったが、何度か耳をすませるうちにその清澄で深い味わいに気づいた。今ではお気に入り全曲セットの一つとなっている。
 第2パルティータもすばらしいが、続く第3パルティータがまた絶品だ。
 自主制作盤も、入手易。日本人によるすぐれた無伴奏としておすすめしたい。
 楽器は1740年製のグヮルネリ・デル・ジェス。

 録音はややマイクに近接した感じか。残響もほどよく取り入れており、久保の自然な演奏姿勢と相まって、ひじょうに聴きやすい好録音と言える。

 久保陽子の略歴については、ウィキペディアに詳しいので参照されたい。
 彼女は1943年生まれ。奄美大島出身ということだ。ヴァイオリンは3歳から始めたという。あの時期に、失礼ながら、南国の島にヴァイオリンを学ぶ環境が整っていたのか意外に思ってしまう。さらにそこから世界のトップ級にまで飛翔するなど、確率論で考えるとすごい感じもあるが、こういうのを嚢中の錐(のうちゅうのきり)≠ニいうのであろう。

(2009/03/14)



 

久保田巧
Takumi Kubota

1983  live
chaconne=14:36
( FONIT CETRA LMA-3022 )


 久保田は1983年、ミケランジェロ・アバド・コンクールで優勝した。その際のライヴである。
 シャコンヌだけを単独で演奏している。これも石川静のシャコンヌと同様、帰国の際、あっちの空港で没収されてしまったかのような録音であり、日本には届かず、知られぬままとなった。
 ミケランジェロ・アバドはクラウディオの父。

(2007/07/08)



 

久保田巧
Takumi Kubota

May 13-14, 1992
chaconne=16:40
( JOD CLASSICS JOD-123 )


 第2パルティータ全楽章完演。第3パルティータとのカップリング。朗々とうたう、きわめて魅力的な無伴奏だが、12年後の全曲録音盤はさらに上をいっている。

 解説によれば、使用楽器はピエトロ・グワルネリ1713年製。
 「デル・ジェスの兄」、とあるので、ヴェニスのピエトロであろう。
 グワルネリ一族に、ピエトロはもう一人いて、そっちはデル・ジェスの叔父&師匠であり、マントゥーアのピエトロと呼ばれる。
 ハンガリーのマジャールがマントゥーア作のヴァイオリンで無伴奏を入れている。

(2007/07/08)



 

久保田巧
Takumi Kubota

Mar 23-25, 2004
chaconne=16:56
( EXTON OVCL-00181 )


 久保田が満を持して録音した無伴奏全6曲。2002年にソナタ全集。2004年にパルティータ全集を入れた。
 彼女のシャコンヌを聴く。遠い過去から、樹が語りかけてくるようだ。飾り気のない無垢の魅力がある。
 すばらしい演奏。

(2007/07/08)



 

小林美恵
Mie Kobayashi

Mar 13-15, 2001
chaconne=14:34
( GES-12250 )


 ロン・ティボーの優勝者、小林美恵さんの無伴奏集である。人気の3曲が入っている。
 このCDは市販ルートに乗せられていない。まことに口惜しい。もったいないとしか言いようがない。メジャー・レーベル各社はなにをしとるのか。
 小林さんの音色には、心に染み入るような哀愁がある。女性らしく清楚で、やさしさと安らぎにあふれている。とくに、第1ソナタは比類がないほど感動的だ。

 小林さんご本人より送っていただいた。そういう経緯を抜きにしても、私の評価はいささかも変わることはない。

(2007/07/08)



 

小林倫子
Michiko Kobayashi

Sep 30, 2006
chaconne=14:20
( MPS企画 un-numbered )


 東京とロンドンを中心に活躍している小林倫子さんの無伴奏アルバム。タイトルはソロ・ヴァイオリンの世界。自主制作CDRである。ライヴ・レコーディング。
 邦人、それも女流ヴァイオリニストの無伴奏とあれば、かつて裏切られたことがなく、応援したい気持ちもあり、見過ごせない。

 バッハの第2パルティータのほか、同第3パルティータのプレリュードと第2ソナタのアンダンテ(アンコール)、ミルシテインの『パカニーニアーナ』、エルンスト『夏の名残のバラ』、イザイの第3ソナタ、竹内邦光『落梅集』、と魅力十分のプログラム。
 プライヴェート・ディスクとはいえ、緒方愛子や小林美恵盤(↑)と同様、この小林倫子盤もまた、技巧・内容とも、主要店にならべてある市販メジャー盤とくらべてもまったく遜色はない。
 白眉は当然、パルティータ第2番であり、シャコンヌとなろう。
 小気味よい躍動と静かな情熱が、のびやかな音色に乗って伝わってくる。尻上がりにテンションが上昇してゆくシャコンヌは、終曲と同時に熱い余韻を残す。そのあとにさりげなく添えられる花のようなアンダンテが涼しげでいい。
 第2パルティータ前半のリピート省略は惜しいが、これは無伴奏曲ばかり続くため、聴衆を飽きさせない配慮だった由。
 
 客席に設置したマイクで音を拾ったものらしく、いささかヴァイオリンとの距離を感じさせる。会場の音響もすぐれているとはいえないようである。物理面への不満を嘆いたところでしかたがないものの、演奏がいいだけに、これが十全な環境下で収録されていたなら、という欲が出てしまう。ただ、妙なリアルさがあって、これがこのときのライヴの雰囲気なのだと思ってみれば、これはこれでおもむきがあるような気もしてくる。瞑目して聴いていると、あたかも後方の客席にすわっているかのような錯覚にとらわれたりした。
 演奏中、ところどころゴロゴロと不審な低音が入る。会場(港区立高輪区民ホール)の下を通過する地下鉄の音である。
 ちなみに同様の例として、ビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビイ(※こちらは音というより気配)、リヒテルのカーネギーホール・リサイタル(※昔の記憶。自信なし)などがあった。

 小林さんはこのソロ・ヴァイオリンの世界のほかに2枚のアルバムを制作されている。そちらにも特筆しておきたい演奏がある。野平一郎氏と組んだ『クロイツェル・ソナタ』で、これは録音もよく、ただちに一般発売されても不思議のない、いや、されるべきすばらしい演奏だ。
 これらのディスクは小林さんからの直接購入が唯一の入手法となる(2000円/CD)。演奏家を演奏以外のことでわずらわせることになるが、愛好家としては聴いてみなければ始まらないだろう。HPはこちら

(2008/01/08)



 

オレグ・カガン
Oleg Kagan

Apr 16, 1989
chaconne=14:36
( ERATO 2292-45805-2 )


 ライヴ・レコーディングによる全曲。掲載の日付は上記のみ。一日で全部やったのか。聴衆ノイズは皆無といっていいほど。
 リヒテルとのコンビで知られているカガン。これはエラートに残したもので、今のところ、彼唯一の無伴奏全曲。廉価再発ずみ。感情におぼれず、思わせぶりなところのない、むしろストイックと言っていい好演だ。
 live classics でオレグ・カガン・エディションが刊行されている。それは30枚以上にのぼる一大集成となっており、そこにも無伴奏が何曲か含まれている。

(2007/07/08)



 

イリヤ・カーレル
Ilya Kaler

Feb 01-04, 2007
chaconne=13:49
( NAXOS 8.570277-78 )


 首に3つの金メダルをぶら下げている男――イリヤ・カーレルの無伴奏全曲。
 以前からその名は知っていた。いろんなヴァイオリニストの経歴、とくにコンクールの優勝歴などを調べたりすると、カーレル(カーラー)の名にしばしばぶっつかる。それもそのはずで、彼は、チャイコフスキー、シベリウス、パガニーニというメジャーなコンテストをずらずらっと制しているのである。
 NAXOS から大量のCDをリリースしていることには気づいていたものの、今イチ興味が湧かず、無縁のままになっていた。もともと私にはコンクールの覇者を信用しない――とくにヴァイオリンのそれにおいては――傾きがある。
 それが、T.S.さんの『CD試聴記』で、カーレルの無伴奏が出ることを知り、今度ばかりは食指が動いた。聴いたろうやないか、という尊大な態度があったかもしれない。即予約注文し、それが先日届いたというわけだ。

 ひとことで言って、美しい。キズがなく、スマート&スムースな流れが終始一貫している。音色も伸びやか、テクニックもしっかりしている。だが、なにか物足りない。スタドレルの演奏を聴いたときに覚えたような不足感だ。すなわち減点のすくない演奏であるが、新鮮な驚きにとぼしいのである。
 スイスイ呑める吟醸酒のおもむきがある。いくら呑んでも翌朝スッキリという感じだ。しかし、音楽というものを酒にたとえるなら、むしろ二日酔いになりかねない強烈であやしげな成分が――多かれ少なかれ――含まれているべきだと私は考える。
 ただ、1600円(Amazon.co.jp)なら買ってソンはなかろう。この曲を初めて聴こうという人には、妙な刺激もクセもなく、いいかもしれない。
 残響をたっぷり入れた録音。

 カーレルは1963年モスクワ生まれ。コーガンやトレチャコフに師事。上述のとおり、パガニーニ(1981)、シベリウス(1985)、チャイコフスキー国際(1986)の各コンクールで優勝を飾っている。彼はすでに、パガニーニのカプリース、イザイの無伴奏をリリースずみ。このバッハ録音完了により無伴奏三冠を達成した。これを達成した者としては、ほかに、リッチ、千住真理子、マリキアンらがいる。まだいるかもしれないが、それほど多くはないようだ。

(2007/07/08)

 


 

ジュリエット・カン
Juliette Kang

Nov, 1994
chaconne=14:18
( DISCOVER DICD-920241 )


 ジュリエット・カンが1994年、インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで優勝したときに制作したアルバム。シャコンヌを演奏している。ほかに、ベートーヴェンやイザイ、そしてマイ・フェイヴァリットであるエルンスト『夏の名残のバラ』入りなのがうれしい。

 カンは75年生まれの韓国系カナダ人。何度か来日してもいるようだ。

(2007/07/08)



 

セルゲイ・ハチャトゥリアン
Sergey Khachatryan

2002
chaconne=14:28
( EMI CLASSICS 7243 5 75684 2 5 )


 目をつけている。 ややまとまりすぎているきらいがあるが、ときおり「おっ」と思わせる刺激が飛んでくる。そこが愉しい。音色に図太さがある。そこもいい。
 シャコンヌonly。全5曲の盛り合わせ盤である。どうせなら『夏の名残のバラ』などもほしいところだが、 ブラームスの第3ソナタが入っているのでよしとしよう。

 セルゲイ・ハチャトリアンは1985年、アルメニア生まれ。 93年ドイツに居を移した。2000年のシベリウス国際ヴァイオリンコンクールでは15歳で優勝している。

(2007/07/08)



 

アナトリー・キセレフ
Anatoliy Kiselev

1960s?
chaconne=15:42
(MELODIYA C 10-06765/6)


 アナトリー・キセレフについては、よくわからない。旧ソ連の隠れた実力派、とでも言っておくしかない。
 ただ、ネット上で、この人に学んだという人を発見したので、ソ連の音楽学校で教鞭をとっていたらしい。現在もそうなのかもしれない。
 すくなくとも、日本における知名度は高くないだろう。これほどの音楽をかなでる人が知られぬままということは、早々に、ステージよりは後進を育成する道を選んだのだろうか。ジャケ裏にはなにごとか記されているが、すべてロシア語で内容は不明。

 実にみごとなパルティータ第2番である。
 LP一枚にこれ一曲だけをカッティングしている。最初の4つの楽章とシャコンヌ、それぞれに一面を充てている。
 リピートは完全実行しているが、まるで弛緩した印象をあたえない。
 さらに言えば、聴くという行為もなければ、聞こえるという現象すらなく、演奏家と音楽が完全に一体化しており、鑑賞者とバッハの音楽との単純明解な邂逅があるにすぎないのである。これはとても重要なことであると思う。

 録音もすばらしい。メロディアにしては、残響がふくよかで聴きやすく、キセレフのヴァイオリンから香り立つ気韻と風雅を過不足なく伝えている。メロディアのなかでも、上等とされるVSG盤なので、そのこともいくらかは寄与しているのかもしれない。
 60年代後半〜70年代半ばの録音ではないか、と私はみている。

 このすばらしい第2パルティータに比肩するものは……と見わたしてみる。シュムスキー、トーテンベルク、ミルシテインあたりに目がとまる。しかし私は、苦しみつつもこのキセレフを採ることになるだろう。

 だれにも、その人にとって、特別な演奏があるはずだ。キセレフのバッハは神韻縹渺、神気すら感じさせ、私にとって、まさに別格、至高の演奏となっている。

(2008/11/18)



 

アルバート・コチシュ
Albert Kocsis

1960s?
chaconne=14:35
(Qualiton LPX 1148)


 聴きはじめてすぐ、シゲティの演奏を思い起こした。音色がよく似ているのである。しかし、もっと軽やかで、あれほどの緊張は強いられない。それでも、シャコンヌでは聴き手の肺腑をえぐるような気魄が随所で顔をのぞかせる。
 今では、こんなふうに弾く人はいなくなっている。最近の人はみんなうまい。うまいに越したことはないけれど、そこを重視するあまり、「多少ヘタでも、たましいを感じさせる」演奏家が拾われていないのでは、とそんな危惧がくすぶる。
 フィギュア・スケートで、ジャンプの回転数が一つ増えたかどうかで大騒ぎする。そしてそこにポイントがはずんだりする。3回転が4回転になったからといって、観客の受ける感動がどれほど変わってくるというのか。

 アルバート・コチシュは1931年、ハンガリーのハトヴァン生まれ。ブダペストの音楽アカデミーで、Ferene Gabriel と Ede Zathureczky(※この人はコヴァーチュにも教えている)に学んだ。コンサートのほか、教育活動などにも積極的だった。その功績をたたえ、ハンガリー政府は1961年、彼にリスト賞を授与した――ことまでが略歴欄に記されている。ということは、このディスク、60年代前半の録音か。

 ハンガリーの Qualiton への録音。モノラルLP。バッハの無伴奏ソナタ第1番、イザイの同第4番をカップリング。

(2008/01/14)



 

ルドルフ・ケールマン
Rudolf Koelman

Feb 22, 1986
chaconne=
( 6818.734 )


 オランダのヴァイオリニスト、ルドルフ・ケールマンが第2パルティータ全楽章を演奏している。プライヴェート盤である。カップリングはイザイの第3ソナタ。
 よく使われるもののよくわからぬ表現にオーソドックス≠ニいうのがある。わからないから、私はこの種の表現を、ホントによくわからない場合の「逃げ」としてしか使わないが、このケールマンのバッハには、逃げずに使ってみたい気がする。
 おそらく、これがオーソドックスというやつなのではあるまいか。立派な演奏だが、フォーマルで折り目が正しすぎるようなところがあり、私としては不満だ。エンターテイナーというより、プロフェッサーの音楽なのである。いろんなものを聴きすぎて、どちらかというと変わったやつを期待する傾向が芽ばえているのかもしれない。この曲を初めて聴くという方へはじゅうぶんな感動をもたらす演奏ではあるだろう。

 ケールマンは1959年アムステルダム生まれ。ヘルマン・クレバースに学んだあと渡米、ハイフェッツの最後の弟子となり、78年から3年半師事した(※だが、ハイフェッツを彷彿させるようなヴァイオリンではまるでない)。
 1986年02月22日、オランダのヒルヴェズム、Wisseloord スタジオでの録音。デジタル録音だが、LPである。

(2007/10/01)



 

レオニード・コーガン
Leonid Kogan

Feb 14, 1954
chaconne=15:00
( MELODIYA M10 49287 000 )


 メロディアがドカンとリリースした「レオニード・コーガン・コンプリート・コレクション」。その第5巻である。
 モスクワ音楽院大ホールでのライヴ。1954年バレンタインデーのコンサートを丸ごと刻んだものらしい。シャコンヌが含まれている。2LP。CDにもなった。いずれも廃盤で、中古でもあまり見かけないところをみると、コーガン・ファンがガッチリつかんで放さないと忖度する。

 独特の節まわしだ。表情豊かで雄渾であり、大きなうねりがしばしば押し寄せるなど変化に富む。さすがは大物の貫禄である。ライヴというのに、異様な静けさが会場を支配している。終曲と同時に湧く拍手の大きさに、こんなに聴衆がいたのか、とちょっとビックリさせられる。

 この人も全曲を録音すべき人だった。スタジオ録音は第3ソナタと第1パルティータのサラバンドが残るのみ。このシリーズには、第1パルティータと第3ソナタの演奏も入っていた(いずれもライヴ)。
 コーガンは2挺のグァルネリウス・デル・ジェス(1726年製エクス・コラン& 1733年製エクス・ブルメスター)を使い分けていた。これもどちらかを使用しての演奏だったはずである。

(2007/07/08)



 

ジェニファー・コー
Jennifer Koh

Jul & May, 2001
chaconne=15:25
( CEDILLE RECORDS CDR 90000 060  CD-USA )


 ひじょうに力強いヴァイオリンの音が大盛りといった感じで迫ってくる。直接音重視の録音で、客席の最前列で聴くおもむきがある。デジタル臭のない、アナログ的な音造りだ。演奏内容もすばらしい。
 カップリングの2曲、バルト、レーガー、それぞれのシャコンヌも力感あふれる演奏で聴かせる。

 ジェニファー・コーはイリノイ州、グレン・エリン出身。両親は韓国人という。
 第10回(1997)チャイコフスキー・コンクールでは、優勝者なしの2位をチェボタリョーワと分けあっている。

 2001年、シカゴの放送局WFMTにて録音。

 以下、蛇足ながら――。
 それにしても、購買欲が萎えるようなジャケである。
 彼女自身のウェブサイトなどで拝見するジェニファー・コーは、こんなにオバハンくさくはなく、ブサイクでもない。バック・カヴァーの写真のほうがよっぽど感じがいい。よりによって、これを採用することもなかろうに……。 

(2009/09/19)



 

ユーリ・コルチンスキー
Yuri Korchinsky

1970s
chaconne=14:58
(MELODIYA 33 C10-09937/8)


 ユーリ・コルチンスキーはソヴィエトのヴァイオリニストである……らしい。というのも、ジャケはすべてロシア語にて読めぬうえ、ネットで検索をかけても、この人の情報は皆無と言っていいほどなのだ。
 ほとんど謎の人であるが、ロシア語による略歴をながめると、1975年になにかがあったようである。それが音楽学校を卒業したとか、コンクールの入賞などであるとするなら、1950年代生まれというあたりになる。
 メロディア盤の製造年の手がかりとなるガストナンバーは "73" となっており、以上のことから、だいたいこの録音も70年代中ごろにおこなわれたとみていいのではないか。 

 このシャコンヌはみごとだ。息詰まるような迫力はないものの、楷書そのものの演奏で、テンポを動かさず、まっすぐ前をにらみつけて突き進んでゆく雰囲気といい、かなりのテクニックをお持ちのはずなのに、あえてそれを隠しているという感じの格好良さといい、むこうから手招きするというよりは、こちらから寄り添ってゆきたくなる演奏である。

 まだバリバリの現役であってもおかしくない年齢のはずだが、コルチンスキーは今ごろ、いったい、どこでなにをしているのだろう……。 

(2008/05/30)


「1975年のなにか」というのは、パガニーニ国際コンクール優勝であることが判明。

(2008/12/2)



 

アロイス・コットマン
Alois Kottmann

P1981
chaconne=
( HARMONIE DER WELT HMW-598 )


 LP。アロイス・コットマンによる第2パルティータ。
 彼は長年にわたり、無伴奏を小出しにリリースしてきた。 これは90年代後半に入れた全曲とは別録音。録音データの記載なし。マルPは1981となっている。カップリングは第1ソナタ。
 LP時代にはほかに、第1パルティータ&第3ソナタを入れている(P1985)。 ひょっとすると残りの2曲も入れているかもしれないが未確認。

(2007/07/08)



 

アロイス・コットマン
Alois Kottmann

1997
chaconne=17:54
(MILISMA MELI-7135/6)


 ようやく宿願達成だ――。
 81年、85年とレーベルを変えて2曲ずつ、計4曲の録音を完了。 あと2曲(BWV1003&1006)で全集完成というところで足踏み。待てど暮らせど、残りを入れる機会がめぐってこない。 12年の歳月が流れ、ようやくコットマンにチャンスが! しかも、全曲まとめて入れましょうという。さぞや、うれしかったことだろう…… と勝手に想像して愉しむことにしている。
 彼はこのほか、同レーベルに第3ソナタ、単独シャコンヌを入れている。 ゆったりと18分弱。演奏表現としては地味だが、落ちつきのあるいいバッハを聴かせる人だ。

(2007/07/08)



 

ボジダラ・クズマノーヴァ
Bojidara Kouzmanova

P2002
chaconne=14:19
( VOICEART VA 109021 )


 ボジダラ・クズマノーヴァ(クズマノヴァ、クズマーノヴァ、クズマノワ、コウズマノヴァ……)は1977年、ブルガリアのプロヴディフ出身。現在はウィーン在住。
 ジャケ写真はどこかで見たことのあるような顔である。中村晃子かマイケル・ジャクソンか……。

  それはいいとして、彼女には強力推薦マークをつけたい。highly recommended ってやつですな。
 彼女の『チゴイネルワイゼン(Zigeunerweisen, Gipsy Airs)』の映像が動画共有サイトで公開されているので、ひょっとすると日本にも隠れファンがけっこういるかもわからない。演奏はみごとで、颯爽としたその弾きっぷりは、視覚的にも大いに魅せるものとなっている。
 日本では「マイナーな存在」と言っていいのだろうが、現在メジャーと契約している女流で、彼女よりも劣るヴァイオリニストはすくなくないと断言できる。

 このディスクではシャコンヌのみを演奏。カップリングはフランクのソナタ、そして得意としている(?)『チゴイネルワイゼン』 (ピアノ伴奏版)。いずれもすばらしい。ただし、『チゴイネルワイゼン』は、くだんの動画サイトにて公開中のものがさらによい。 しかもあちらはオーケストラ伴奏版だ。この曲は、やっぱりオリジナルのオケ版のほうがいいように思う。
 バッハの無伴奏は、このシャコンヌのほか、別のディスクに第2ソナタのアンダンテを入れている(これまた良し。Machold CD)。
 使用楽器は、彼女のHPによれば、どうやら1725年製ストラド "Da Vinci" のようだ。

 日本のプロモーターは早急にクズマノーヴァを招聘すべきである。今ならギャラも目ん玉が飛び出るほどではないはず。また、ジャズの澤野工房のような活気あるレーベルが彼女のCDを制作してくれぬか、と本気で期待もしている。
 とにかく、「はやいこと買いなはれ」ということですワ。

(2007/12/22)



 

デネシュ・コヴーチュ
Denes Kovacs

P1981
chaconne=14:36
(HUNGAROTON SLPX-12033/5)


 3LP全曲。その座をセントヘイに譲るまで、フンガロトンの無伴奏といえばコヴァーチュだった。
 温雅な音色に惹かれる。アプローチも正統的で明確。
 それにしても、ハンガリーのヴァイオリンは、「ことごとく」と言いたいほどいい。
 コヴァーチュという人は小編成のアンサンブルにおいても手腕を発揮するようで、弦楽トリオで入れたモーツァルトやハイドンが、またすばらしいデキである。

 デネシュ・コヴァーチュは1930年、ハンガリーのヴァーツ(Vac)生まれ。ハンガリー音楽アカデミーで、Dezso Rados と Ede Zathureczky に師事した。2005年没。

(2007/07/08)



chaconne

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