サン=サーンス
この間テレビのチャンネルをあちこち回していたら、ピアノ協奏曲をやっていた。耳当たりの良い曲でちょっとモダンな響きもするが全体的にはクラシック的な音楽だな、と思っていたら、それはもう独奏ピアノが腕と指がめまぐるしく動く超絶技巧になってフィナーレを迎えた。
余りにとんでもないのでラフマニノフかと思ったらサン=サーンスの第5協奏曲と字幕に出た。サン=サーンスもラフマニノフ同様名ピアニストとして有名だったのだそうで、これまたラフマニノフ同様自分のための協奏曲を書いたのかも知れないが、しかしそうだとすればサン=サーンスという人はきっと相当なピアニストであったのだろう。
サン=サーンスはブラームスと2歳しか違わないが20年以上長生きしたからずっと最近の人の様に感じる。「動物の謝肉祭」がなんといっても有名だが、他に「オルガン交響曲」と呼ばれたりする交響曲第3番「オルガン付き」はロマン派らしい美しい作品で、演奏会で時々採り上げられるしCDも沢山出ている。
しかし元々名ピアニストとして鳴らした人だけに、ピアノ曲の特に独奏作品にその本領があると考えたくなるのは人情だろう。実際ピティナのホームページを見てみると面白そうな小品も含めて沢山リストに載っている。ところがこれが、録音が殆ど無いどころかそもそも楽譜が容易に手に入らなかったのである。
もう少し調べてみると、サン=サーンスのピアノ作品の楽譜が本格的に纏まって出版され始めたのはつい最近――2007年のことだったそうだ。30も年下のドビュッシーが革新的な作品を残して先に亡くなったこともあって、旧時代の化石の様な扱いを受けてしまったらしい。「オルガン交響曲」を聴くとラフマニノフのフランス版といった作風だと思ったからもう少し人気があって然るべきと思っていたが、そういう事情があれば致し方なかった。ただそうして楽譜が出揃ってくれば、必ず再評価されるばかりか一大流行となって、腕扱きの愛好家がこぞって弾きたい作曲家に挙げる様になる時代も近いかも知れない。
それにはもう一押し、誰か人気のピアニストがレパートリーとしてレコードしてくれれば完璧だ。フランスにはエマールとかベロフとかカツァリスとかグリモーとかティボーデとか、今売り出し中のヌーブルジェに至るまで活きの良いピアニストがごろごろしているから、サン=サーンス・ルネッサンスみたいな事が興って全然おかしくないと思う。
(Tsusei,22 December 2008)