
本例は、左の成人鎖骨上リンパ管腫の患者さんです。1991年に治療しました。我々山形大学耳鼻咽喉科のグループがこの治療を始めるきっかけとなった患者さんです。左の鎖骨上の腫脹が認められます。非常に珍しい病気で、我々の施設では私が知る限り最初の患者さんでした。手術も難しいものになることが予想されて困っているときに、当時の上司の木村先生が「リンパ管腫であればOK-432を注射する方法もある」とおそらく学会で聞かれてきたことを教えてくれました。私は大学院で好中球という白血球が活性酸素を出したり癌細胞を殺したりすることの実験をしていました。この作用がOK-432を使うと何倍にも強くなるという実験もしており、OK-432に関してはそれなりに勉強しておりました。また、OK-432を癌性胸膜炎や癌性腹膜炎(肺ガンや胃ガンで胸や腹に水が溜まる状態のこと)の際に胸腔や腹腔内に投与すると非常に有効であることは知っておりました。

この患者さんに対してOK-432 2KEの嚢胞内注入を行いました。もちろん、最初の例ですから、安全のため入院で治療いたしました。OK-432注入翌日には、患部の腫れが強くなり皮膚が赤くなり、触ると硬くなっておりました。入院4日で退院とし、後は外来で経過を観察いたしました。1ヶ月で腫れは判らなくなりました。私にとっては、衝撃的な治療効果でした。ガマ腫にも効かないはずがないと確信しました。これは治療前・後のMRIです。(MRIのT2強調画像では液体は白く映りますので、嚢胞性疾患の評価にはMRIは極めて有用です。)大きな嚢胞が、たった1回の治療で消失していることがお判りいただけると思います。