盲目の歌人・山崎方代

盲目の歌人・山崎方代




 郷里への旅から帰って、留守中の新聞を読み返していたら「読売新聞」6月13日朝刊の読書欄に「山崎方代の本」という記事があった。

 山崎方代さんには生前、一度だけ会ったことがある。もう何年前のことか忘れてしまった。1914年山梨県右左口村に生まれ、1985年に亡くなったと記事にあるから、おそらく1970年代のことだったろう。最初の歌集「方代」が出て、その人となりに関心を持ち、盲目で無一物の暮らしをしている彼の世話をしているという横浜の歌人(この人の名も忘れた)の紹介で、鎌倉に会いに行った。

 方代さんは戦争で盲目になり、戦後鎌倉に住み着いた。といっても家は持たず、瑞泉寺の庭の掘っ立て小屋のようなところに棲んでいた。妻子はなく、酒と歌だけの生活だった。種田山頭火や尾崎放哉などを思わせる漂泊の詩人のようだった。

 何を話したかはもう覚えがなくて、霞の向こうのような趣きだが、顔や表情だけが妙に印象に残っている。色の黒い、ゴツゴツと骨ばった農民のような顔つきだった。

 ふるさとの右左口郷(うばぐちむら)は骨壷の底にゆられてわがかえる村
 卓袱台の上の土瓶に心中をうちあけてより楽になりたり

 記事によると、歌集に「右左口」「こおろぎ」(短歌新聞社文庫)、「迦葉」「山崎方代全歌集」(不識書院)、「なんじゃもんじゃ」(文芸春秋)、第1歌集「方代」、随想集「青じその花」(かまくら春秋社・再刊)、大下一真著「山崎方代のうた」(短歌新聞社)、田澤拓也著「無用の達人 山崎方代」(角川書店)が出ているとある。(2004/06/16)

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Last Update:2004/10/17
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