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月は誰に微笑んでいるか
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さあね・・
知らないよ。 だけども 今夜はあたしが 抱いてるよ。 あたしは 森の小さな泉 さ。 微笑んで? ・・・そうさ。あのひとはね、 お日さんに あたったら 焦げてなくなっちまうような、 弱いヤツにばっかり優しいんだ。 だから 涙は 見せらんないだろ? そう、ここへ・・・・ 泣きに来るのさ。 「月夜の藪」 月の光は 何を育てるの? よるにさくはな? 破られた鉄条網は いばらの茂みを 羨ましそうに 眺めながら ぼんやりと 考えていました。 「繁華街の片隅で」 さっき蹴られた 派手な缶は ピンクのチューハイを ドクドク流して 小さく呻いておりました ふと、優しい月の 眼差しに気づいて 缶は照れくさそうに 笑いかけました 「は、は、は、・・・キミも一緒に飲まないかい?」 今夜は ほんのり おぼろ月 「枯れた野原で」 空はみるく色 小さい木枯らしが 吹き始めると 枯れかけた ススキの穂は いっしょうけんめい 背伸びして お月さんに はたきをかけた お月さんは くすぐったかったので ケタケタ 笑っていました。 2003/11/28 「冬支度」 月の吐く息より 星の紡ぎし 糸をもて、 粉雪のドイリー 編みましょう。 小さな小さな レースの ドイリー お月様見守る 恋人たちの クリスマスに 降らせるんだから。 2003/12/ 1 「真昼の月」 すこし曇った日でした ふわっと空から白い物が舞ってきて、 もう、雪かと思って見上げると 松の樹の上にもずがいました。 ああ・・・・・・・すずめだ。 落ちてくる雪ではなく すずめの おそらくは胸の柔らかい羽毛だったのです。 それは、まるで空に向かって捧げられた 美しい雪のようでした。 すずめは どこまでも空へ向かっていました。 喜びを感じるほどに。 はねになって、もずになって・・・・ 真昼の月が眠そうに 雲間から覗き 優しく すずめを見守っていました。 2003/12/ 5 「ネオンの海に身を沈む」 其処は 眩いネオンの海 さまざまの光が ゆりかごのように ゆらゆらと揺れていた しかし なかには 一人黙って居るネオンもあった ひときわどぎつい 赤のネオンのうちの ひとつがそれだった。 殆ど切れ掛かった赤いネオンは空を見上げた。 真ん丸い月が 光っていた。 それでも、ネオンの海から見れば、地味なもので 誰も目をやる人もなかった。 「なに笑ってんのよ あんた ずるいよ・・・・・・ あたし 一番綺麗なはずなんだよぉ・・・・・・なんで? なんでもう、あたしは 終わりなの? いいナ ずっと、光ってるんだネ・・・・・・・ あんたンとこ、行きたいなぁ・・・・」 月は 微笑んでいた。 寂しげに。 2003/12/ 8 「ドラム缶」 ぴんぴかの満月の夜 空き地の資材置き場の一角に忘れられた ドラム缶にも、月の光は 届いていた。 ドラム缶は、底が腐っていたが 雨水が少しだけ溜まって、赤く濁って油が浮いトいた。 月は昇り、やがて すっぽりとはまったように ドラム缶の中の汚い水に映りこんだ。 「ほうらっ!捕まえた。はっはっは。 はぁ・・・・ こんな年寄りで汚いわしの所にも 来てくれてありがとうよ。 ううーん、あったかいねえ。 ああ、腹の底からぎんぴかに戻ったようだよ。」 ドラム缶は満足そうに眠ってしまいました。 2003/12/ 9 「銀波」 月の光は、満月から 青黒い海の水面に流れ出していました。 満ちた光は 海の底に溶けてゆき、 貝たちは それを誰よりも沢山食べようと 殻をパクパクさせたり、深呼吸したり、賑やかでした。 やがて 月は傾くと 何事も無かったかのように みな、大切そうにぴったりと殻を閉じて眠りました。 殻の中にたっぷりと吸い込んだ月の光の中で。 貝殻の内側が光ってるのはそのためなんです。 でも、内緒にしといてくださいね。 2003/12/14 「雪うさぎ」 月のうさぎたちは 青い星に降りてみたくてたまりません。 静かな冬の夜、 ふわふわ さらさら 雪になって みんなで降りていきました。 沢山遊んで朝になり 今度は人間の子供達が やってきて 大喜びで 雪遊び。 まだほんの少しの雪だから 作れたのは・・・雪うさぎ。 うさぎ達は 嬉しくて おすましして お盆の上にちょこんと並んでいました。 夜、お月様が空に昇りました。 「帰っておいで、うさぎ達。」 うさぎはみんな光に乗って 空へ帰っていきました。 次の日にはもう、雪うさぎは すっかり溶けてしまっていました。 2003/12/23 「青に焦がれて」 月が毎日 微笑んで眺めているのは、 青い、青い、この地球。 大好きな青い星。 たくさんの 命を乗せた 暖かな青 光り輝く 青。 青い海、青い山、青い鳥、青い風、青い道、青い青い・・・・ 動物も、人間も、音も、時間も、 何もかも青いのだと、 月は 思いを馳せていた。 自分も青く 染まってみたいと思いながら、今日も静かに 寄り添っていた。 2004/ 1/ 9 「光りと闇と」 月影から するりと抜け出した黒い猫。 その爪が裂いた 夜の帳の傷跡から 人の世の悲しみが 零れ出した。 それが、都会の夜景の煌きでした。 月は、あまたの 悲しい瞬きを 溢れる光りが 更に広げていく傷を 優しい光りもって 癒そうと 空にある限り 微笑みを注いだ。 光りが 影を生み 闇が 光りを誘う(いざなう) 光りは 照らし 闇は 包む 人の心に 生まれた闇を癒せる物は 光りなのか? 闇なのか・・・・・ 2004/1/18(一部改正) 「星の宴」 大きな古い桜の樹が 丘の上に生えていました。 毎年桜の花が満開になるのを もう何年も、何十年も昔から 空の星達は心待ちにしてきました。 星の宴、 星達を招いてもてなすのは 月でした。 夜も更けると星達は 青い地球へ降りてきて 桜の樹に腰掛けて 甘い香りに酔い 楽しげにおしゃべりしたり 歌ったり、踊ったり、 賑やかに遊びました。 一番鳥が鳴く前には 遠くの星は 宴の余韻に浸りながら 長い尾を引いて いい気分で帰って行ったのですが、 うっかり眠ってしまった星達は 日も出て、春の風に起こされると 慌てて樹から はらはらとこぼれ落ちました。 それらは 花ふぶきと一緒になって くるくる回り 寝ぼけまなこで 風に押し上げてもらって やっとの事で 空へと帰って行ったけれど なかには一つくらい 落っこちて来てしまったのが あるのだろうと、 少女は毎年花びらを 一枚だけ拾って 手帳に挿むことにしておりました。 少女が手帳を開いて見る時月も、 「今年は少女に掴まってしまった星が いるかしら?」 と、そっと覗き込んで見ています。 だから、月は 昼間も空に昇っていることが あるんですね。 2004/4/12 「深緑を愛でながら」 青々と揺れる樹の葉達に お月様は一つ一つ蜂蜜色の光を塗っています。 さらさら 夜風に吹かれて 誰も知らない夜 のんびりのんびり 新しく育った葉を慈しんで 暖かな光を塗っていきます。 それはね、 夏も終われば 地面にこぼれて行くでしょう? そうしたら、光を塗った全ての葉が 月の色に輝いて地上のみなを包んでくれるでしょう。 次に迎える冷たい季節が寂しくないように・・・・ お月様は静かに歌いながら 樹の葉に光を塗っています。 2004/5/6 「夏の初めに」 夏の始まりの夜の草むらに涼しい風の波が渡ってゆきます。 草むらには、小さい生き物たちがひそんでいました。 揺れる草の葉の海に月の光は降り注ぎ、 気持ちの良い夜でした。 らるのる と、 光の筋を辿ってゆっくり巻き取っていったものは、物静かな蝸牛になりました。 りるりる と、 光の声を戴いたものは、月の一番美しい秋のうたを歌う、こおろぎになりました。 たぷとぷ と、 広げた翅に蜜のような光をしっとり浴びて夜通し踊っていたものは、ビロードのような翅の蛾になりました。 かしゅくしゅ と、 銀の光を受けながら葉陰で翅をぴったりと閉じて眠っていたものは、ふわりと軽いちょうちょになりました。 ぽうぽう と、 淡い光を集めてギュッと丸め,抱きかかえていたものは、寂しがりの蛍になりました。 小さい生き物達はそれぞれに、優しい月の光をたっぷりと受け止めて、自分の一番好きな形になりました。 2004.06.02 「くちなし」 くちなしの花が咲きました。 白く眩く光を放ち月へ愛を告げました。 むせ返るほどに甘く香り 月の化身を呼び寄せました。 誰も知らない筈の秘め事を あおむしは知ってしまいました。 彼女は養ってくれたくちなしの 秘密が誰にも知られぬように 土の中へと姿を消して やがて萌黄色の蛾に姿を変えて現れました。 そして月とくちなしへの親愛の証に 初めて広げるその翅から鱗粉を全て捨て ガラスのような透明な翅で飛び立ちました。 未だに誰にも尋ねられまいと 忙しげに飛び回って蜜を吸っているのですが 私が見た彼女の大きな目は 青磁色の月のように青く美しく透き通っていました。 2004.06.05 「月の光の繕い物」 むかし むかし、魚達ははだかで暗い水底に隠れていました。 かわいそうに思った月は、うろこを編んでやりました。 空の上から小さいピースで沢山編んでは みんなに送ってやりました。 硬いよろいのような厚いのや、透き通った薄いのや、 少しずつ違うコスチュームを 作ってやりました。 みんなにうろこがゆきわたると 魚は光の糸を月から貰って 自分達で繕うようになりました。 体が大きくなるのにあわせて、沢山あるうろこを一枚ずつ 一回り大きく編み足していくのです。 自分で繕うのは面倒だと、とろとろした光の糸をそのまんま 体にまとったものもいます。 他のものとは違った物が欲しかったとびうおは羽を編んでみましたし、 くらげはチュールレースでシースルーファッションが自慢でした。 お気に入りの服を着て魚達は楽しげに泳ぎ回り 美しい月夜の晩になると魚達は、ファッションショーや パーティーを開きました。 2004.06.08 「夏至の頃」 涼しい夕風に吹かれながら月と星達はゴルフ練習場の緑色のネットの上に腰掛けておしゃべりを楽しんでいました。 そこへ、大きな青いポリバケツを持った二人のお爺さんが、にこにこ笑いながらやって来て声をかけました。 「今年も少し、分けてもらえませんか?」 月と星達は待ち構えていたように、喜んで光を投げかけてやりました。 「さあどうぞ。たっぷり持てお行きなさい。」 「ありがとう。」 一人のお爺さんはとろりとした月の光を、もう一人のお爺さんはさらさらした星の粉を、青いバケツに集めました。 「もっと持ってお行きなさいな。」 月が言うとお爺さん達は 「いえいえ、もう持ちきれません。」 「私達にはこれが精一杯です。でも、お陰様で今年も子ども達みんなが喜んでくれますよ。」 と、一杯になったバケツをそれぞれ持って、ひょっこりひょっこり 帰って行きました。 いつしかうっとおしい梅雨も通り過ぎ、 台風がやって来たり、蝉が鳴き始めて あっという間に夏休みです。 プールに花火、楽しい時は駆け足で過ぎ、 夏休みも半ば終わりに差し掛かり待ちに待った夏祭りが 小さな公園で今年も開かれました。 子供達がわくわくしながら巡る屋台の中には、 あのお爺さん達が居ました。 御爺さん達が 子どもや、母となり父となってまたその子どもの手を引いた かつての子ども達に囲まれて作っていたのは、 一人は綿菓子、一人はべっこう飴でした。 「お爺さん!!早く、早く!」 子ども達にせかされながら 二人のお爺さんの嬉しそうな顔は夜店の灯でピカピカ輝いていました。 2004.08.06 |
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「シーグラス」
砂浜で割れてしまった瓶のガラスは 鋭く光って誰も寄らず、浜辺の嫌われ者になって 一人ぼっちで転がっていました。 ガラス瓶の中に入っていた しゅわしゅわ心地よい 綺麗な色の飲み物は、みんなが嬉しそうに飲んでくれたし、 とても自慢でした。 でも、もう元通りにすることは出来ません。 波はガラスを不憫に思い、 「おまえは月のかけらだよ。こんなにキラキラ綺麗だよ。」 と、何度も何度も 撫でました。 優しい嘘に身をゆだね ガラスはやがて おぼろに丸くなりました。 石のように、貝のように、青白く滑らかになって 静かに砂に埋まって暮らすようになりました。 それでも潮の満ちる星月夜には、波に洗われながらガラスは 鈍く透明な追憶に 一人で涙を流します。 すると月はガラスを見つけて、微笑み照らしました。 「私のかけら、私のしずくよ。」 ガラスのかけらは、優しい月の光を受けて穏かに光ると涙をぬぐいました。 波は静かに寄せては返し、浜辺のすべてを 平らにしていきました。 尖ったものも、えぐれたものも、 ゆっくり ゆっくりと。 「観葉植物」 作り笑顔のような緑色を保てなくなった観葉植物の大きな鉢は、 道路の脇に放り出されていました。 見向きもせず行き交う人々も疎らになり、 やっとひんやりとした風ひとすじに おしろい花が香ってくると、 責めるような日の火照りも収まり、夜が静かに帳を下ろしました。 この澄んだ花の香りを観葉植物は初めて知りました。 それと、いつもオフィスビルの窓から ちらりと覗き込んでくるのを楽しみにしていたあの月から、 こんなにまで光を受けるなんて、不思議な気持ちでした。 心があふれてくるのを感じながら、 枯れてしまった観葉植物は、 もう涙の一粒もありませんでした。 昼間、太陽に照らされ追い討ちをかけるように 痛めつけられてしまったのです。 その時は苦しく、何もかも恨めしく思えました。 だけど本当に最期の時に、どこかに大事に取っておいてくれたような 優しい花の香りと月の光に包まれて、穏やかなここちで 観葉植物の命は終わってゆきました。 「僕はただ、ふるさとの南の島を思い出させてやりたかったんだ。」 「分かっているよ。でもね、あの子は南の島を知らなかったよ。 もっと君に包まれて生きてこられたら、きっと違っていただろうね。」 話していたのは、月と太陽でした。 太陽はしばらく考えていました。それからゆっくりと また話し始めました。 「あの子の魂が昇って来たら、僕が抱き上げるよ。 そしてゆっくり休ませたら僕の光に乗せて、南の島の木々のもとへ送ってやろう。」 「ああ、それは素敵だね。」 南の島の一本の木に命の光は降り注ぎ、やがて実が生って、観葉植物はまた芽を出す時がくるでしょう。そしてふるさとの地で根を張り、太陽をいっぱい浴びて、仲間たちと幸せに暮らすでしょう。 |
| 月繋がり |
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