随筆
『国民の天皇』に大佛次郎賞論壇賞
今朝の朝日新聞に大佛次郎賞が発表され、共同通信社から出版したケネス・ルオフ著「国民の天皇」が受賞した。この本には私も出版にかかわった思い出があるだけにうれしい報だった。
私が共同通信の出版本部長をしていたときに、同期入社の事業本部長の高橋紘氏から企画が持ち込まれた。高橋氏は長く皇室記者をし、皇室だけでなく天皇制やこれに関連した日本近代史にも造詣が深い。ルオフ氏が日本で天皇制を研究していたときに助言したりして面倒をみたようだ。「国民の天皇」はルオフ氏の博士論文のようであった。しかし、硬いだけの論文ではないようだった。
私は出版することにして図書編集部のベテラン編集者、木村剛久氏に担当してもらった。福島睦男氏の試訳ではかなり翻訳が大変そうだった。それで監修の高橋氏も困っていたようだった。そのうちに私は退職した。
ある日、高橋氏から電話があった。翻訳者に木村氏に入ってもらおうかと思うが、どう思うかというのである。私は即座に賛成した。翻訳書の編集者としての木村氏の手腕は相当なものだし、彼が翻訳に参加した本もいくつか見ていたから、彼の翻訳の技量はわかっていた。アジア・太平洋賞を受賞したジョン・オーバードーファーの「二つのコリア」なども木村氏は手がけていた。「彼の翻訳の技量は相当なものだから、彼が入れば問題ない」と私は高橋氏に答え、事実そうなった。
出来上がった本が送られてきて読んでみると、訳文はこなれていて読みやすかった。木村氏に入ってもらってよかったと思った。論文の内容については朝日新聞の解説があるので触れないが、日本の近代天皇制を多角的に検討し、学術的なだけでなく社会的な広がりの中でとらえているのが興味深い。
今年は私の知人の仕事が相次いで大きな賞を受けた。京都支局長時代にデスクを務めてくれて退職し、フリーライターとして活躍している魚住昭氏の「差別と権力−野中広務」が講談社ノンフィクション賞を受けた。今度の大佛賞と続いてめでたいことである。 (2004/12/15)
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Last Update:2004/10/19
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