Kruger, J. and Gilovich, T. (1999)
"Naive Cynicism" in everyday theories of responsibility assessment: On biased assumptions of bias.
Journal of Personality and Social Psychology, 76, 743-753.


[abstract]

 人が他者が責任をどう評定するかについてシニカルな直感的知識を持つとするいくつかの実験室、現場研究からの知見が紹介される。既婚カップル(研究1)、ビデオゲームファン(研究2)、討論者(研究3)、ダーツプレイヤー(研究4)が、一連の望ましいことと望ましくないことが入り交じる結果に対して責任を分割し、他者が責任をどう配分するかを評定した。すべての研究で、参加者は、自らのではなく、他者の責任配分が動機付け的にバイアスがかかっていると期待した。これは、責任評定が実際にバイアスがかかるかどうかに関わらず生じた。研究3、4では、敵よりもチームメイトはバイアスがかからないと予測し、動機づけに影響することが知られている要因がこの「素朴なシニシズム」の強さを調整することを示唆した。


[introduction]

 集合的努力への貢献を推量するとき、人の判断は組織的に歪んでいる。Ross and Sicoly(1979)は、カップルに様々な共同作業への貢献を尋ね、二人の貢献を加算すると最大限の100%以上になることを報告している。この歪みに対し、Rossらは、自己貢献と他者貢献の利用可能性の違いに基づく情報処理的解釈を行っている。この解釈は数多くの知見に支持されている(Brawley, 1984; Burger and Rodman, 1983; Thompson and Kelley, 1981)。
 一方でRossらは、人が、他者の高い貢献査定を利用可能性バイアスに解釈する代わりに、それを相手が出し抜こうと動機づけられていたからだと解釈する傾向にあると指摘している。しかし、このような直感的解釈についての研究は少ない。本研究は、この、人が他者に対してどのような責任分配をすると期待するのかについて検討する。人は、他者が正確であると期待しているのだろうか、それとも出し抜くと思っているのだろうか?これは、社会的に望ましいことと望ましくないことで異なるのだろうか?もし相手が出し抜くと思っているのであれば、なぜそのように思うのだろうか?
 第一の可能性は、素朴な現実主義(naive realism)である。人は、他者を自分が見ているように物事を見ていると考えるかもしれない(Robinson et al., 1995)。もう一つの可能性は、素朴なシニシズム(naive cynicism)である。人は、自分に肯定的に反映される行動を相手は過大評価するのだと考えるかもしれない。対照的に、自分に否定的に反映される行動は過小評価されると考えるのである。この素朴なシニシズムは正確であると同時に誤りであるとも考えられる。つまり、肯定的な出来事に関しては正確な予測ができるが、否定的な出来事に関しては誤りをひき起こすのである。
 本研究は4つの実験を行ったが、以下の点で同じである。つまり、実験参加者は、望ましい出来事、望ましくない出来事両方について自他の貢献を分割し、他者がどのような分割をしたか予測する。そして仮定された責任分配を実際と比較するのである。

研究1:愛と結婚

研究1a

 既婚者に結婚生活に関するお互いの貢献度を尋ね、配偶者がどのような責任分配をしたか予測させた。参加者は、望ましさに関わらず自分の責任を過大評価するだろうと予測した(Ross and Sicoly, 1979)。また、配偶者が望ましい出来事は過大評価し、望ましくない出来事は過小評価すると予測するだろうと仮説を立てた。

方法

【参加者】108名の既婚者54組【手続き】10の共同作業の責任分担について「主に妻」「主に夫」を両端とする135mmのラインを分割させた。半分の共同作業は社会的に望ましく、残り半分は望ましくないものであった。次に、同じ手続きで配偶者がどのような分配をしたと思うか評定させた。実験デザインは、2(実際vs.予測)×2(望ましいvs.望ましくない)の被験者内要因であった。

結果

 責任への質問項目それぞれに対する両配偶者の反応を合計し、%に変換した後、この合計から100をのぞいた。予測に関する項目も、お互いが予測したものについて同様の変換を行った。その結果、カップルは、配偶者の査定を正確に予測できていなかった(本文、Figure1;交互作用効果、F(1,53)=35.90, p<.0001)。参加者は、配偶者が望ましい出来事に関して過大評価すると予測した(M=+9.7%)。一方、望ましくない出来事に関しては過小評価すると予測していた(M=-16.1%)。望ましさにおける予測の歪みは統計的に有意であったが(t(53)=7.74, p<.0001)、実際の歪みにはそのような差は認められなかった(t(53)<1, ns.)。参加者は、望ましさに関わらず、自分の貢献を過大評価していた(M=+5.2%, M=+3.8%)。

Table1既婚カップルの責任分配の歪み
実際/望ましい実際/望ましくない予測/望ましい予測/望ましくない
100からの偏差%5.23.89.7-16.1

考察

 研究1aの結果は、相手が自己奉仕的だと期待するだろうという仮説を支持した。参加者は、望ましい行動に関する過大評価を正確に予測したけれども、望ましくない行動における過小評価を誤って予測した。しかし、予測の方向があっていたときでも、その強度に関しては誤っていた。

研究1b

 参加者のバイアス期待は、一般的な直感からきているのだろうか、それとも結婚生活において責任分担の問題が明確になるからなのだろうか。研究1aの結果を未婚の学生に見せ、カップルがどのように反応するか予測させた。もし、一般的な直感からバイアス期待が生じているならば、未婚学生は、既婚の参加者の時と同じように自己奉仕的な責任分担を期待するはずである。また、その期待の理由についても尋ねた。

方法

【参加者】93名の大学生【手続き】研究1aの詳細を聞かせた後、この平均的カップルが責任分配の時、どのような評価をするかを尋ねた。このとき、その歪みに関する%を尋ねた。ある形式の質問紙では(n=33)、歪みの理由として「人は自分をよく見たいからだ」「人は自分の行動に注目しやすく想起しやすいからだ」の2項目に10件法で回答させた。残りの形式では(n=60)、歪みの理由について自由回答を求めた。

結果

【予測された責任分配】参加者は、既婚カップルが望ましくない活動よりも望ましい活動でより過大評価するだろうと予測した(t(92)=10.65, p<.0001; M=+25.5% vs. -22.6%)。【理由づけ】利用可能性理論項目よりも動機付け理論項目の得点が高い傾向にあった(望ましい出来事、t(32)=3.66, p<.001; 望ましくない出来事、t(32)=6.25, p<.0001)。また、後者は理論的中央値よりも高かったが(M>7.42)、前者は同じもしくは低かった(M&lt5.67)。自由記述において、50(83%)が、いずれかの行動に動機づけ理論を用いていた。望ましい行動に、40(67%)が動機づけ理論を用い、11(18%)が認知理論を用いた。望ましくない行動に、45(75%)が動機づけ理論を用い、9(15%)が認知理論を用いていた。

考察

 参加者は、カップルの責任判断が自己奉仕的であると期待する直感にのみ頼っていたと考えられる。また、たとえ予測が正しかったとしても、その理由は間違っており、動機付け理論で説明していることが明らかになった。

研究2:戦友

 本研究の目的は、フィールド調査の結果を実験場面で追試し、さらに参加者が自分の判断を客観的現実に対応していると信じているかどうか確かめることである。このため、中立的で歪みにない観察者が責任をどのように分割するかを参加者に予測させた。さらに、他者が自己奉仕すると、実際は正反対であった状況でも期待するかどうかも検討した。このため、用いたビデオゲームは、他者奉仕判断が予測される(e.g., Ames, 1975)高度に協力的なものであった。

方法

【参加者】66名の学生。3人一組で参加【装置】任天堂ゲーム"Contra"(1988)をもちいた。これは協力して敵を倒すというもので、一方がダメだと一方がハンディをおうというものであった。【手続き】参加者は、青プレイヤー、赤プレイヤー、観察者のいずれかに振り分けられた。二人のプレイヤーは30分ほどプレイし、観察者はそれを見ていた。Round5まで終わった時点で、質問用紙に回答した。参加者は、8つの領域に関して、研究1aと同様の責任分配を行った。8つの領域は、半分が望ましいものであり、半分が望ましくないものであった。プレイヤーは、ゲームの結果に対し相手プレイヤーがどのような責任配分をするのか、観察者がどのような責任配分をするのか予測した。

結果

【プレーヤーの責任分配の実際と予測】これまでと同様、両プレイヤーの判断を合計し、100を引いたものをバイアスの指標とした。その結果(本文Figure 2)、プレイヤーはお互いの責任分配を正確に予測できなかった(交互作用効果、F(1,20)=6.49, p<.025)。望ましい行動に関して、相手が自分の功績を過大評価するだろうと予測していた(M=+12.2%)。望ましくない行動に関して、相手は自分の責任を過小評価するだろうと予測していた(M=-10.8%)。実際には、望ましい行動に関しては、ほぼ平等な分配をしており(M=-0.6%)、望ましくない行動に関しては、過大評価をしていた(M=+7.7%)。
【観察者の責任分配】プレイヤーは、望ましくない行動に対する責任を課題評価する傾向にあり、予測された観察者も同様だろうと考えていた。プレイヤーは、冷静な観察者の判断を自分のものと異ならないと判断していた。

Table2ビデオゲームプレイヤーの責任分配の歪み
実際/望ましい実際/望ましくない予測/望ましい予測/望ましくない
100からの偏差%-0.67.712.2-10.8

考察

 本研究の参加者は、他者が責任を自己奉仕的に分配すると考えていた。しかし、彼らの理論は予測を誤らせていた。参加者の責任分配は実際には他者奉仕的であった。

研究3:我々と奴ら


 より動機づけが高まっている状況でのあて推量の正確さを検討するため、2人組が他の組とディベートで競うというフィールド研究を行った。参加者は、責任を、自分自身、自分のチームメイト、2人の敵チーム間の4つに分割した。同様に、参加者は、他の3人がどのような分配をするか予測した。

方法

【参加者】25人の大学生【手続き】大学講義中に2対2のディベートを行い、全体で18ディベート行われた。e-mailで調査が行われ、ディベートに関する4つの側面(望ましいもの、望ましくないもの半々)について責任を自分と他の3人の討論者で分割した。さらに、他の3人の討論者がどのような責任分割をするか予測した。

結果(本文figure 3)

2(望ましいvs望ましくない)×2(実際vs予測)×2(チーム内vsチーム間)の分散分析を行ったところ、3次の交互作用効果に傾向が認められた(F(1,17)=3.71, p=.071)。
【チーム間判断】2(ディベート要素)×2(チーム間の実際vs予測)の分散分析の結果、予測通りの交互作用効果が認められた(F(1,17)=28.05, p<.0001)。敵は望ましくない側面よりも望ましい側面の方を過大評価するだろうと予測していた(69.8%)。実際は21.0%しか過大評価していなかった。望ましい側面に関して予測は実際よりも28.3%歪んでおり、望ましくない側面に関しては20.5%歪んでいた。
【チーム内判断】2(ディベート要素)×2(チーム内の実際vs予測)の分散分析の結果、交互作用効果の傾向が認められた(F(1,17)=3.11, p=.096)。チームメイトは望ましくない側面よりも望ましい側面を過大評価するだろうと予測していた(26.0%)。実際は、そのような自己奉仕は認められなかった。望ましい側面では予測は実際よりも17.5%歪んでおり、望ましくない側面では6.1%歪んでいた。
【チーム間vs.チーム内】2(ディベート要素)×2(チーム内予測vsチーム間予測)の分散分析の結果、交互作用効果が認められた(F(1,17)=19.16, p<.001)。実験参加者は、敵と味方がどのような分配をするかに関して異なる予測をしていた。望ましい結果に対して、味方よりも敵の方が過大評価するだろうと予測していたが(23.9%)、実際は13.1%の差しかなかった。望ましくない結果に関しては過小評価するだろうと予測していたが(19.9%)、実際は5.5%であった。

Table3ディベーターの責任分配の歪み
実際/望ましい実際/望ましくない予測/望ましい予測/望ましくない
チーム間の歪み14.9-6.143.2-26.6
チーム内の歪み1.8-0.619.3-6.7

考察

 動機づけに影響を与えることがわかっている要因が、また参加者に関する動機づけバイアスの適用に影響を与えていた。

研究4:ダーツ

 2人組のチームがダーツゲームで互いに競い合い、ゲームの望ましい結果、望ましくない結果に対しての責任分割を行った。また、チームメイトが敵がどのような分割をするか予測した。

方法

【参加者】40名の大学生。4人一組で実験に参加【手続き】参加者は、青組と紅組に2名づつ分けられ、25$をかけ20分ほどゲームをした。数日後、質問用紙を渡され、望ましい側面(高得点ショット)、望ましくない側面(低得点ショット)について4人の責任分割を行った。また、他の3人がどのような分割を行ったかも予測した。

結果

 研究3と同様の2×2×2の分散分析の結果、予測通りの3次の交互作用効果が認められた(F(1,9)=5.94, p<.05)。参加者の敵に関する予測はチームメイトに関する予測と異なっていた。チーム間判断における2×2の分散分析の結果、交互作用効果が認められた(f(1,9)=8.93)。敵は望ましくない側面よりも望ましい側面の方を過大評価するだろうと予測していた(24.8%)。実際は5.0%しか過大評価していなかった。チーム内判断における2×2の分散分析の結果、いかなる主効果、交互作用も認められなかった。チーム間予測、チーム内予測の比較を行うための2×2の分散分析の結果、有意な交互作用効果が認められた(F(1,9)=7.06, p<.05)。望ましい結果に対して、味方よりも敵の方が過大評価するだろうと予測し(14.6%)、望ましくない結果に関しては過小評価するだろうと予測していた(13.9%)。

考察

 研究3と同様、動機づけに影響を与えることがわかっている要因が、また参加者に関する動機づけバイアスの適用に影響を与えていた。

全体的考察

 責任分配の歪みは、心身に有害な結果をもたらすことが明らかにされている(Gilovich et al., 1999)。これに対し、責任配分の時、人は必ずしも歪んでいないこと、歪んだとしても、必ずしも自己奉仕的でないことも明らかになっている(Ames, 1975)。しかし、本研究が示唆するように、人は一貫して他者が動機づけによって歪んでいると期待している。人は、特に自己利益「追求者」ではないが、自己利益「理論者」なのである。これは、倍によって困難を引き起こすかもしれない。一方で、このような歪みを低減する要因も本研究は示唆している(協力、内集団性)。
 本研究で認められた「素朴なシニシズム」は、責任分配にとどまらない。最近の研究は、一般的に人が他者判断が動機的に歪んでいると期待することを示唆している(Kruger and Gilovich, 1998a)。


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