寥川亭随筆

最近の大学生事情



 私が学生時代を過ごした早稲田奉仕園に、最近は学生がやってこないという。私たちの時代には早稲田奉仕園キリスト教学生会があって、宣教師から英語も学ぶことができ、またワークキャンプなどさまざまな活動があって、常時数百人の大学生がいろんな大学から集まってきていた。しかし、1980年代から学生の活動が衰退し、学生会もなくなってしまったという。

 早稲田奉仕園で学生時代を過ごし、OB、OGとなった私たちは、あの活動に懐かしさを感じている。そして、OB会をつくってときどき集まっている。最近、OBのなかから、学生たちが集まってくることができるような奉仕園にしようという動きが出てきて、OB会のメーリングリストで議論が活発にされている。

 その議論のなかの、あるOBによると、学生たちの97%は不安や悩みを抱えているという早稲田の調査機関の報告があるそうだ。不安の内容は第一に就職29.6%、勉強16.8%、次いで性格・能力8.3%、対人関係7.9%、人生観5.3%、心身の健康4.6%。就職活動する上での不安の内容は、面接や筆記試験のほかに、「志望している業界や職種が自分にあっているかどうかわからない」というのが大きなウエイトを占めている。ところが、こんな問題を抱える学生たちに用意されている大学側の対策は、求人案内や人集めを目的とする会社説明だけ。就職関係の本も、会社が必要とする人材の素質はなにか、どうしたら面接官に好い印象をあたえられるかといった類のものが目立ち、彼らの根っこにある不安に向き合うものはほとんどない。大事なところでボタンを掛け違い、それが後になって大きな問題となることが心配で、ここに企業の第一線を離れたOB、OGの出番がありそうな気がする、というのである。

 私もまったく同感である。与那国島援農隊の経験を思い出す。30年前は大学生の参加者は多かったが、近年はほとんどいない。20代の若者が多いのだが、フリーターといわれる人たちが多くなっている。そして、彼らの参加の理由は、多くが「自分探し」である。大学生がなぜ少なくなったのか。これはよく考えてみなければならないことだ。

 私のことを振り返ってみよう。大学時代に、自分がどんな職業に向いているかということは、やはり自分でもわからなかった。だが、大学を卒業したらどこかの企業に就職しなければならないとは思っていた。映像の世界で仕事をしてみたいと思ったが、文章を書くことも好きだったので、マスコミに就職したのだ。しかし、それが自分に向いているかは就職した後でも何度も自問した。文化関係の担当が向いていると思って、そちらに進んだことでいくらか自信を持てるようになり、20数年をその仕事で過ごした。いまではそれでよかったと思っている。

 今の多くの学生も、私の大学時代とそれほど大きな差はないのではないか。ただ、大学を卒業したら企業に就職しなければならないというふうには思われていないのではなかろうか。それは若者の目に見える社会の姿が、私たちの時代とは違って見えているのではないかと思う。そのあたりについて、いまの大学生と話し合ってみたいものだ。 (2006/03/24)

 感想などをメールでいただければうれしいです。メールはこちらまで。

Last Update:2006/02/24
©2003 Masayuki Fujino. All rights reserved.