(a) OK-432希釈液置換法のTips
顎下型ガマ腫の場合、私は顎下部の一番腫脹の強い部分で、facial nerveの submandibular branchの一般的な走行から離れた部位を穿刺点とし、1%E入りXylocaine0.5〜1mlでその部の皮膚から嚢胞までを局所麻酔します。嚢胞内に入ると抵抗が無くなるので、普通は分かります。その後、18G針を付けたシリンジ(通常は10mlのものを用いています)で、局麻したのと同じ場所を穿刺します。嚢胞腔は予想よりも深い位置にあることもありますので、丁寧に探す必要があります。黄色の粘稠な液体が引けたらガマ腫の確定診断になります。(稀に、CTで嚢胞様に見えても、実はdermoid
cystであったり、lipomaであったりした経験がありました。)十分に、内容液を吸引するためには、反対の手で嚢胞をしぼるようにして、針先に内容液を集めるのが良いようです。その後、OK-432の希釈液が入ったシリンジに交換して、吸引した量と同量を注射します。シリンジを交換するときが、最も慎重に行う必要がある時です。針先をきっちり皮膚に固定した状態で針からシリンジをはずして、その位置をずらさないようにしてシリンジを交換して下さい。きちんと嚢胞内にOK-432が注入された場合は、ほとんど抵抗無く同量の注入が可能で、患者さんもpainは感じません。もし、注入に抵抗があり、painを訴える場合は、その日は確定診断のための吸引のみにとどめたほうが無難です。しばらく待って、再度内容液が溜まって、確実に嚢胞内にOK-432を注入できるようになるのを待つのが良いと思います。OK-432の濃度は最初は0.1KE/mlから始めるのが安全ですが、総量1.0KE以下の場合は効果が不十分なことがあります。このホームページでご紹介した顎下型ガマ腫2は、CTでは隔壁構造を伴った例でした。最初の穿刺で、6mlの内容液を吸引しましたが、実はもっと内容液は多かった(内腔は大きかった)可能性があります。それに対して、定法どおりに0.1KE/mlを6ml(総量0.6KE)の注入を行ったために、第1回目の治療では、効果は認められなかった可能性が高いと思います。OK-432の総量が1.0KE程度であれば、外来通院治療でもまず安全ですので、ひとつの工夫としては、最初はOK-432・1KEを5ml程度の生食で希釈しておいて、もし7ml内容液が吸引されれば、用意したOK-432希釈液に2mlの生食を足して7ml(総量1.0K)を注入するような方法でも良いと思います。穿刺の体位ですが、ベッド上で行うのが患者さんも術者も楽ですが、嚢胞が奥に入り込んで分かり難くなる場合もあります。座位で行う方が、嚢胞へのアクセスは楽なようで、私は座位で行っています。また、患者さんに顎の下に力を入れて顎下型ガマ腫がでるだけ突出するように協力していただくと、穿刺がやりやすいことがあります。
OK-432希釈液置換法は荻田先生の原法であり、世界中でこの治療が行われている確立された方法です。しかし、この方法の一番の欠点は、嚢胞内容液を吸引しすぎると針先が嚢胞内からずれて、嚢胞外にOK-432が注射される危険があることです。(韓国の論文で、OK-432が副咽頭間隙に入ってしまって入院が必要になった例が載っておりました。)私は開業してひとりでこの治療を行うようになってからは、嚢胞内容液の吸引は診断の確認のための最小限(2〜5ml程度)にとどめ、その後シリンジを変えて2mlの生食に希釈した高濃度のOK-432を、残りの内容液が吸引できることを確認した上で確実に嚢胞内に注入することにしております。この場合問題になるのは、ガマ腫の内容液は非常に粘稠ですのでOK-432の拡散が悪くなるのではないか?という点になりますが、これまでに治療した15例程度の顎下型ガマ腫では、従来の方法と遜色の無い結果でした。
血管を穿刺した場合どうするか?
ご存知のように、顎下腺の近くは血管の密な部位です。嚢胞の穿刺中に血管を穿刺してしまうことは、それほど珍しくありません。

これは、私のHPの顎下型ガマ腫3のCTと穿刺液です。このように内腔の狭い嚢胞でした。18G針で穿刺して、最初は黄色粘稠な典型的なガマ腫の内容液が吸引されましたが、その後もっと吸引しようと針先をずらしたときにこのように血液が吸引されてしまいました。この例では、針先を血液が直接吸引されない部位に戻して、OK-432
0.5KEを嚢胞内注入いたしました。結果はお示ししましたように、何も問題なく普通に治癒しています。動脈を穿刺したりして、どんどん腫れて来るような場合は論外ですが、わずかに血液が混じる程度であれば、まず問題は無いと考えます。(OK-432は、癌の免疫療法剤としては、現在は(1)筋注または皮下注、(2)漿膜腔内投与、(3)腫瘍内、腫瘍周辺部への投与が用法としては認められています。1975年の認可当初は静脈内投与も用法として認められておりました。また、OK-432で処理した白血球を支配動脈内に投与した論文もあります。)
(b) 高濃度OK-432注入法のTips
私は舌下型ガマ腫・舌嚢胞・耳血腫や子供の正中頸嚢胞などに本法を行っています。荻田先生の原法で治療した場合、舌下型ガマ腫などでは、穿刺点と嚢胞内がどうしても近くなってしまうことが問題でした。ガマ腫の内容液は非常に粘稠ですので、通常18G針を使わないと吸引できません。舌下型のガマ腫を18G針で穿刺しますと、針穴からOK-432が漏れてしまったり、OK-432注入直後は大丈夫と思っても、翌日以降に一過性に腫れが強くなった時に、そこから破れてしまうことが問題でした。(韓国のRhoの論文にも、舌下型ガマ腫は顎下型ガマ腫よりOK-432の効果が低いことが述べられており、その理由としてraptureが挙げられておりました。)
私は、現在では、舌下型ガマ腫はすべて、この高濃度OK-432注入法に変えております。直径2cm以下の小さなガマ腫では0.5KE、それ以上のガマ腫では1.0KEのOK-432を0.2mlの生理食塩水に懸濁し、嚢胞内容液は吸引せず、27G針で嚢胞内への注入のみを行います。小さな口唇嚢胞を治療する場合などは、総量0.2mlでも多くて入らない場合がありますので、0.1mlの生食で溶解する場合もあります。OK-432の縣濁液を作成する場合、普通に注射液を溶解する手順で、ゴムキャップを注射針で穿刺して薬剤を吸引しますと、ほとんどがゴムキャップに付着してしまって無駄が多く、また注入した薬剤量もはっきりしなくなります。私は、ゴムキャップをはずした後で溶解して、1mlのツベルクリンシリンジに吸引するようにしています。27G針ですので痛みは少なく、子供でも無麻酔で・外来で簡単に行うことができます。この方法で、一番心配な点は、ガマ腫の場合は内容液が極めて粘稠ですので、うまくOK-432が拡散してくれるかという点にあります。このため、OK-432希釈液置換法で使用するOK-432の量よりも、少しOK-432を多めに用いた方が良いようです。ただ、この方法ではOK-432の量の微妙な調節は不可能であり、私は直径2cm以下のガマ腫では0.5KE、直径2cm以上のガマ腫では1KEを注入しております。又、十分に反応しているかはっきりしない時は、OK-432注入の2〜7日後に嚢胞の穿刺吸引をしてみても良いと思います。全く、吸引できないほど粘稠になっているときは効果十分ですし、内容液が白濁しているときは、炎症細胞が浸潤しているはずですので(細胞診で確認されても良いと思います)、そのまま経過観察に移行して下さい。内容液が初回の穿刺時と同じ性状のときは、効果不十分と判断して量を増やして再施行して下さい。
(c)OK-432の投与量と治療回数について

1回の治療で効果が無くてもあきらめないで下さい。3回は治療を繰り返してみて下さい。顎下型ガマ腫であれば、3回繰り返せば、有効率は90%を越えるはずです。
これは、平成19年6月までのガマ腫治療例について、OK-432の使用量と治療回数をまとめたものです。舌下(口腔底)型ガマ腫では、1回の治療で使用したOK-432の量は0.2KEから1KEの間で平均0.59KEでした。治癒までの治療回数は1回から5回の間で平均1.94回でした。顎下型ガマ腫では、1回の治療で使用したOK-432の量は0.5KEから2KEの間で平均1.14KEでした。治癒までの治療回数は1回から4回の間で平均1.82回でした。顎下舌下型ガマ腫は3例しかありませんでしたが、いずれも1KE,1回の投与で改善しています。
(d)治療効果の予測について
OK-432嚢胞内注入療法は、嚢胞内にOK-432(溶連菌の死菌)を入れて嚢胞内に炎症を引き起こして、嚢胞の縮小を図る治療法です。最終的に治療効果が判るのは4〜6週間後になりますが、OK-432嚢胞内注入翌日の反応で有る程度効果を予測することができます。顎下型ガマ腫であれば治療翌日に更に腫れが強くなり、皮膚も発赤した時、口腔内のガマ腫であれば、治療前に青黒かったガマ腫が治療翌日に赤く濁ったような色に変わったときは、十分に治療効果が期待できる時です。
(e)ガマ腫の鑑別診断について
顎下型ガマ腫の診断はそれほど簡単ではありません。下に示す例は、顎下型ガマ腫とCTやMRIで診断を受けて紹介状を持って、遠方から手術しなくとも治ることを期待されて高い交通費をかけて当院を受診された例です。患者さんの期待に応えられなくて、申し訳ない思いをしました。いずれも、類皮嚢胞と考えられます。特に下の例は、水分の多い類皮嚢胞です。数mlの液性成分は吸引されますので、顎下型ガマ腫と間違ってOK-432治療をしてしまうことがあります。しかし、この大きさであれば、20ml以上は内容液が引けなければいけないのに途中で引けなくなってしまうこと、吸引される液はサラサラの漿液であること、液の中にdebrisが混じることから鑑別ができます。
上記とは別の例ですが、昔私が手術した類皮嚢胞の例です。長期間に渡って大きさが変わらない丸い顎下部の腫れは類皮嚢胞を第一に考えて下さい。ガマ腫は内容液の量によって大きさが変化することのほうが普通ですし、さまざまな隙間に漏れた唾液が入りこみますので、複雑な形をしていることも稀ではありません。(もちろん、丸い場合もあります。)
8歳男児の顎下型ガマ腫のCTとMRIの実例および穿刺した内容液を載せます。
私は、患者さんには、「顎下型ガマ腫の診断は太い注射針で穿刺して、粘稠な内容液が引けてはじめてつけることができる」ということを強調してご説明して、最初から過剰な期待をお与えしないようにしております。
様々なガマ腫症例の嚢胞内容液も追加いたします。(クリックして下さい。)
下はガマ腫と類皮嚢胞のMRIをまとめたものです。ガマ腫は唾液が組織の隙間に入り込みますので、不規則な形をしていることが多いのがお判りいただけると思います。また、ガマ腫ではmassのために正常な組織の位置がずれることがほとんどないこともお判りいただけると思います。massに押されて顎下腺の形が変わっていたり、air wayの位置がずれたり変形しているときは、類皮嚢胞をまず考えるべきです。
(f)副作用と対処法について
この治療の副作用は、基本的に溶連菌が体に入った場合と同じです。全身的には発熱、局所的には痛みが起こり、基本的にその程度はOK-432の投与量に比例します。通常は消炎鎮痛剤の投与で十分コントロール可能で2日間程度で改善します。また、頭頸部の嚢胞を治療する場合の特別の副作用として、気道狭窄があります。この治療の後は、一時的に腫れが大きくなりますが、その時が要注意です。リンパ管腫では気管切開が必要になった例が報告されており、1例重篤な状態になった例もありますので、気道周辺のリンパ管腫を治療される場合は十分にご注意下さい。私は、ガマ腫を70例以上治療しておりますが、気道狭窄をきたした例はありません。私はガマ腫に関しては安全に外来通院治療可能と考えておりますが、気道付近のリンパ管腫に関しては入院して治療すべきと考えております。気管の前方は軟骨がありますので、よほどのことが無い限り気道狭窄はきませんが、後方は軟骨がありませんので、嚢胞が後方にまで存在するときは要注意です。
また、手術後にOK-432治療を行った場合など、皮膚や粘膜に弱いところがあると、その部分が破れて瘻孔を形成することがありますので、十分に注意されて下さい。特に顎下腺を摘出した例などでは、手術部皮膚の下にそれを支持する組織がありませんので、瘻孔形成には十分に注意されて下さい。私の知っている2例は、創部の圧迫の保存的治療で閉鎖しています。
(g)同意書について
ンパ管腫以外の嚢胞性疾患に、本治療を施行される場合は、適応外使用になりますので、きちんと説明をして同意書を取得されるのが宜しいと思います。以下に、ガマ腫・正中頸嚢胞・耳血腫・リンパ管腫においての私の施設の説明内容をお示しいたします。
唾液が貯溜し、嚢胞を形成しています。
この場合は、内容液を吸引等で除去してもすぐに唾液が産生され貯溜して、同じ状態になってしまいます。
従来、この病気には手術的な治療が行われてきました。
我々はこの病気に対して、細菌製剤(溶血性連鎖球菌の特殊な株をペニシリンで殺して作製した薬剤:OK-432)を直接嚢胞内に注入し、嚢胞内に無菌的な炎症を引き起こし、ふくろをつぶしてしまう治療法(OK-432嚢胞内注入療法)を行っています。これは、同じ嚢胞性疾患である「嚢胞状リンパ管腫」の治療法として、1986年から始められた治療法です。効果が高く・安全であることが確認されており、現在日本の小児外科の医師の間では「嚢胞状リンパ管腫」に対する第一選択の治療法となっています。OK-432は、ほぼ日本でだけ認可されている薬剤であることもあって世界における普及はまだ遅れています。しかし、欧米でもその効果は知られる様になり、アメリカでも現在治験が行われています。また、OK-432は日本においては癌の免疫療法剤として1975年に認可された薬剤で、非常に多くの患者さんに長い期間投与された実績のある薬ですので、その長期的な安全性などに関しても既に確立されています。
我々はこの治療を1991年頃からガマ腫にも応用していますが、ガマ腫においてもこの治療を行うことによって、多くの場合手術をしないで治癒させることができます。(我々の治療成績では、顎下型ガマ腫、舌下型ガマ腫とも90%以上に有効でありました。)
通常、本治療を行うと翌日は病変部が腫脹し硬くなり、その後ゆっくりと4〜6週間をかけて嚢胞が縮小していきます。1回の治療のみで治癒する場合もありますが、約半数例では2回以上のOK-432嚢胞内注入が必要です。再発率はリンパ管腫における多施設の治験では約9%とされていますが、再発した場合でも同じ治療を繰り返せば、多くの場合は大丈夫です。
この治療に伴う偶発症として、「局所の疼痛」、「発熱」などの可能性がありますが、それに対する予防的な投薬を行います。普通、この症状は2〜3日で改善します。ただし、この「局所炎症症状」は嚢胞を消失させる源となる反応であり、この症状が強い場合の方が治る可能性が高くなります。
OK-432にはペニシリンが含まれますので、ペニシリンアレルギーのある場合は本治療は行えません。また、この治療によって一時的に病変部の腫れが強くなりますので、気道(息をするところ)の近くの病変の場合、呼吸困難が起こる可能性も考えられます。ガマ腫において、呼吸困難を生じた例はこれまで経験していませんが、リンパ管腫においては報告がありますので、もし息苦しいと感じた場合は医師に連絡して下さい。
この治療を行った場合は、通常は治療の翌日もしくは翌々日、治療2週間目、治療4週間目には必ず受診していただき、副作用のチェックと効果判定を行い、効果不十分の場合は追加の治療を行うことになります。
胎児の時に存在する鰓(えら)の一部が残存し、嚢胞を形成しています。
従来、この病気には手術的な治療が行われてきました。手術は、ただ嚢胞を取っただけでは高率に再発しますので、鰓(えら)の一部の残存する部位を含めた摘出術(嚢胞の摘出に加えて甲状舌管および舌骨の一部の摘出)が行われます。
我々はこの病気に対して、細菌製剤(溶血性連鎖球菌の特殊な株をペニシリンで殺して作製した薬剤:OK-432)を直接嚢胞内に注入し、嚢胞内に無菌的な炎症を引き起こし、ふくろをつぶしてしまう治療法(OK-432嚢胞内注入療法)を行っています。これは、同じ嚢胞性疾患である「嚢胞状リンパ管腫」の治療法として、1986年から始められた治療法です。効果が高く・安全であることが確認されており、現在日本の小児外科の医師の間では「嚢胞状リンパ管腫」に対する第一選択の治療法となっています。OK-432は、ほぼ日本でだけ認可されている薬剤ですが、リンパ管腫に関してのその効果は知られる様になり、欧米でも治療に用いられるようになってきています。また、OK-432は日本においては癌の免疫療法剤として1975年に認可された薬剤で、非常に多くの患者さんに長い期間投与された実績のある薬ですので、その長期的な安全性などに関してもは既に確立されています。
我々はこの治療を1991年頃からまずガマ腫に応用してきましたが、極めて有用でありました。(我々の治療成績では、顎下型ガマ腫の全例、口腔底型ガマ腫の97%に有効でありました。)その後、正中頸嚢胞にも応用して、非常に有用であることが分かっています。(我々の経験では、13例中11例に有効でありました。)
通常、本治療を行うと翌日は病変部が更に腫脹し堅くなり、その後ゆっくりと4〜6週間をかけて嚢胞が縮小していきます。正中頸嚢胞においては1回の治療のみで治癒する場合も稀にありますが、多くの例では、その1〜2週間後に内容液を吸引除去する処置や、2回以上のOK-432嚢胞内注入が必要です。現在までの間、正中頸嚢胞の自験例での再発は経験していませんが、再発率はリンパ管腫における多施設の治験では約9%とされています。しかし、再発した場合でも同じ治療を繰り返せば、多くの場合は大丈夫です。
この治療に伴う偶発症として、「局所の疼痛」、「発熱」などの可能性がありますが、それに対する予防的な投薬を行います。普通、この症状は2〜3日で改善します。ただし、この「局所炎症症状」は嚢胞を消失させる源となる反応であり、この症状が強い場合の方が治る可能性が高くなります。
OK-432にはペニシリンが含まれますので、ペニシリンアレルギーのある場合は本治療は行えません。また、この治療によって一時的に病変部の腫れが強くなりますので、気道(息をするところ)の近くの病変の場合、呼吸困難が起こる可能性も考えられます。正中頸嚢胞において呼吸困難を生じた例はこれまで経験していませんが、リンパ管腫においては報告がありますので、もし息苦しいと感じた場合はすぐに医師に連絡して下さい。
この治療を行った場合、通常は治療の翌日もしくは翌々日、治療2週間目、治療4週間目には必ず受診していただき、副作用のチェックと効果判定を行い、効果不十分の場合は追加の治療を行うことになります。
耳介は軟骨の上に直接皮膚がかぶさる特殊な構造を持っておりますので、外傷を受けると容易に血腫を形成し、なかなか治りません。
従来、この病気には手術的な治療が行われてきました。手術は、袋をつぶれたまま固めてしまうことを狙って、耳介を縫い合わせる手術などが行われていますが、再発率は低いとはいえませんでした。
我々はこの病気に対して、細菌製剤(溶血性連鎖球菌の特殊な株をペニシリンで殺して作製した薬剤:OK-432)を直接嚢胞内に注入し、嚢胞内に無菌的な炎症を引き起こし、ふくろをつぶしてしまう治療法(OK-432嚢胞内注入療法)を行っています。これは、同じ嚢胞性疾患である「嚢胞状リンパ管腫」の治療法として、1986年から始められた治療法です。効果が高く・安全であることが確認されており、現在日本の小児外科の医師の間では「嚢胞状リンパ管腫」に対する第一選択の治療法となっています。OK-432は、ほぼ日本でだけ認可されている薬剤ですが、リンパ管腫に関してのその効果は知られる様になり、欧米でも治療に用いられるようになってきています。また、OK-432は日本においては癌の免疫療法剤として1975年に認可された薬剤で、非常に多くの患者さんに長い期間投与された実績のある薬ですので、その長期的な安全性などに関しては既に確立されています。
我々はこの治療を1991年頃からまずガマ腫に応用してきましたが、極めて有用でありました。(我々の治療成績では、顎下型ガマ腫の全例、口腔底型ガマ腫の97%に有効でありました。)その後、耳血腫にも応用して、非常に有用であることが分かっています。(我々の経験では、7例中7例に有効でありました。)
通常、本治療を行うと翌日は病変部が更に腫脹し堅くなり、その後ゆっくりと4〜6週間をかけて嚢胞が縮小していきます。耳血腫においては1回の治療のみで治癒する場合も稀にありますが、多くの例では、その1〜2週間後に内容液を吸引除去する処置や、2回以上のOK-432嚢胞内注入が必要です。現在までの間、耳血腫の自験例での再発は経験していませんが、再発率はリンパ管腫における多施設の治験では約9%とされています。しかし、再発した場合でも同じ治療を繰り返せば、多くの場合は大丈夫です。
この治療に伴う偶発症として、「局所の疼痛」、「発熱」などの可能性がありますが、それに対する予防的な投薬を行います。普通、この症状は2〜3日で改善します。ただし、この「局所炎症症状」は嚢胞を消失させる源となる反応であり、この症状が強い場合の方が治る可能性が高くなります。
OK-432にはペニシリンが含まれますので、ペニシリンアレルギーのある場合は本治療は行えません。また、この治療によって一時的に病変部の腫れが強くなります。
この治療を行った場合、通常は治療の翌日もしくは翌々日、治療2週間目、治療4週間目には必ず受診していただき、副作用のチェックと効果判定を行い、効果不十分の場合は追加の治療を行うことになります。
リンパ管腫は、リンパ管の形成異常と考えられ、異常に形成されたリンパ管の中にリンパ液が貯留して腫れている病態です。リンパ管腫には、大きな袋の中にリンパ液が溜まっている「嚢胞状リンパ管腫」とスポンジのような小さな袋が集まった「海綿状リンパ管腫」の2種類があります。
従来、この病気には手術的な治療が行われてきました。しかし、手術による摘出は難しく、手術による治癒率は40%以下であるとの報告もあります。
我々はこの病気に対して、細菌製剤(溶血性連鎖球菌の特殊な株をペニシリンで殺して作製した薬剤:OK-432)を直接嚢胞内に注入し、嚢胞内に無菌的な炎症を引き起こし、ふくろをつぶしてしまう治療法(OK-432嚢胞内注入療法)を行っています。これは、京都府立医大の荻田によって嚢胞状リンパ管腫」の治療法として、1986年から始められた治療法です。効果が高く・安全であることが確認されており、現在日本の小児外科の医師の間では「嚢胞状リンパ管腫」に対する第一選択の治療法となっています。OK-432は日本・韓国・台湾でだけ認可されている薬剤であることもあって世界における治療の普及はまだ遅れていますが、その効果は知られる様になり、アメリカなどでも現在治験が行われています。また、OK-432は日本においては癌の免疫療法剤として1975年に認可された薬剤で、非常に多くの患者さんに長い期間投与された実績のある薬ですので、その長期的な安全性などに関しても既に確立されています。
通常、本治療を行うと翌日は病変部が腫脹し堅くなり、その後ゆっくりと4〜6週間をかけて嚢胞が縮小していきます。1回の治療のみで治癒する場合もありますが、約半数例では2回以上のOK-432嚢胞内注入が必要です 再発率はリンパ管腫における多施設の治験では約9%とされていますが、再発した場合でも同じ治療を繰り返せば、多くの場合は大丈夫です。
この治療に伴う偶発症として、「局所の疼痛」、「発熱」などの可能性がありますが、それに対する予防的な投薬を行います。普通、この症状は2〜3日で改善します。ただし、この「局所炎症症状」は嚢胞を消失させる源となる反応であり、この症状が強い場合の方が治る可能性が高くなります。
OK-432にはペニシリンが含まれますので、ペニシリンアレルギーのある場合は本治療は行えません。また、この治療によって一時的に病変部の腫れが強くなりますので、気道(息をするところ)の近くの病変の場合、呼吸困難が起こる可能性も考えられます。小児リンパ管腫においてはこの治療後に呼吸困難が出現し、気管切開(頸部を切開して呼吸する穴を作る手術)が必要になった報告がありますので、もし息苦しいと感じた場合は医師・看護士に連絡して下さい。
この治療を行った場合は、通常は治療の翌日もしくは翌々日、治療2週間目、治療4週間目には必ず受診(もしくは写真による経過の報告)していただき、副作用のチェックと効果判定を行い、効果不十分の場合は追加の治療を行うことになります。