町弁のひとりごと

     作者がぶつぶつ言うページ

 このページは、勝手なひとりごとを思いつくままに書きなぐっていますので 、有益な情報を得る目的で私のホームページを覗いて下さった方は、読まない方 がよいと思います(時間の無駄をしないため)。
 貴重な時間を費やして読んで下さった方は、ご感想などお聞かせいただける幸いです。

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目 次

   98/04/28 ちょっと待って、「マイホーム」

   97/11/06 女性のための危機管理−離婚時に後悔しないために

   97/10/08 「法律事務所への投資」話にご注意を!!    

   97/07/10 チープな推理ごっこは2時間ドラマで十分     

   97/06/10 「ご専門は?」

   97/04/17 弁護士は中立ではない

   97/03/13 「お仕事は?」   

   96/12/12 さみしい話

   96/11/12 返せないものは返さない

   96/10/11 結婚するならそれなりの覚悟を

   96/09/13 ひどい弁護士とは

   96/08/21 インターネットを用いた法律相談の問題点

   96/08/14 「入籍」って何?

   96/08/05 信頼できる弁護士とは

   96/07/30 弁護士の夏休み

   96/07/22 「何かあったら頼む」


98/04/28 ちょっと待って、マイホーム

 「マイホームはサラリーマンの夢」などというスローガンに洗脳されている 方も多数いらっしゃると思いますが、いざ購入しようというときはよくよく考え て下さい。

 不動産自体の性能
 買おうとする不動産に欠陥や手抜き工事などがありませんか。
 特に、建売住宅ならば、違法建築をチェックするのが難しくなります。敷地 が狭かったり、公道につながっていないなど、いずれも、建て替えも転売も困難 です。
 マンションならば、管理組合業者の倒産や、修繕積立費の横領といった問題 もあり得ます。購入後も修繕費がまとまって必要となる点で、リスクに時間的要 素が入ってきます。

 値下がり
 買った不動産が将来値下がりしても、後悔しませんね。
 今後、不良債権処理のための土地売却、農地の宅地転用、少子化による需要 減など、短期ファクター、長期ファクターどれを見ても、土地の値上がりを期待 させるようなものは一切ありません。
 少なくとも、一生そこで暮らす決意がない人が家を買ってはいけません。
 また、不動産市場が崩れなくとも、南側隣接地に高層住宅が立って日照が悪 くなるなど、物件特有の事後的な減価もあり得ます。ちなみに、日照権侵害によ る賠償金をもらえるのはレアケースであり、賠償金も非常に低額です。

 やり直し困難
 例えば、お隣がトンデモない人だったらどうしますか。
 賃貸ならば、隣家と紛争になっても引っ越せば済みますが、買ってしまった らそこに住み続けるしかありません。
 特に、マンションの場合、強烈にわがままな人がいると、修繕工事ひとつ取 っても住民の合意形成は困難になり、マンション全体がスラム化するおそれすら 出てきます。

 借金返済
 現在の収入が続くと仮定した場合、住宅ローンは返済できますか。
 もし、何らかの理由で、収入が減った場合、どうですか。
 現在の収入が、35年間続くという確実な見通しがありますか。
 変動金利の場合、金利上昇局面であなたの収入が確実に上がらなければパン クです。

 借金返済不能
 返せなくなったときに、自宅を売っても多額のローンが残るようならば、自 己破産しかありません。
 社会的信用ほしさにマイホームを買って、結果として根本的に信用を失う人 は後を絶ちません。

 整理困難
 不動産を所有している人の場合、自己破産の実費(あくまで裁判所に支払う お金。予納金という。弁護士費用はまったく別にかかる)は、破産管財人の報酬 に見合った金額として、最低でも50万円になるのが原則です(例外もありますが 、詳しくは弁護士に法律相談して下さい)。
 逆に、資産がない人の場合、自己破産の実費は、約3万円です。
 また、破産せずに、話し合いで返済するとしても、不動産の処分がからむ事 件では、資産が何もない人の事件と比較すると、話し合いは非常に難しくなり、 長期化することは必至です。

 以上のように多大なリスクのあるのが、不動産購入という一大事業です。ち なみに、上記のリスクの例は、大げさに表現しているわけではなくて、私が法律 相談の中で実際に体験する多数の実例のごく一部に過ぎません。

 にもかかわらず、世間ではマイホームを買ってこそ一人前という風潮が極め て強いわけです。
 その理由は単純で、日本が土建国家と言われているとおり、不動産屋や建設 業者の利益が重視されているからです。
 パブルの時は、「どんどん値上がりするのだから、今買わないと損です。」
 バブル崩壊後は、「今が底値だから、今買わないと損です。」
 常に、「今が買い時です。」
 そんな馬鹿なことを言われる商品は外にありません。

 マイホームというのは、高度成長期、主要企業が基幹労働者を会社に一生し ばりつけるための、格好の材料だったわけです。
 終身雇用制、年功序列賃金制のもとでは、将来の収入増を見越して、購入時 点では無理な住宅ローンの返済計画を立てても、最終的に帳尻が合えば、サラリ ーマンとしては文句がありません(しかも、残った不動産は何故か値上がりして いて、含み益すら残す)。逆に、定年まで勤める前に退社してしまっては、その 見通しが一気に崩壊するため、マイホームを所有しているサラリーマンは、一生 会社に勤めるしか選択肢がなくなります。すなわち、会社から見れば、一生飼い 殺しにすることが可能な従順な労働力を手に入れることができるわけです。
 慢性的に人手不足状況にあった高度成長期においては、従業員の不動産購入 を会社が支援することには十分「合理性」がありました。政府も、住宅金融公庫 という、現時点における返済能力を無視し、将来の収入増を期待して貸し付ける 金融を通じて、全面的にバックアップします。やがて、肥大する公共事業部門と あわせ、建設業界は「不況に強い」業種と言われるようになりました。景気が悪 くなっても、何故かマイホームは一定数売れるのです。

 そのような「合理性」はごく限られた場面で成立するものでしかありません でしたが、やがて神話化され、「サラリーマンとして、マイホームを購入してこ そ一人前。」という不思議な社会常識が定着してしまいました。

 そして今時の経済情勢。
 残されたのは、不況にも関わらず建設業従事者の人数が増える一方というい びつな社会構造(もっとも、そろそろ限界のようですが)と、無茶な返済計画を 立てて支払不能に陥った大量の自己破産予備軍です。住宅金融公庫は巨大な焦げ 付きを抱え、その穴埋めは結局税金です。


97/11/06 女性にとっての危機管理ー離婚時に後悔しないために


 離婚に際して女性は厳しい立場におかれがちであることを先に述べましたが ( 96/10/11 )、当事者には、まさか自分が将来離婚紛争に直面するとは思わず、危機管 理が全然できていない方が殆どです。
 女性の依頼者から離婚事件を引き受ける弁護士の立場に立って、いざという ときの備えを列挙しておきましょう。

1 結婚、出産を理由に仕事を辞めない。

 いわゆる専業主婦が三食昼寝付きと揶揄される(もちろん実態とは異なりま すが)特権的な地位を享受し続けるためには、暗黙の前提条件が3つあります。
 夫が早死にしない、夫がリストラされない、そして、夫と離婚しない、です 。
 専業主婦、そしてその期間の長い人ほど、離婚後の生活苦に直面するおそれ が強いのです。

2 安易に子供を作らない。

 離婚後の子供の養育は殆どの場合母親の負担となり、しかも父親が支払う養 育費は非常に低額(払わない人も実際には多い。残念ながら)。離婚後の母子家 庭が非常に厳しい経済状況に陥るのは必至です。
 特に、「子はかすがい」を信じて、子供ができれば夫のぐうたらな生活態度 も改まるかもしれないといって子供を作って、結局ぐうたらは直らず離婚、とい うコースをたどることは最悪です。
 結婚後、子供を作る前に、本当にこの人と一生共に生きていくという選択で よいのか、十分に考えましょう。

3 自分名義の資産を蓄積しておく。

 財産分与という形で、夫名義の資産を分けるように求めていくことは、そも そもスタートラインで不利になっているのです。自宅を購入したら夫単独名義に せず、自分もお金を出して共有名義にする、自分名義の預金もしっかり作ってお く、これらは共稼ぎの人には必須です。専業主婦でも、夫からもらう給料の一部 を自分名義の預金にしてしまう(へそくりですね)ことが強く推奨されます。そ うしておけば、いざというとき、その部分は既得権として確保できるわけです。
 ちなみに、離婚紛争において、夫の側から妻名義の財産の分与を求められる ことはまずありません。

4 夫名義の資産の所在を日頃から把握しておく。

 夫婦間で対立が鋭くなると、とりわけある程度資産を保有する夫は、財産分 与において有利な立場を取るために、やにわに資産隠しを始めます。「財産」が 存在しないことになれば、その「分与」を求めようもないのです。
 特に、預貯金のたぐいは、どこに幾らあるのかあらかじめ把握しておかない と、いざというときなってから妻の側で調べる手だてはまずありません。また、 社内預金や財形貯蓄、さらに退職金額など、妻の側で独自に会社に聞いても、既 に離婚紛争になっていれば、教えてもらえる可能性はありません。このように、 紛争になってからでは調べることが難しい資産はたくさんあります。
 夫婦関係が壊れないうちに、しっかり把握しておきましょう。逆に、自分の 資産の所在を把握されることを嫌がる夫と長続きする方が、不思議ではありませ んか?

 まあ、重要なポイントはこんなものですが、何より一番大事なのは、 安易に結婚しない 、ですね。
 こう書いてくると、世間の常識(早く結婚しろ、早く子供生め、子供生んだ ら仕事辞めろ、自宅は夫名義で買う)とは正反対になります。世間の目、近いと ころでは親の目を気にして人生の方針を決めるのは、明らかに愚の骨頂です。


97/10/08 「法律事務所への投資」話にご注意を!!


 これはひとりごとではなく、大声で訴えます。
 ネットワークに流れている「法律事務所設立への投資」話には決して乗らな いようにしましょう!!
 この話は、以下のような要旨です。

1 ○○社は、弁護士を確保して、近く法律事務所を設立する。
2 同事務所の業務内容は、多重債務者の救済活動であり、これまで培ったノ ウハウにより、必ず高収益を上げる。
3 それに対する投資を呼びかける。投資した元金に対する一定率の配当を保 証する。
  詳細は電子メールにて資料を請求されたい。アドレスは…

 この話には、違法な要素がいくつも含まれています。

1,2について
 もし本当にこのような事業に組み込まれる弁護士がいるとすれば、その弁護 士は弁護士法に違反する非弁提携活動(弁護士でない者から報酬を得る目的で法 律事務の斡旋を受けて受任すること)を行うことになります。また、培ったノウ ハウとは、おそらく、実際の多重債務者の債務整理の処理を「事務員」(実際は 、弁護士でないが業界を泳いでいるセミプロ、いわゆる整理屋)に全面的に委ね 、弁護士は自己の名義をその者に利用させているというものでしょうから、その 「事務員」自身も違法な非弁活動(弁護士でないのに、報酬を得る目的で法律事 務の処理を受任すること)を行っていることになります。いずれも刑事処罰を受 けるべき行為であり、また、発覚すれば、少なくともその弁護士は弁護士会から 懲戒処分 を受けます。
 そのようなセミプロに包括的に委任してやらせている債務整理の内容は、せ いぜいサラ金のいいなりに無茶苦茶な弁済計画を立てるだけですから、結局、債 務者本人が救済されることはあり得ません。案の定、弁済計画通りに払えなくな ると、その弁護士は一方的に辞任して、後は知らないよ、という態度を取ります 。依頼者から見ると、結果的には債務だけが増えて、着手金は丸損です。要する に、客を食い物にする悪徳法律事務所だから儲かるわけです。
 しかし、そんな無茶をする弁護士は、その人自体が食い詰めて、巨額の借金 を抱えていたりして、破れかぶれな状況になっているわけです。いずれはそのよ うな悪事が露見し、弁護士資格の停止や剥奪へという道をたどるのがおちで、絶 対に長続きはしません。
 逆に言えば、本当に、こんな事業に正面切って参加する弁護士がいるのか、 はなはだ疑問な点もあります(水面下で同種の行為を行っている弁護士は、現に 存在していますが…)。もし協力する弁護士もいないのにこのような勧誘を行っ ているとすれば、それ自体、端的に詐欺ということになります。

3について
 不特定多数の人から元金を保証してお金を預かることは、出資法という法律 で禁止されています。その趣旨は、監督官庁からチェックを受けている正式な金 融機関でもない人が、確実に儲かる話があるから私に投資しませんかと広く呼び かけてお金を集めることを認めると、ほぼ間違いなく呼びかけた人が資金繰りに 破綻して大勢の人々に損害を与えることになるため、刑事罰をもって禁じている わけです。ましてや、一定率の配当まで保証するのはもってのほかです。
 最近の事例では、牛のオーナーになりませんかという謳い文句で、実際には 元金保証の投資を呼びかけた業者が何件も摘発されました。形式上肉牛の売買を 間に噛ませることで、出資法違反をクリアーしようとしたのでしょうが、名目は ともかく元金保証をすれば、当然処罰されます。
 したがって、法律事務所設立云々は無関係に、3の文句は明らかに出資法に 違反しますから、この事業全体が違法行為です。

 この投資話のミソは、法律事務所という一見信頼性の高いアイテムで味付け をしてあるところですが、いずれにせよ、

   うまい話には落とし穴がある!!
   本当に儲かる話は人に教えはずがない!!

 これは絶対命題であり、例外はありません。本当の儲け話は、政治家とか高 級官僚とか大会社の役員とか、そういう支配する側の人たちのみが享受できるこ とで、庶民には絶対に回ってきません。
 ネット上にはありとあらゆる形態の詐欺、ねずみ講、マルチ商法がオンパレ ードです。くれぐれもご注意を。


97/07/10 チープな推理ごっこは2時間ドラマで十分


 神戸の小学生殺人事件に関して、マスコミ、とりわけワイドショーと雑誌メ ディアは猛烈な報道合戦を繰り広げてきました。
 被疑者が逮捕されたからといって、刑事裁判で有罪が確定するまでは無罪と 推定されるのが近代刑事手続の大原則ですから、私は、逮捕された被疑者が「犯 人」であることを前提とする議論に加わるつもりは一切ありません。

 ただし、現時点までに動かし難い事実を取り出すだけでも、一連のマスコミ 報道のあまりのひどさを指摘することが十分できます。
 それは、犯人探し報道の暴走ぶりです。
 この事件では、遺体が発見されて以降、今回の被疑者逮捕に至るまで、ワイ ドショーを中心として「犯人像の推定」なる作業が執拗なまでに繰り返されてき ました。「犯罪心理学者」、「精神分析医」、はては「推理小説家」といった「 専門家」(?)を引っぱり出してきてコメントさせ、犯人の性別、年齢、犯行方 法、犯行動機などを「推測」していくわけです。
 しかし、この人たちは、一体全体、事件の何を知っているというのでしょう か? 「専門家」が捜査当局者であれば、捜査の秘密を漏らすこと自体犯罪です 。したがって、当然ながら、彼らは捜査当局とは縁もゆかりもない人々です。と すれば、彼らのコメントの前提となっている事件の情報は、結局はマスコミ報道 しかあり得ません。そして、コメントの前提知識がマスコミ報道から聞きかじっ たものだけであるとすれば、そんな断片的な知識で「犯人像」を語れる蛮勇の根 拠を是非合理的に明らかにしてほしいものです。
 彼ら自称「専門家」の知的謙虚さの欠如、傲岸不遜、退廃ぶりは目を覆わん ばかりであり、テレビの画面で得々と語るその表情こそ「犯罪者づら」に見えて しまいます。おっと言い過ぎか。
 このような「犯人探し」の報道の実質は、現実に起きてしまった極めて不幸 な事件という生の素材を使って、サスペンス系2時間ドラマのようなチープな推 理番組に仕立て上げいるだけです。正に、言葉の本来の意味において、興味本位 に面白可笑しく取り上げているだけです。

 犯人探しに関しては、事件の実際の「目撃」情報も多量に報道されました。 特に大きく報道された「あやしい中年」、「走り去った不審な自動車」、この二 つの情報は今回逮捕された被疑者とは全く矛盾します。ここからは、論理的に、 2つの事態しか想定できません。
   1 目撃された中年ないし自動車の運転手こそが「真犯人」(=逮捕さ れた被疑者は冤罪)
   2 目撃された中年ないし自動車の運転手は誤った目撃情報であった
 現時点でどちらなのかは不明です。しかし、マスコミにはいずれにしても責 任があります。
   1の可能性を考えるならば、
     従前の目撃情報と被疑者との食い違いについて、捜査当局に説明を 求める
   捜査当局を信頼して2と判断するならば
     捜査の方向性を誤らせかねない誤情報を垂れ流したことの謝罪
 ところが、彼らはこれまでの報道内容などすっかり都合よく忘れて、逮捕さ れた被疑者のプライバシー暴露と、例によって「専門家」を担ぎ出しての「犯行 動機の推理」ゲームにうち興じているのです。ああ。

 不幸な事件が起きたことを「おいしいネタ」としてしゃぶり尽くすマスコミ 報道の犯罪性には慄然とさせられるばかりです。


97/06/10 「ご専門は?」


 また更新が遅れてしまいました。
 書くネタを思いついても、日常に紛れてなかなか書けず、いざ書こうとする ころには思いついたネタをすっかり忘れてしまっている、というパターンに陥っ ています。さて、今回は何を書きますか。


 弁護士に対する一般の要望の中に、それぞれの弁護士の専門分野を表示して もらいたい、というものがあります。
 私も時々聞かれます。「先生のご専門は?」
 なるほど、依頼する側としては、同じ金を払ってより高い効果を得るために 、自分の抱えている紛争の処理に熟達した弁護士に処理してもらいたいと考える のは、至極当然のことでしょう。
 しかし、弁護士側の現実から見ると、この問いに答えるのは難しいのです。

 そもそも、弁護士の場合、医者と異なり、明確なカテゴリー分けをされた上 で教育、訓練、実務を積み重ねてきたわけではありません。

 まず、民事と刑事という、もっとも大雑把な区分けですら、専門教育なり専 門訓練なりを受けているか否かという形で弁護士の中に線を引くことはできませ ん。(そもそも何かの専門家になるための教育・訓練の機会は公的には存在して いません)
 さらに、実態としては、刑事事件をいくらやってもそれでは食えないため、 金にならない以上やらないという意味での「刑事はやらない弁護士」(圧倒的多 数派)と、金にならなくても公的意義がある以上引き受けるという意味での「刑 事もやる弁護士」(圧倒的少数派)という区分けしかできないでしょう。
 極めて例外的な事例として、検察官経験者の弁護士(いわゆるヤメ検)が「 刑事しかできない弁護士」になる場合はありますが、これは普通の弁護士とはい えません。
 したがって、普通の弁護士の殆どは、「民事専門」ということになってしま うのです。

 次に、その民事の中で何らかの区分けができないかということになりますが 、現状の弁護士は、殆どといっていいほど専門化が進んでいません。ある特定の 分野のみを受任する弁護士というのは、「渉外」とよばれる日本企業と外国企業 との契約作成等の分野を専門に扱う事務所や、特許・工業所有権といった特殊な 企業法務の分野を専門に扱う事務所などに属している極一握りの人だけでしょう 。
 何故そうなるかといえば、特定の分野について他の弁護士よりも優越してい る旨の広告することが許されていないという面も含めて、要するに、特定の分野 の客だけを受け付けていても、食えないからなのです。(逆に言えば、渉外、特 許などの分野の大事務所はそれだけやっていれば十分儲かる)

 例えば、この私。全くの町弁ですから、事件として多いのは、遺産分割、離 婚、債務整理といったベタベタに庶民的な分野なのですが、このうちのどれかに 絞れと言われたり、これ以外の分野は引き受けるなと言われてしまうと、絶対に 食えないです。現実にも極めて広範な分野の仕事をやっています。来るものは拒 まずでやって、初めて経営的に成立するのが「町弁」です。
 そして、大都会で大企業相手の仕事をしている一握りの事務所を除くと、日 本の弁護士のかなりの部分は基本的に町弁的な経営です。そして、顧問会社など が増えてきて、経営基盤が確立してくると、来る仕事を選別できるようになり、 やがて「飛び込みの相談は受けない」とか、「刑事はやらない」とか、さらに、 金額の大きな仕事しかやらないとか、割のいい仕事に集中するようになっていく わけです。
 マスコミに「○○専門の弁護士」という形で登場する弁護士でも、おそらく は、単にその分野の仕事をそれなりにこなして詳しくなったという人に過ぎず、 本当にその分野のみの仕事しかしていないということではないでしょう。

 一般の方からのニーズとして、専門分野の表示をしてほしいというのであれ ば、渉外、特許、工業所有権などの企業法務の専門表示をされても、全然関係な いでしょう。
 他方、庶民に顔を向けて仕事をしている町弁は、分野を特定せずに広く仕事 を引き受けて初めて経営的に成り立つのが現実である以上、現時点で、専門分野 の表示を弁護士に要求したところで、これまた市民に役立つ情報にはならないで しょう(うちはだいたい何でもやりますよ、という表示だらけになってしまう) 。これが今の弁護士の実態なのです。

 何となく旧態依然の守旧派的議論に感じられるかもしれません。私だって、 自分の得意分野を確立してその仕事だけやっていれば食えるのであれば、それに 越したことはないと思うのですが、町弁の現実からはほど遠いですね。
 ありゃりゃ、後ろ向きの議論で終わってしまった。<この項続く 、…たぶ ん>  


97/04/17 弁護士は中立ではない


 弁護士の仕事について、誤解されている方は多く、自治体での無料相談(公 益的な事業として弁護士会から割り当てが来ます。)や飛び込みの法律相談(殆 どの法律事務所は紹介者がいない人の相談は受けないのですが、私の場合は近所 に法律事務所が全くないこともあり、いきなりの相談も受け付けています。)を 受ける中で、次のようなことを言われることがあります。

1 法的な紛争が生じて、相手方に弁護士が付いたときに、「相手方の弁護士 さんからこういうふうに言われて困っているんですが、法律というのは冷たいも のですねえ。」

2 法的な紛争が生じて、当事者同士でうまく話し合いが付きそうもないとき に、「弁護士さんが間に入って話し合いがまとまるように調整してもらえません か。」

 これらはいずれも誤解から生じています。すなわち、弁護士は法律の専門家 、だから、事案に法律を適用して一定不変の回答を引き出せるはず、という誤解 です。
 確かに、弁護士が、仲裁センターや調停委員といった公的な立場に就任した 上で当事者と接する場合には、中立な法律家の役割が期待されていますが、それ はそのような特殊な場面においてのことに過ぎません。
 弁護士が、通常の業務として、ある法的な紛争に関与していくとすれば、そ れは一方当事者の代理人という立場でしか有り得ないのです。弁護士が、紛争当 事者双方から依頼を受けて仕事をすることは許されません(これを「利益相反受 任の禁止」といいます)。両方から依頼を受けてしまうと、一方の利益を犠牲に して他方の利益を図ったり(例えば、より報酬金をくれそうな方の利益のみを重 視するなど)、両方の利益とも犠牲にして自分の利益を図ったり(例えば、報酬 金目当てにともかくなるべく早く一件落着にしようとするなど)するおそれが出 てくるからです。
 ここからすると、上記2のような依頼を引き受けることができないのはもう お分かりですね。
 弁護士の答えは、
「あなたの代理人として相手方との交渉を担当することはできますが、中立の 立場で調整するというようなことはできません。」

 この点は、不動産屋などとは全く違うわけです。不動産屋は、売主と買主や 、賃貸人と賃借人の間に入って両方から手数料を取っていますが、これは、通常 の取引の範囲内で紛争状態ではないという認識が前提とならなければおかしいの です(この認識が往々にして実態をかけ離れ、どちらかの利益が害されることも よくあります)。
 

 弁護士は、あくまでも、依頼を受けた一方当事者の利益を最大限に追求する のが仕事です。逆に、対立当事者が弁護士を立てれば、その弁護士は対立当事者 の利益を最大限に追求するのです。両者がぶつかり合う中で、結果として公正な 解決に近づいていくのではないか、というのが歴史的に作られてきた知恵なので す。
 ここからすると、上記1も明らかに誤解です。
 相手方の弁護士は、相手方の利益を第一に考えて事実を主張し、法律の解釈 ・適用を主張しているのであって、こちらから見れば「冷たい」、つまりこちら の言い分を考慮していないのは当たり前のことなのです(法律制度一般の問題で はない)。とりわけ、交渉のスタートラインにおける相手方弁護士の主張という のは、いわば相手方の「言い値」であって、通常、なるべく高く言うことによっ てその後の交渉を自分のペースに持っていこうとする作戦が含まれています。

 法律の素人(しかも素直な善意の人)が陥りがちな危険な判断は、相手方の 弁護士から最初にガーンと言われて、
「弁護士さんがそう言っているんだからしょうがないか。」
と考えてあっさりあきらめることです。弁護士といっても、所詮は相手方から 金をもらって介入してきたに過ぎないのですから、単に相手方の立場を主張して いるに過ぎないのです。こちらはこちらで別の弁護士に相談し、こちら側の立場 からする主張をどうやって組み立てていくかを考えなければ、一方的にやられて しまうのです。


97/03/13 「お仕事は?」

 2ヶ月以上このページを更新できませんでした。すみません。
 時間というのはあっという間に立ちますね。
 このHPをソフトバンク社「Dos/Vmagazine」4月15日号の小さいコラムで 取り上げてくれるようです。見て下さる方が少しでも増えると嬉しいのですが。


 さて、初めてあった人や、未だそれほど親しくない人と会話するときに、話 題の流れで「どういうお仕事をされているんですか?」とか聞かれたりすること がありますよね。普通は、「会社勤めです」とか「八百屋です」とか、端的に答 えるんでしょうが、私としては、一瞬、答えに詰まる部分があります。

 普通、答えたとたんに驚かれます。
 もちろん、とてもそうは見えない、ということもあるのでしょうが(これは 喜ぶべきことかも)、「弁護士」というものが日常接触する範囲内に存在すると は予想外の事態だ、という意味が大きいでしょう。
 そして、一部の人は、「ははー、弁護士さんですか。すごいですねー。」( 何が?)とか、妙に身構えた態度になったりします。

 「あ、弁護士ですか。私は○○に勤めてます。」という具合に、あっさりと 話題が流れていくことがまずないのです。
 行きつけのお店でも、私が弁護士だというのを知ったら、とたんに「先生」 と呼ばれるようになったりして。
 職業が話題に上るのは、できれば避けたくなるわけです。

 ちなみに私の人生訓「先生と、呼ばれるほどの馬鹿でなし」

 弁護士が普通の人に身近な存在になって、職業を答えても特段のリアクショ ンがないという社会にならないと、やっぱりまずいと思うのです(まずくないと すれば、そもそも弁護士なんていらないということに過ぎない)。 


96/12/12 さみしい話


 最近事務所を引っ越したため、てんやわんやでなかなかこのページを更新で きませんでした。ごめんなさい。もっとも、更新が遅い! と言って下さるよう な熱心な読者はいらっしゃらないかもしれませんが…。
 文句やご批判でも何でも結構ですので、ご感想メールをお待ちしております 。


 弁護士の収入というのは、毎月強烈にアップダウンします。
 弁護士の報酬は、基本的に、
 ・事件開始時に着手金
 ・事件終了時に報酬金
がいただけるだけです。
 そうすると、事件処理期間中は売上になりません。売上があるのは、新しい 事件が来たときか、手持ちの事件が終わったときか(ただし、報酬金を踏み倒さ れることもないではない…)、いずれかです。
 そして、いずれもが、弁護士の意思のみによって左右できることではありま せん。今月は売上が少ないなー、と思ったからといって、客が来てくれるわけで もないし(超能力?)、自分の都合で事件の解決時期を早めたりできるわけもあ りません。

 優良な顧問会社がたくさんあって月々間違いなく多額の顧問料が入る弁護士 は別問題でしょうが、私のような若輩コネなし町弁にとって、進行中の事件を多 数抱えて走り回っているのに見るべき売上がない月、というのがいつ来ても不思 議ではないわけです。

 なんか貧乏くさい話になってしまいました。もうかってる弁護士にはバカに されそうですが、こんな弁護士もいる、というちょっとさみしいお話。


96/11/12  返せないものは返さない


 町弁をやっていると、どうしても債務整理(いわゆる多重債務について、分 割弁済の交渉をしたり、自己破産を裁判所に申し立てたりする事件)を相談され る機会が多くなります。
 弁護士として一番困るのは、実際には、ある時点で返済不能の状態に陥った にもかかわらず、素人判断で無理矢理自転車操業を続け、ぐちゃぐちゃにしてし まった後で相談されることなのです。そして、実際に相談においでになる方は、 ほとんどそうなのです。

ぐちゃぐちゃにする例

1 親兄弟から借りまくって自転車操業を続けたため、結局あきれ果てられて 見捨てられた。

→返済不能なのに自転車操業を続けても金をどぶに捨てているのと一緒です。 他のサラ金から借りた金ならまだしも、親戚の金をどぶに捨てるのはやめましょ う。
 だったら、最初から、弁護士に整理を依頼する費用を援助してもらうべきで す。
 逆に、もし、親類に多重債務で困っている人がいても、すぐに返済資金を貸 すのは決して本人のためにならない、ということを是非知っておいて下さい。そ うではなくて、弁護士に相談せよと強く指示し、実際に弁護士に相談に行った暁 には弁護士費用を援助してやる、というのが本人の更生のためには一番いいので す。返済資金を援助するにしても、必ず弁護士を通じてやりましょう。そうしな いと、サラ金のいいなりの「いいお客さん」になってしまうのが関の山です。

2 チラシなどで「低利一本化」などをうたって勧誘し、実際には多重債務者 を食い物にする整理屋、コーチ屋、さらにこれらの人と組んでいる一部悪徳弁護 士に債務整理を頼んでしまい、その結果かえって債務が増えてしまった。

→弁護士会主催の法律相談(ないしサラ金相談)を担当している弁護士は、み んな真面目で信用できますので、必ずそちらを利用して相談して下さい。
 絶対に、新聞折り込みのチラシやスポーツ新聞の「低利一本化」という広告 にだまされてはだめです。

 ともかく、サラ金、信販会社などは取り立てのプロですから、素人が太刀打 ちできる相手ではありません。取り立てのプロに対抗するには、債務整理のプロ すなわち弁護士に頼む以外にないのです。
 素人判断で無理矢理に自転車操業を続けるのはまったく無駄な努力であり( サラ金はもうかっても自分はちっとも楽にならない)、かえって事態を悪化させ 、後から弁護士が助けたくても助けられないほどひどい事態に陥る原因にすらな ります。

 返せないものは返さない、返せなくなったら弁護士に相談し、返せるような 形に交渉し直すなり、自己破産するなりして、自転車操業に費やすまったく無駄 なエネルギーを、将来に向かって立ち直っていくための建設的なエネルギーに転 換すべきです。それがご本人のためです。
 債務整理を真面目に取り組んでいる弁護士は、そこに公益的な価値を見いだ し、あえて労力の割に儲からない仕事をやっているのです。 


96/10/11  結婚するならそれなりの覚悟を


 町弁をやっていると、どうしても家事事件(親族や相続などの関係の事件) を相談される機会が多くなります。また、私の場合、役所の無料相談や弁護士会 の有料相談をかなりの頻度でやっているので、いよいよそういった類の話を聞か される機会が多くなります。

 ということで、離婚です。
 相当なペースで離婚相談を聞いてます。今のところ数十のオーダーですが、 何年かやっていれば、簡単に数百のオーダーにいっちゃうでしょう。
 私自身の体験として多いのは、まだ結婚して数年、しかも、子供が幼稚園に 行くか行かないかという状態で離婚を希望する人が多いことです(どうせ離婚し たいなら、せめて子供は作らないでおいてくれと言いたくなるが…)。

 つくづく感じるのは、そんなに離婚したい人と、そもそも何で結婚したの?  という疑問です。結婚前には相手の正体がよく分からなかった、しょせん一緒 に住んでみないと正体は分からない、という一般論は理解できます。しかし、そ んな一般論は当たり前のことであって、誰だって知ってることでしょう。
 結婚をしよういう決断が大バクチ(下品な表現で済みません)なことは誰だ って十分分かっているはずで、大バクチを貼る以上はよくよく考えてのことじゃ ないんでしょうか。
 離婚というのは極めて大きなエネルギーを消耗する一大行事です。インター ネットを利用している方は割合若い方が多数でしょうから、これから結婚すると いう方も多いでしょう。くれぐれも、結婚するときは慎重に考えて下さい。結婚 するということは、選択ミスを犯した場合、離婚に伴う多大なエネルギーの浪費 を必要とするリスキーな行為だということを十分に認識しておいて下さい

 それから、男性に言っておきます。子供の養育費や財産分与など、普通の責 任感を持った男性であれば、離婚時およびその後も多大な出費を強いられる覚悟 が必要です。

 女性に言っておきます。離婚の際に、男性からガッポリ慰謝料や財産分与が もらえるのが当たり前だと思ったら大間違いです。相談を聞いていると、異常に 無責任な男性が多く、そういう男性については、金をもらえるどころか、何も要 らないから一刻も早く離婚してくれという話になることもよくあります。とりわ け専業主婦指向のあなた、離婚になったら貧乏生活に陥ることを覚悟しておいて 下さい。

 こういう話は学校で教えてほしい(本気半分、冗談半分)。結婚という言葉 に、やたらと美しい響きをもたせる風潮は本当にやめてほしいです、一町弁とし ては。 


96/09/13  ひどい弁護士とは

 弁護士が非行をして弁護士会から懲戒された場合、その事実を広く社会に 知らせるために公告されることになっていますが、現実に市民の目に触れること はほとんどないと思います(マスコミが取り上げでもしない限り)。日弁連の機 関誌「自由と正義」には、毎月数名の懲戒公告が掲載されますが、これは市民に とっても非常に重要な情報と思います(自分が依頼した、ないしこれから依頼し ようとする弁護士から被害を受けないため)。

 そこで、もしかしたら他の弁護士から顰蹙をかうのではとおそれつつも、「 自由と正義」に掲載された懲戒公告情報の要旨(弁護士の非行内容の概略)を私 のホームページで紹介することとしました。ただし、公告には懲戒を受けた弁護 士の実名が出ていますが、私のページでは無用のトラブルをさけるために名前は 出しません。どうしても名前が知りたい方は、日弁連に問い合わせれば教えてく れるんじゃないでしょうか?(教えてくれるかどうか私も知りませんが、公告し て実名を出している以上、教えてくれないとおかしいんじゃないですかね…)。

 今月の懲戒情報は、市民が弁護士の非行から身を守るための予備知識として 御覧いただければ幸いです。もちろん、弁護士の大多数は信頼されるべき仕事を していますので、いたずらに警戒されても困ります。信頼してくれないと弁護士 は仕事ができませんから…。結局、眼前にいる弁護士が信頼に足りるか否かは、 個々の依頼者がご自身の目で判断されることです。


96/08/21  インターネットを用いた法律相談の問題点

 このホームページでは法律相談の受付はしていませんが、今後、インター ネットの利便性を法律相談にも生かせれば、一般の方にもより弁護士を身近に感 じてもらえるでしょうし、ひいては法に基づいて紛争を処理するというより公正 な社会に近付く効果が生まれると思われます。

 とはいうものの、オンライン法律相談には幾つかの問題点があります。
 まず、法律のルールは一定のものであっても、それを適用したときの結果は 事件によって様々に違ってきます。限界事例では、結局、裁判をやってみなけれ ば分からないという場合もあります。法律相談に対する回答というものは常に事 件毎に個別であり、個々の事件の事情、さらにその事情を裏付ける証拠が存在す るのか否かによって結論を異にしてしまう性格のものです。ところが、電子メー ルで相談を受けても、相談者に細かい事情まで書いてもらうことは事実上困難( 素人にはどこがポイントかが分からない)ですし、まして証拠(例えば契約書な ど)を見せてもらうことはできません。チャットでリアルタイムに問答しながら 、証拠書類をスキャナーで取り込んでバイナリーメイルで送ってもらうという形 も一応考えられますが、そこまで手間暇がかかってくると、実際に事務所に来て もらって相談する方が依頼者にとっても早いということになりかねません。
 弁護士からみれば、細かい事情も証拠も分からないままアドバイスしてしま うと、もしそれが事態を悪化させたときには責任問題となってしまいます(いわ ゆる弁護過誤)。結局、現状では、電子メールによる法律相談を受けても、その 性質上、弁護士としては当たり障りのない一般論を回答をするしかなくなり、当 該事件についての具体的な指針をくれというニーズを満たすことは難しいと思い ます。

 やはり、私としては、「ともかく、関係ありそうな書類は全部持って、弁護 士に会いに行ってみて下さい。」というアドバイスが、現時点では最良だろうと 思います。そういうわけで、弁護士と相談できる方法の紹介をこのページのメイ ンにしているのです。
 何人かの方が具体的な法律相談のメールを下さいましたが、このページでは 受け付けないこととしていますので、回答していません。ごめんなさい。


96/08/14  「入籍」って何?

 今日までの変更点は、「その他のリンク」のページを作ったことと、それ ぞれのページから他のページへ直接飛べるようにしたことぐらいです。テキスト オンリーだとWWWっぽくないという意見もありますが、画像データを入れると重 くなってしまいますし、ともかく入れるべき画像が思いつかないので、検討中で す。


 先日、「ゴクミが妊娠6ヶ月で結婚へ、ただし入籍はせず」というニュース (? 純粋なプライバシーにどういう報道価値があるのか不明ですが、それはさ ておき)が流れていましたが、「入籍」って何? こんないい加減かつ時代錯誤 なマスコミ用語は早く放逐してもらいたいものです。

 まず、アレジは日本国籍を有しない以上、そもそも戸籍がありません(だい たい、戸籍制度という極めて特殊な、そして極めて高精度の国民管理システムを 持っているのは日本だけ)。外国人と婚姻する場合に籍を云々する余地はないの です。日本国籍を有する人と日本国籍を有しない人とが婚姻届を日本の役所に提 出しても、日本国籍を有する人の戸籍にその旨が記載されるだけで、どこかに「 入」ることはありません。

 さらに言えば、日本国籍を有する人同士の結婚でも、夫の氏を選択したから といって、夫の戸籍に妻が「入」るわけではなく、二人のための新しい戸籍が作 られるだけのことです。
 ところが、一般的な受け取りとしては、婚姻届の提出=入籍=妻が夫の籍に 入ること、ということになってしまっています。これは、戦前の「家」制度の意 識がそのまま残ってしまったものです。個人の尊厳を基調とする戦後憲法とは相 容れない感覚であるにもかかわらず、戸籍制度が戦前のままで温存されてしまっ たため、こんなことになってしまっているのです。

 さて、選択的夫婦別姓制度の導入が検討されていますが(といっても自民党 のジイさん連中の妨害ですっかり先行き不透明。この人達は、自分の妻から「別 姓にしてほしい」を言われるのを実は真剣に恐れてたりして)、これに伴い戸籍 制度がどうなるかという話が聞こえてこないように思います。婚姻届提出時に将 来出生する子供の氏をあらかじめ選択し、子供の氏を統一しなければならないと いう法務省の改正案は、現在の戸籍制度をなるべくそのまま温存しようという意 志が透けて見えます。子供の氏の事前統一にこだわるのは、これまで夫婦の氏= 「家」の氏という意識で選択させていたものを、今度は子供の氏=「家」の氏に スライドさせようということではないでしょうか。
 戸籍という用語からして戸=家の籍という意味なわけですから、日本社会が 真に個々人(とりわけこれまで差別されてきた女性)の人格を尊重する法文化を 持つためには、国民登録制度の抜本的な変革が不可欠です。夫婦別姓制度と問題 と共に、戸籍制度自体の問題にも関心が集まることを期待したいと思います。マ スコミはもっと勉強せい。


96/08/05  信頼できる弁護士とは

 これまでに200人以上の方がホームページを見て下さったようですが、作者 としても、どういう方々が見ていらっしゃるのを知りたいという気持ちがありま すので、できればご感想のメールをお送り下さるようお願いします。また、こう いう情報を載せてほしい、といったご要望もいただければ、できる範囲で取り入 れていきたいと思います。


 先般、弁護士がインサイダー取引をしたとして逮捕されましたが、報道され ている内容を見る限りでは、唖然とするしかない事件です。こういう事件が摘発 されると、弁護士は法律の裏をかいてガッポリ儲けている、というイメージがま すます強められることになり、困ったものです。私自身は、幸か不幸か、企業の インサイダー情報を知り得るような立場には一生ならないでしょうから、こうい う誘惑があること自体、今一つピンと来ませんが…。

 むしろ、お客さんのお金に手を付けるような低レベル(?)の事件の方が、 それを見た読者が「自分が頼んだ弁護士は信頼できるんだろうか?」と真剣に考 え始めるきっかけになるので、大きく報道されるべきだと思います。実際、バブ ルで大けがをして資金繰りに窮している弁護士もいるはずですから(こういうこ とを書くと他の弁護士から苦情を言われるかも知れませんが、書くべきと思った ことは書く、と)。
 大きくて立派な事務所を構えているからといって、必ずしも信頼できるとい うものではないですよ(私の事務所が小さくて粗末なので、負け惜しみに聞こえ るかもしれませんが…)。依頼者は、自分の弁護士に対し、事件の経過をきちん と報告してくれるか、疑問点は丁寧に教えてくれるか、現金を払ったら領収証、 預けたら預り証をきちんと出してくれるか、といったことをチェックし、要求す べきは要求するという態度で臨むべきと思います。ただでさえトラブルになって 弁護士を頼んだのに、その弁護士とさらにトラブルになるようでは、何をやって るのか分からないですから。

 ただし、何でも好き勝手なことを弁護士に要求すれば足りるというものでは ありません、念のため。弁護士としては、すべきことはしますが、できないこと を要求されてもできません。できることとできないこととの区別は、弁護士が依 頼者に時間をかけて説明すべきことですが、そういうことをきちんと話してくれ る弁護士が良い弁護士だと思います(自戒も込めて)。忙しいからとおざなりな 説明しかしてくれない人(依頼者は、そんなに忙しいのは立派な証拠、と感心し ている場合ではない)、逆に、依頼者が無茶な要求をしても「はい、はい」と言 いなりになってしまう人は、どちらも問題ありです。


96/07/30  弁護士の夏休み

 今日までの更新点は、カウンターの設置(デザインが素っ気なさ過ぎるの で改善を検討中)、弁護士ホームページへのリンクの拡充、一部ページの色の変 更(黄色は見にくいという意見もあり試行錯誤中)です。

 このホームページを見た私の友人の感想メールは、この「ひとりごと」につ いてのものばかりでした。実用ページは、法律相談の必要にかられている人以外 にはどうでもいい情報なので、このページにいろいろ書き連ねて個人ホームペー ジらしさを出していきたいと思っています。


 さて、弁護士には夏休みあるでしょうか。
 まず、個人事業主ですから、基本的には、勝手に長く休めばいいのでしょう が、仮に事務所を開けていたら来たであろうお客さんが他所へ逃げてしまうので はないかという危惧が常にあります。
 しかし、それよりも、手持ち事件の裁判の日程の方が問題です。つまり、裁 判所の夏休みに振り回されるということ。どういうことかというと、裁判所とい うところは、全体が一斉に休暇に入ることはなく、部署毎にずらして休みを取り ます。そうすると、常にどこかは開いているわけで、下手をすると、8月中も常 時裁判の日程が入っているということになりかねません。あらかじめ手帳に×印 を入れておいて、裁判所からこの日はどうですかと聞かれたら「出張でいません 」とか答えたりして(裁判期日の提案を強く断るときの常套文句)、ようやくあ る程度の休みを確保することが可能になるのです。

 それでも、他の弁護士やお客さんとの打ち合わせなど、他の日にはどうして も日程が合わないときに、結局、手帳の×印の上に、さらに予定を書き込んじゃ ったりして、どんどん休みが消えていくというのが実態なのでした。


 96/07/22  「何かあったら頼む」

 弁護士という職業は、日本人の日常生活にとってはおよそ無関係な存在と 見られています。
 私が弁護士になったときには、友人・知人は皆、いたずらっぽい笑みを浮か べて「何かあったらそのときは頼む。」と言ったものでした。
 その意味するところを私なりに敷衍すると、

1 弁護士が必要なのは「何かあったとき」、つまり日常ではない。
2 「何か」とは、漠然と、警察に捕まる事態がイメージされている。
3 そもそも、自分に実際に「何かある」とは思っていない。
4 万が一「何かあった」場合に「頼む」ことは、責任逃れ・揉み消しのたぐ いがイメージされている(政治家への陳情と同レベル?)。

といったところでしょう。この分析は結構正確だと自負してるんですが。
 さて、医者も弁護士も、普通の人から見れば、「できれば世話になりたくな い」職業という面では同じです。しかし、医者の場合は「いつ世話になるか分か らないからなるべく近くにいてほしい」という目で見られていますが、弁護士の 場合、今の日本社会では、そういう職業がないと困るという共通認識すらあるも のか、怪しい気がします。

 一般に、「弁護士」という言葉から抱かれる職業イメージは、「難しい試験 に合格した偉い人」「儲かる」という程度のことでしかなく、前者は学歴社会の 価値観の延長線上に過ぎず、後者はモロに銭儲けの話ですから、いずれにしても 、倫理的な尊敬を得られるものではありません。


 人が社会を構成して生きている限り、人と人との軋轢、揉め事の発生は不可 避です。そのときに、殴り合いで決める(腕力が強い方が勝ち)、血筋で決める (貴族の勝ち)、有力者に決めてもらう(近親者やコネのある方が勝ち)、社会 的力関係で決める(財力や権力のある方が勝ち)などの方法でも、紛争はいずれ 収まるでしょう。人類は長い間そうやって決めてきたわけですから。
 しかし、どうもそれではまずいのではないか。みんなで話し合って決めたル ールを用いて、中立の人に客観的に裁定してもらった方が、より公平で、正義に 適うのではないか。そうすれば、社会的権力を持たない側でも、理があれば、勝 つことが可能になるだろう。
 司法というシステムは、そのような正義・公平の観念に裏打ちされているか らこそ、存在意義があるわけです。
 逆に言えば、裁判官が「偉い人」「賢い人」、さらに言えば「お上」だから 、紛争を裁定する権限があるのだ、という感覚では、結局、有力者・権力者に決 めてもらう方法と大差ないことになってしまいます(日本の司法の現実もそっち へ流れがち)。
 そうなると、弁護士の存在も、裁判官というお上にコネのある人、お上に取 り入るのがうまい人、という位置付けに陥りかねません。刑事事件をもみ消して くれる人、というイメージは、まさにこの位置付けにぴったりと符合しています 。

 現実に引きつけて話をすると、弁護士と相談しないばかりに、極端に不利益 な書類にサインさせられたり、払わなくても良い金を払わされたり、甚大な被害 を被っても泣き寝入り、という人が、本当に大勢います。腕力、コネ、財力、権 力のある人は、自らの力において自らを助けることが可能でしょうが、そのよう なものを持たない人は、簡単にやられてしまいます。
 例えば、電話攻勢に屈したというようなささいな場合から、職業的な脅し文 句に震え上がった場合(悪質商法、サラ金の取り立てetc.)、はては公権力や社 会的権力にねじ伏せられた場合など、様々なヴァリエーションがありえます。
 そういったケースの発生を防ぎ、あくまでも公正なルールに基づいて紛争が 解決されるような社会を追及することが、弁護士の使命です。このような活動を 通じることによってのみ弁護士という職業は尊敬され得るものになるでしょう。

 一方で、弁護士としても、財力、権力のある人とだけ仲良くしていた方が、 より簡便に、より高額な収入を得ることが可能です。現実問題として、弁護士の 多くも、その路線を目指して営業活動にいそしんでいます。
 弁護士という職業が社会に存在することの意義をなかなか認めてもらえない という状況には、自業自得の要素が多分にあるんですけどね。


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