八百屋お七と小石川植物園

八百屋お七と小石川植物園



 久しぶりに晴れ上がり、午後から町歩きに出た。地下鉄都営三田線白山駅で下車し、白山下の交差点を東に入るとすぐ天台宗園乗寺がある。

 この寺は八百屋お七の墓があるので知られる。お七については西鶴の小説「好色五人女」(巻四「恋草からげし八百屋物語」)、紀海音の人形浄瑠璃「八百屋お七歌祭文」、歌舞伎では吾妻三八「お七歌祭文」(1706)、菅専助「伊達娘恋緋鹿子」(1773)、「其往昔恋江戸染」(1809)、河竹黙阿弥の「松竹媒雪曙」(1856)などで取り上げられて、その粗筋はだれでも知っているだろう。

 江戸・本郷の八百屋の娘お七は、天和二(1682)年暮れの大火で焼け出され、一家で園乗寺へ避難するが、寺の小姓と恋仲になる。翌正月、一家は新しい家に移るが、お七は小姓のことが忘れられず、火事になればまた会えると思い込み放火をしてしまう。天和三(1683)年3月2日夜、お七は近所の商家に火を放ったが、放火罪で捕まり、江戸市中引き回しのうえ、鈴ケ森で火刑に処せられる。恋のためのいちずな行動だったこと、わずか16歳の少女であったにもかかわらず、火あぶりという極刑に処せられたことから江戸庶民の同情をかい、浄瑠璃や歌舞伎に取り上げられることになる。雪の火の見櫓をのぼるお七を描いた小田次男さんの文楽絵が思い出された。

 江戸観音12番札所としても知られる園乗寺は小さな寺で、周りをマンションなどのビルに囲まれてひときわ小さく見え、ひっそりとしていた。「南無八百屋於七地蔵尊」の真新しい赤い幟がいくつも立てられていた。

 白山下の交差点を西に渡り、蓮華寺坂を登りきると、下りは御殿坂。これを下りきって右側に小石川植物園の正門がある。入園料は330円。5月も下旬のこの季節は春の花はすでに終わっているが、ハナショウブ、アジサイなどは咲いているかと思って入った。ハナショウブは「空蝉」という淡いピンクの花が印象的だった。アジサイは葉に白い斑のあるフイリガクアジサイを初めて見た。

 草花は少なかったが、花木ではサラサウツギが白い花を付けていた。カルミアがツツジ科とは知らなかった。シモツケ、アワモリショウマ、ハナマキなど、今咲いているのはやはり花木が多い。花ではないが、セイヨウバクチノキ、ウンナンロウバイ、マサキなどという木もあった。約1時間半、広い園内を歩き、閉門の4時半に出た。

 千川通りを小石川3丁目交差点から善光寺坂を上がり、善光寺、慈眼院、傳通院を経て安藤坂を下り、白鳥橋から神田川沿いに歩いて江戸川公園まで行こうと思ったが、足が疲れて江戸川橋から地下鉄に乗ってしまった。 (2004/05/25)

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Last Update:2004/10/19
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