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「のだめカンタービレ」のドラマ化

 音楽大学の学生を主人公としたラブ・コメディー漫画「のだめカンタービレ」がドラマ化されると報じられている。去年2005年の夏に矢張りこの漫画がドラマ化されるらしい、と書いたのだが、その時は漫画作者の方がホームページで否定されていてその旨追記した。
 それが一年経って本当にドラマ化されることになった模様だ。が、主人公である指揮者を目指すエリート音大生にはクラシック音楽とは縁が無かった俳優氏が配された由、これには少々不安を感じてしまう。現在ピアノにバイオリンに指揮まで猛特訓中だというが。ピアノやバイオリンは何とか様になっても、指揮真似だけはそんなに簡単なものでないことを、老婆心ながら申し上げたいと思う。

 お節介ついでに指揮真似の極意を伝授差し上げたいのである。それは身体の動きを極力少なくして、左手は滅多に使わないことである。真っ直ぐ立って右手だけで1、2、と振った方が、体をくねくねさせて左手をふらふらさせるより余程プロっぽく見えるだろう。

 小沢征爾は突っ立って指揮なんかしていないじゃないか、という声が聞こえてきそうだが、あの動きには意味があるのである。その意味を忠実に再現したい時にはあの動きを真似るしかない。
 しかし今回ドラマで演じられるのは小沢征爾ではない。それどころか架空の人物、漫画の中の登場人物である。漫画という制約の中で再現された動きを真似るのには相当困難が伴うと思う。となったら少しでもプロっぽく見せることが一番肝要ではないかと思うのである。

 音楽の世界とはいえ指揮者の仕事は主に集団の統率である。だから指揮真似をする時も統率ということを念頭に置いてやった方が良い。だから目は常にオーケストラに向けていた方が良いだろう。目を瞑って腕だけ動かす方が何となくカッコいいが、それは時々でないとウソ臭くなると思う。
 基本的に指揮者の動きはその音楽と一体だというのが僕の経験則である。例えば甲という指揮者のCDに合わせて指揮者・乙の指揮真似をやると無理がある。乙のCDの演奏に合わせてやり易い様に指揮真似をしてみると、大体乙もそういう風に指揮している。その動きがあってその音が出るのである。面白いことにこれは可逆的な現象で、その音に合わせると元の動きに戻るのである。

 それはとも角、漫画の登場人物にモデルとなった実在の指揮者がいるのなら、その人のCDに合わせて自由に腕を振るのが指揮真似には一番早い。なまじか正しい方法なんかを教えられると、却っておかしなことになりはしないか。他人事ながら心配になるところだが、少々おかしいからといって俳優氏を責めてはいけない。指揮真似は非常に難しいのだ。

(Tsusei, 12 August 2006)

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