合併しない宣言
合併しない宣言の町
全国紙やテレビではあまり取り上げられていないが、今地方では市町村合併が最大の話題である。そんな中で福島県矢祭町が「平成の大合併」を前に2001年10月31日に「市町村合併をしない矢祭町宣言」を町議会の全会一致で決議し、町長もこれを支持したことは地方ではよく知られている。その考え方を知りたいと思って自治体研究社から出版されたパンフレットに目を通した。
私自身も今全国各地で進められている「平成の大合併」には少なからず疑問を抱いている。基本的に自治体は小さい方が、より直接民主主義に近くなり、きめ細かい行政サービスが可能になるからである。また小さい方が、地域に対する愛着も強くなり、自治の密度が高くなると考えられる。米国やフランスなどの自治体はそういう形になっているといると聞く。
ところが「平成の大合併」は、それとは反対の方向にある。国の交付税など地方への補助金が膨大な額になり、これを減らしたいというのが最大の理由である。たしかに合併すれば、首長も助役も収入役も、また議会議員も少なくて済むから人件費が節約できるし、効率的な行政サービスもできるだろうが、サービスのきめ細かさは確実に低下する。
また新市庁舎に近い地域は、その市の中心となるからよいだろうが、そこから遠い地域は不便になり、過疎化が進むのもまた事実である。そういう意味で私は合併に疑問を抱いている。
だから合併する場合、このマイナス面をどう克服するか、周辺となる地域の住民にそれを詳しく説明する必要がある。そういう面で矢祭町の宣言は、自分の町が合併によって周辺地域となることを懸念して合併に反対したのである。
しかし、宣言を読んでみると、矢祭町は合併そのものに反対しているのではないようだ。40年前の「昭和の大合併」で血の雨が降るほどの苦い体験があって、そんな事態を2度と起こしてはならないというのが反対のもっとも大きな理由であった。
そのためにそれ以来、同町は行政の徹底的な効率化を進め、インフラ整備もほぼ目標を達成するほどに成し遂げてきたという。そういう同町の努力には敬意を抱く。
しかし、多くの自治体はそういう努力をしてきただろうか。自治体財政の60%以上を地方交付税や補助金に頼りながら、豪華な庁舎を新築したり、ほとんど利用もされない文化会館を建てたりしてきた自治体は多い。
外国を旅行すると、小さな町の役場は古い小さな建物が多い。それをきれいに使っている。この夏訪れたオーストリアのザンクト・ギルゲンやモントゼーのラットハウス(市役所)はいずれも小ささな建物だったが、きれいに装飾が施され、まるでおとぎの国のお城のようだった。それが観光名所にもなっているのである。日本で市役所が観光名所になっているところがあるだろうか。
もうひとつ、これはフランスの田舎町の話として聞いたことだが、首長や議員の給料が非常に安いのである。一種の名誉職であるから多くをもらう必要がないと首長も町民も考えている。役場の職員より給料が安いのに、住民のために熱心に尽くしてくれるから首長や議員は尊敬される。これについても日本をみると首長の給料が職員より低い自治体はあるだろうか。
「平成の大合併」の動きを止めることは難しいかもしれないが、これまでの日本の自治体が国と同じ発想で行政を行い、地方自治法で保障された交付税を当てにして、真剣な効率的行政の追求を怠ってきたことへの反省がなければ、合併をしてもよりよい自治体にはならないだろうと思う。 (2003/10/17)
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Last Update:2004/10/19
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