動揺
この間本屋さんで23年振りに漫画コミックを買った時のことだ。
レジのアルバイトと思われる若い女性に精算して貰ったところ、カバー(書皮)を掛けるかどうか尋ねられた。コミックにカバー?と一瞬思ったが、立派な大人がこの賑やかな表紙の本を剥き身で持ち歩くのは多少憚らないこともないのでお願いした。
レジの女性は一枚カバーを手に取って作業を始めた。そこで何となくその女性に動揺の様なものが見えた気がしたのである。おやと思って眺めている内別段不具合無くカバーを掛け終えた、と思ったらもう一枚新しいカバーを取り出して一枚目のカバーを外してしまった。
女性は新しいカバーを一旦は掛けたのだが、また外して今度は表紙の腹側の折り目を爪でしごき始めた。傍目にはそれ程念入りにする必要も無いと思ったがまだしごいている。
作業をじっと見詰めているのがまずいのではないか。もしかして焦らせているのではないか。ひょっとすると彼女はこのバイトを始めて日が浅く慣れていないのかもしれない。今日始めて売り場に立ったとか。等と考えが巡り始めると段々こっちが焦ってきた。時間が掛かっているのを気にしない風情を醸す様に、なるべくぼんやり突っ立っている様に気を遣った。
一体何が彼女の動揺を生んだのか。会計前の声の掛け方がいけなかったのかも知らん。今時の人には黙って本を突き出す位で丁度良いのかもしれない。
勿論別に動揺も何もしていないかもしれない、或いは考え過ぎか。そんなところにカバーが仕上がってきた。用意した100円玉4枚を渡そうとすると、409円になりますと言う。仕舞った財布を慌てて取り出して、あれなら間違い無くぼんやり立っていた様に見えていたと思う。
(Tsusei, 20 November 2006)