随筆
年賀状あれこれ
毎年、たくさんの人と年賀状を交換する。近年は、自作の俳句や短歌で心境を記したものがかなりある。これは読むのも楽しい。
それなりに味あるものよ老の春 Kさん
去年今年大川の如き流れかな Aさん
またひとつ齢重ねて初写真 Fさん
よくもまあ生きてこれたよ年の暮 Cさん
いずれも老年にさしかかっての思いである。そんな歳なのだ。なかで歳を感じさせないというか、歳のわりに若い息吹を感じさせたのが次の歌だった。
春を待つ心萌せば空仰ぎ天平の世の歌口ずさむ Mさん
老境にさしかかったからこそ、春を待つ気分に高まるのかもしれない。
ある人の賀状に橋本左内の「啓発録」の言葉が記されていた。
一、稚心を去れ
一、気を振るへ
一、志を立てよ
一、学を勉めよ
一、交友を択べ
左内が15歳のときのものだという。
もう一つ、心に残ったのは、鹿児島・知覧の特攻平和観音にまいったときのことを書いたものだ。
「背後に異様な静寂を感じた。振り向くと、石段下の広場に、真っ白いワイシャツ姿の生徒が整列している。200名くらいだろうか。前列に8名の生徒が向こう向きに立っている。やがて、その1人が話し出した。『…僕はこんな悲劇は二度と繰り返してはならないと思いました!』。どうやら「特攻平和会館」を見学した感想をみんなに発表しているようだ。粛然とした気持ちになった。正面の石段の上から彼らを見下ろしていることに恥ずかしさを覚え、音を立てないようにそうっと生徒たちと同じ広場に下りた。今度は女子生徒が話している。『…私たちと同じ年齢で亡くなっていった人たちのためにも、今の平和を守らなくてはならないと思いました!』。先生たちは生徒たちの横に並んで黙って聴いている。しーんとした静寂があたりを支配して、8名の生徒一人一人の言葉が良く透る。
沖縄戦に特攻として逝った少年飛行兵1036名の死者の遺影、遺書を見学して感じた生徒たちの感想は率直、純真で、重たく僕の心を打つ。やがて男子・女子一人の生徒が手に千羽鶴を持って石段を上がっていく。特攻観音に二人が拝礼すると、広場の全員も拝礼する。二人が石段を降りてくるその時だ! 最後列の生徒から歌が流れ出した。『園の小百合し撫子、垣根の千草…』。ドイツ民謡『故郷を離るる歌』だ。すぐに数人が続き、さらに大勢が! 後から前に燎原に広がる炎のように、二部合唱、四部合唱になって、蒼い秋空の薄い雲に向かって響き昇っていく。『さらばふるさと。さらばふるさと。故郷さらば』。震えるような感動が沸き起こり、目頭が熱くなってきた。涙がこぼれた。」
賀状に書いたものではないが、私の新年の句
若水をスーパーで汲む町住まい
元旦や慣れし道さへ清々し
月明かり受けてぼんやり冬椿
(2007/01/02)
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Last Update:2006/11/11
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