寥川亭随筆

非常勤講師の給与所得



 確定申告の書類を作成していて気づいた不合理がある。私は2つの私立大学で非常勤講師をしているのだが、講義のための本の購入やレジュメ作成のためのパソコン関係の経費などが必要経費として控除の対象になるのは当然だと思うのだが、確定申告書Aではそれが認められていないのである。

 というのは、大学からの講師料は給与所得とされるからである。給与と言っても、金額は月額数万円で年間でも百万円にはならない。それに社会保険料などの使用者負担を大学がしているわけでもない。非常勤講師は大学共済の社会保険の対象になるとも聞いていない。要するに個人の著述業と同じなのだ。だから、給与と言っても、実質は単なる講演料、講師料である。だから、講演料、講師料として大学が支払ってくれれば、雑所得として必要経費が認められるのだが、給与所得ではそれができない。

 私が担当しているのは、マスコミ論と日本語表現で、前者に関しては、日々いろんな問題が起きており、これに関係する書籍も次々に出版されており、最新の状況を踏まえて学生に講義をしようとすると、これらに目を通すのは絶対的に必要なことになる。これにパソコン関係の経費やその他を加えて年間合計すると、大学からもらう金額を上回ってしまう。非常勤講師では、これらの費用を大学に請求するわけにもいかない。結局、自分で負担するしかない。これが年間にするとかなり膨大な金額になる。そこで、一時所得とみなして「一時所得」の蘭に記入すれば「必要経費」が認められるので、そうしてもよいかと税務署に問い合わせてみたが、「おっしゃる意味はよく理解できるが、現在の所得税法上、それはできない」と申し訳なさそうに言う。

 非常勤講師というのは、お金が目当てではない、一種のボランティアだとは思っている。自分の経験や知識を若い人に伝えて、これから社会に出る大学生の助けにできれば、というのがこの仕事をしている私の最も大きな動機である。60代半ばに何もしないより、若い人に接していると元気ももらえるし、認知症を防ぐことにもつながるのではないかという思いもある。そして、私は老齢年金ももらえるからまだましなのかもしれない。若い非常勤講師となると、こういう状態ではやっていけないのではないかと心配になったりもする。非常勤講師の報酬は給与ではなく、単なる報酬として扱い、そのための必要経費を認めてもらいたいと思うのだが。 (2007/02/20)

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Last Update:2007/02/20
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