随筆

NHKハイビジョン特集『コウノトリがよみがえる』



 NHKハイビジョン特集「幸せを運ぶ鳥 コウノトリがよみがえる 〜里山復活をめざした40年〜」を見た。2時間の大型特集で、夕方総合テレビでPRしたのが目に入った。

 高校の同級生、松島興治郎さんも登場し、彼の苦労話もあった。考えてみれば、高校を卒業してまもない彼の努力が今日の基礎を築いたのである。高校時代に生物部に属し、故山本茂信先生の指導で、彼はコウノトリの生態観察を続けた。卒業後、一時他の仕事をしていたが、絶滅に瀕したコウノトリの人工増殖に向けて「世話をできるのは君しかいない」と口説かれて、野上の飼育センターで一人で世話を始めたのである。センターに泊まり込んで何日も家に帰ることのできない日々もあったという。松島さんのその努力がすべての基盤だった。彼はいま、コウノトリ文化館の館長をしているそうだ。環境庁長官賞をはじめ数多くの賞も受けた。

 これから豊岡はコウノトリを復活させた町として、長く全国に、世界に記憶されることになるだろう。松島さんを豊岡の名誉市民にしてほしいと私は思っている。

 番組を見ていて、松島さんの苦労のほかに、もう一つ、心を打たれたことがあった。それは豊岡でコウノトリの復活のために「コウノトリをはぐくむ農法」を実践している農家の人たちである。県立コウノトリの郷公園の職員や研究所の人たちの苦労も大抵ではないだろうとは思うが、この人たちはそれを職業としている人たちである。また市民研究所のボランティア活動にも敬意の念を抱くが、農家の人たちは、農業生産者である。

 私が子供のころの農家ではコウノトリは水田を荒らす害鳥と思われていた。そう考える農家は今も多いだろう。そういう中で、コウノトリの復活野生化のために、米作りにおける経済的なリスクを承知の上で、コウノトリの餌になるドジョウやカエルなどが生きられる水田作りを始めたことである。

 ある農家の人が「コウノトリが田圃に入ってきて荒らしても、但馬の空にコウノトリが舞うのであれば、少々の損害が出ても構わない」という意味のことを話していたのには大きな感銘を受けた。その人は「コウノトリが空を舞うこの豊岡の環境は、それほどよいということになるからですよ」とも言った。コウノトリのために化学肥料や農薬を使わなくなったので、田圃には雑草や稗が増えているが、それでコウノトリの餌になる魚や虫も棲みやすくなる。カエルは稲の害虫のカメムシを食べてくれる。そういう循環型の生態系もできつつあるようだ。農家の人たちにこういう考え方をする人が出てきていることは非常に素晴らしいことではないかと考えさせられた。(2006/10/09)

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Last Update:2006/10/09
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