随筆
山下町第1洞穴遺跡ピンチ
朝日新聞3月5日付夕刊社会面に「日本最古の人骨も出土 洞穴遺跡ピンチ 那覇の住宅地」という3段抜きの記事が出ていた。やっぱりか、という思いがした。
山下町第1洞穴については、かつて同志社大学教授の森浩一さんが監修した「日本の遺跡発掘物語」の第1巻に、私は森さんに頼まれて文章を書いたことがある。そのとき、山下町だけでなく、具志頭村の港川原人遺跡についても発見者の大山さんに案内されて見た。これらをまとめた50枚ほどの原稿は社会思想社から出版された先の本に収録されている。この本にはやはり私が沖縄のグスクについて書いた論文も収録された。
新聞記事によると、山下町第1洞穴遺跡の危機状況は次のようだ。この遺跡は日本最古の旧石器時代の人骨が見つかった遺跡である。沖縄県指定史跡になっているが、遺跡の説明板はビニールシートで覆われ、洞内や周辺にはブロックや岩礫が積み上げられて見学もできない状態である。そのためにここが歴史的な遺跡であることはもちろんわからないし、わかっても見学もできない状態だという。
この遺跡は私有地で、境界をめぐる争いごとに加えて、所有者が住宅を増改築して、昨年、地権者が岩を積み上げたり、塀を造ったりした。以前、行政が遺跡の土地を買い上げることになっていたのに、行政は何もしないままにきたのだという。これに業を煮やした地権者がこういう行動に出たのだそうだ。
私は昨年1月、与那国島からの帰りに那覇で泊まった宿が小禄だったので、久しぶりに山下町第1洞穴を訪ねてみようと思い立った。ところが、このあたりは近年、再開発されて新しい住宅街になっていたために、洞穴がどこにあったのかわからなくなってしまった。古くからありそうなタバコ屋さんで訊いてみたが、山下町第1洞穴なるものを知らないという。たしか坂を登っていった住宅街の谷側の民家のそばだったと思って探し回ったが、結局わからなかった。
そんなことを翌日会った新川明さんに話したことを覚えている。だから、この新聞記事を読んだとき「やっぱりか」と思ったのである。この遺跡の重要性は言うまでもない。考古学会などが保存のための措置を採るように訴えてみてはどうか。。 (2005/03/05)
感想などをメールでいただければうれしいです。メールは
こちら
まで。
Last Update:2005/03/05
©2003 Masayuki Fujino. All rights reserved.