こころの科学 講義ノート8
作成 藤島喜嗣
[.個人と集団
1.対人認知と対人関係の進展
対人認知(person perception)
・他者に対して印象を形成すること
・特定の状況、限られた情報からの推論という側面 →正確とは限らない
 
(1) 感情の認知
・表情の認知が重要な役割; 特に眉毛と口が重要(テキスト 表[-1)
・表情以外の情報(動作から文脈まで)も用い、統合して感情を認知する
 
(2) パーソナリティの認知
暗黙裡のパーソナリティ観:
・特定の特徴、行動が特定のパーソナリティと結びつけられている信念
→文化差、個人差の存在 →形成した印象が異なる可能性
・相手のパーソナリティを推論するときの枠組みとして働く
  中心特性: 印象形成のときに特に中心的に働く特性 (例:「暖かい」−「冷たい)
 
(3) 対人関係の認知
ハイダー(1958)のバランス理論 (テキスト 図[-1)
・自分と相手の二者関係(の認知)が、第三者である人や物の影響も受ける
・P:自分  O:相手  X:自分と相手に関係のあるもの  とする
・P、O、X、それぞれの二者関係を、正(+)もしくは負(−)で表す
・3つの二者関係の積が正(+)ならば、均衡状態であり安定
・3つの二者関係の積が負(−)ならば、不均衡状態であり不安定
・不均衡状態にある場合、関係や認知を変容することで均衡状態を目指す力(斉合性への動機づけ)が働く
・Xが、PとOにとって重要であるほど、斉合性への動機づけは高まる
 
(4) 対人関係の進展への効果
@単純接触効果
・相手と会う回数が多いほど、相手への好意が増す
・その生起過程には様々な説がある(認知的流暢性説など)
A相手との類似性の効果
・パーソナリティや態度が類似する相手に魅力を感じやすい
・ただし、何を持って類似とするかは曖昧な部分がある
B相手との相補性
・自分の足りない所を補ってくれる(類似しない)人に魅力を感じることもある
 
マースタイン(1977) SVR理論
・はじめに、外見的特徴(Stimuli)、価値観(Value)の類似した人が選ばれる
・その上で、自分と役割(Role)を分担できる人が最終的に選択される
→関係の初期では類似性が、親密さが増すと相補性が重要になる
 
2.説得的コミュニケーション
 
説 得:相手の態度を特定の方向に変えよう(態度変容させよう)とする試み
(例: 両親の説得、選挙活動、広告)
 
■ 説得のメカニズム〜精緻化見込みモデル(ELM) (テキスト 図[-2)
・人がどのように説得されるかは、その人の動機や認知能力によっている
・動機や認知能力があるときは、中心ルートを通った処理がされる
・メッセージの内容を詳細に吟味する(精緻化処理)
・メッセージの論拠が強い(例:論理的)と態度変容が生じる
・この変容した態度はその後も持続しやすい
・動機や認知能力がないときは、周辺ルートを通った処理がされる
・メッセージ内容と関係のない周辺的な手がかりを用いて判断する
(例:説得者の信憑性、その時の気分など)
・変容した態度は持続しづらい
 
■ (現実場面でよくみられる)要請技法
@段階的要請法(foot-in-the-door technique)
・はじめに小さな要請をして承諾をもらった後、次に大きな要請を行う方法
(例、「今日は名刺だけ」〜「今日はパンフを」〜「そろそろ車を」)
・いきなり大きな要請をするよりも応諾率が高くなる
A譲歩的要請法(door-in-the-face technique)
・はじめに大きな要請をして意図的に拒絶させた直後、譲歩したかのようにそれよりも小さな目的の要請に応諾させる方法
(例、「温泉旅行に連れてって」〜「じゃあ、ディズニーシーに」)
・譲歩の互恵性規範(「お互い譲り合おう」)や肯定的自己呈示の影響?
B承諾先取要請法(low-ball technique)
・相手が応諾できる条件の要請をしておいて、応諾直後、内容の条件を厳しくする方法
(例、「ご購入いただいた品物は、実際はあと××円必要なのですが...」)
・応諾へのコミットメントが影響?
 
3.帰属過程
 
帰 属:出来事の因果関係に関する推論。原因の特定に関する原因帰属、責任の所在の特定に関する責任帰属がある
 
@対応推論理論(ジョーンズ、1965)
・他者の行動を観察したとき、その行動意図を推測し、背後にある性格などの安定した属性を推測する過程
(例: 「親切な行動」から「親切な性格」を推論する)
・行動選択肢の共通点が高いとき、一般に望ましくない行動であったとき、対応推論の度合いは強まる
A錯誤帰属:誤った原因帰属がなされることがある
「吊り橋実験」(ダットンとアロン、1974)
・(a)地上80mの不安定な吊り橋上 or (b)地上1mの安定した木橋上で、女性が男性にインタビューした
・(b)よりも(a)の場合に、女性の魅力は高く評価されていた
・吊り橋による生理的喚起が、誤って女性に原因帰属されたのだろう
B防衛的帰属
・他者の失敗を、その人の内的で安定的な側面に原因帰属する
・こうすることで、自分に同様のことが生じる可能性を否定しようとする
 
4.集団のメカニズム
(1) 他者からの影響
@社会的促進(social facilitation)
・作業を行うとき、一人で行うよりも、人から見られているときの方が能率があがること
・作業が単純だったり、よく学習されている場合に生じる
A社会的抑制(social inhibition)
・人に見られているために緊張して作業がうまくいかなくなる場合のこと
・作業が複雑だったり、慣れていない場合に生じる
C社会的手抜き(social loafing)
・人が集団の中に埋没して、一人の時よりも課題に対する努力が低減すること
・課題が単純であったり、興味や関心が低い場合に生じやすい
(2) 同 調
・他者の意見や判断などが自分と異なる場合に、他者に会わせて自分の意見や判断を変えること
・アッシュの実験(1955) (テキスト 図[-5)
・間違えようのない課題に対し、先に数名の人が誤った解答を(わざと)すると少なからぬ人が同じように誤った解答を行った
・先に答えた人たちからの「集団の圧力」を感じ、同調したのだろう
 
5.リーダーシップと課題遂行
 
(1) リーダーシップ・スタイル:リーダーのあり方は課題遂行に影響する
レヴィンの実験(1939)
・集団作業に対し、(a)民主的リーダー、(b)専制的リーダー、(c)放任型リーダーの3種を用意した。
・(a)が動機づけ、創造性ともに優れており友好的だった。(b)は成績はよかったが、不満が生じていた。(c)はもっとも劣っていた
 
(2) リーダーシップの機能
PM理論(三隅・白樫、1963) (テキスト 図[-4)
・集団の目標達成(performance; P)機能と集団維持(maintainance; M)機能
・リーダーシップの基本類型: PM型、P型、M型、pm型
・集団の生産性や集団成員の満足度は、PM型のリーダーの時に高い
 
6.社会的ジレンマ
@共有地の悲劇
A社会的ジレンマの実例
B社会的ジレンマは解決可能か?