【スレイヤーズSS】 競馬場の死闘! 後編


             前回のあらすじ。
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天才美少女魔道士リナ=インバースは、ナーガの連れてきた個性豊かな連中が、仲
間に加わったせーで、路銀に困っていた。いやがるリナを、連れの一人、自称・暗
黒魔道士カイル(博打オタクでもある)が無理矢理テゴメにして・・・・あ、違った。
競馬場へと引きずっていった。はたして金貨1枚の運命やいかに!?
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 あたし達は、ガイリアシティ・王国公認競馬場へと足を運んでいた。
 王国公認競馬場。それは、この世界唯一の公式で認められた競馬場なのだ。
 ……ったく……あたしは博打なんかヤなのにぃ……
 何故って? 博打は損することがある。だからヤなのだ。ンなことやってる
暇あったら、盗賊団の一グループあたり闇に葬って、おたからブンどった方が
はるかに効率がいいからだ。
 だが、カイルはあんな状態だし、それにあたし自身ちょっと疲れてるんで、
しぶしぶ競馬をすることになったのだ。
 「っっしゃあああああああああっ! まかせておけよっ!
  オレの暗黒魔法で一発一山当てちゃるわいィィィィィィィィィィィッ!」
 まだわめいてる……
 そりゃあ、本当に一山当たれば、あたしとしても、嬉しいに越したことはな
いのだが……いくらなんでも金貨一枚からでは……
 「ねえねぇ……みなさぁん。競馬ってなんですかぁ?」
 世間にうといエルフ娘が、相変わらずノビた口調で言う。
 「わからないの? 競馬ってーのはぁ……」
 ミリスの疑問をポプリが説明している。血みどろオタクとはいえども、けっ
こう世話好きな一面もあるよーだ。
 「ほーっほっほっほ! 着いたわよ! 王国公認競馬場・アリーマに!」
 ナーガが高笑いしながら言った。とーぜんのことながら、善良な一般市民が
逃げていったことには、まったく気づいていない。
 ちなみに、アリーマとゆーのは、ここの総支配人アリーマ=キーネンの名を
そのまま付けたらしい。
 できれば……ネーミングを、もーちょっと斬新にしてほしかった。
 「ほう……随分デカい建築物だな。いかにも、どつきがいがありそーな」
 ジンが、どつきオタクまるだしなことをほざいてる。
 「壊さないでよね……頼むから」
 「うふふふふふふふふふふふふっ! 馬の活け造りやっちゃるわっ!」
 …………ジンもジンだが、レミーさんもレミーさんぢゃっ!
 あたしは極力気にしないことにしながら、馬券売場へと向かった。


 「……をををっ!?」
 カイルが、馬の名前を見ながら驚愕の声を上げた。
 なんか……ヤな予感がするのは、あたしだけか……?
 「リナっ! おまえが出てるぞっ!」
 「……っなっ!? 何よそれわっ?!」
 「ほれっ! 1.リナノドラマタンって……」
 「あほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 今ので脳血管3本はブち切れる思いだった。ほんとーに、どーゆーネーミン
グしとるんだ! ここわっ?!
 「ほーっほっほっほ! こっちにも何か聞いたことあるよーな、ないよーな
連中がてんこ盛りねっ!」
 2.『フィリオネルネイチャー』
 3.『ナリタアメリアン』
 4.『ゼルハヤヒデ』
 5.『メジロガウリィーン』
 6.『ジョセガサイキョー』

 何だかよくわからん名前ばっかりだったが、二つだけあたしの脳髄をマヒさ
せる名前があった。
 「ああああああああああああああああああああああ……」
 あまりのことに頭を抱えてしまうあたしだった。
 さっさとつぶした方がいーかもしんない……この競馬場……
 「リナさんって、ワーホース(馬人間)だったんですねぇ!
  すごいですぅっ! それじゃぁ、知能程度も馬並なんですかぁ?」
 ミリスが、神経逆撫でしてるとしか思えないセリフを吐いた。
 「ほーっほっほっほ! これがほんとの馬鹿ってヤツねっ!」
 ナーガのセリフが、あたしの脳にトドメをさした。
 ……ぷちいいっ!
 「黄昏よりも昏きもの……血の流れより紅きもの……」
 キレたあたしは、迷わず外道を葬り去るべく竜破斬の詠唱にはいった。
 「うっっぎゃーーーーーっっっ! やめろっ! やめるんだあああっ!
  そんなことをしても、おかーさんは浮かばれんぞーーーーーーーーっ!」
 「どーせなら、ジンにでも保険金かけてからにしてくれーーーっ!」
 「いやあああああっ! まだ魔族も斬ったことないのにィィィィッ!」
 「私は、ナーガ様にキスしてもらってから死にたかったんですぅ!」
 「ほーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほ!」
 口々に、正気の沙汰とも思えないよーなセリフを吐く一同。
 あたしはこんなのと旅していたのか……? 改めて、恐るべし……
 とりあえず、呪文を撃ちたい欲求を抑えるあたし。
 「っとっ……とにかくっ! さっさと馬券買ったら? 時間まであんましな
いし……」
 「くっくっくっく……もう買ったぜ」
 不気味に笑うカイル。
 「どれに賭けたのよ……? たった一枚しかないのに……」
 「ふっ! もちろんリナノドラマタンに決まってるだろーに!」
 自信たっぷりにゆーカイル。あのなあああ……
 「そりゃ……まあ……あたしみたいな有名人の名前がつくほどだから、よっ
ぽど早い馬なんでしょーけど、それじゃー勝っても儲かんない程度の、賭率で
しょーが!?」
 とんっ。とんっ。肩をつつかれる。
 後ろを振り向くと、ジンが何やら指さしている。
 そちらに視線を向けると……
 『1.リナノドラマタン  5000倍』
 ……をい……
 「だあああああああああっ! 一体、あたしを何だとおもってんのよっ!」
 思わず叫んでいたあたし。
 「よく見ろ。そっち」
 「へ?」
 『2.フィリオネルネイチャー 0.000000002倍』
 『3.ナリタアメリアン    0.0003倍』
 『4.ゼルハヤヒデ      0.04倍』
 『5.メジロガウリィーン   論外』
 「……他には……?」
 やっとのことで声を絞り出すあたし……
 「リナさん。あれ」
 『6.ジョセガサイキョー 0.00000000000000001倍』
 ………………………………………………
 この時点で既に脳味噌が白くなっていたのは、あたしだけではないだろう。
 ただ一人……闇に魂を売ったギャンブラーを除いて……
 「ふはははははははははははははははははははははははははははははっ!」
 いつまでも響くカイルの笑いも、あたしの耳には入らなかった。


 『えー。これより本日第3回目のレースを始めます』
 風の精霊魔術を使った、実況中継が流れ始めた。いよいよレース開始だ。
 それにしても……こんなもん3回もやってんのか? 内心ツッコむあたし。
 『スタート!』
 一斉に馬が走り出す。
 『おーっと。全ての馬、番号順に綺麗に並んでおります』
 ん? 賭率と全然合わんよーな気が……?
 「あっ! リナさんっ! アレ見てくださいぃぃっ!」
 突如、ミリスが叫ぶ。
 あたしが視線をそちらに向けた時には、馬達が第1カーブにさしかかった所
だった。異変はその時起こった。

 どどどどどどどどどどどっっ! ぐちゃぞりばごぐしばきびゃっっ!

 それは、あたし達だけじゃなく、観客誰もが予想外だったろう。なんと、馬
の1頭が、カーブを曲がらず観客席に突撃をかける!
 あの馬は……確か……
 『おーっと。予想通り、今日もコース外を爆走しております。5番・メジロ
ガウリィーン! いやーすごい暴走ぶりですね。特別実況のアークさん』
 『うーむ……やはり、パワーばかりつけても頭の悪い馬では、何の意味も持
たないとゆーお手本のよーな馬ですね』
 『今日は何人死人がでますかねー。はっはっは』
 死ぬほど無責任なことをぬかす特別実況。
 「……ほんとーに競馬って言えるの……? これ……」
 ポプリが、ぼーぜんとしたまま呟く。
 「……あたしに聞かないでよ……」
 「ふっ! 問題はこれからなんだよっ! 終わりよければ全て良しだっ!」
 カイル……そこまで豪語するか……?
 「……ねえっ! リナっ! あれどーゆーことよっ!?」
 「こ……今度はなにっ?!」
 ナーガが間髪いれずに叫ぶもんだから、びっくりしつつ振り向くあたし。
 「あれよっ! あれっ!」
 「……………………?」
 馬達は、その後は順調に進んでいるよーに見えたのだが……
 ……をや……?
 確かに、走り続ける馬はいるのだが、かなり後ろの方に二頭の馬がじっとし
ている。よく見ると、二頭とも寄り添うような感じでいる。
 ……? もしやあれわっ?! アツアツらぶこめかっぷる(ハアト)っ!
 『をーっと。ゼルハヤヒデ&ナリタアメリアン、どーやら二人だけの世界に
ハマってしまったもよーです! いやーいい雰囲気ですねー』
 二人って……あれは馬だろが……
 『やっぱ青春って良いですよねー……』
 『ううっ……若い頃思い出しますねェ……』
 ……ここの特別実況って……いったい……?
 さらに、事態は頭が痛くなる方向へと進む。前の方を走っていった馬が、ら
ぶらぶ馬の方へ戻ってきた。そこに始まる問答無用の実況中継!
 『ああっ! 二頭を祝福すべく、フィリオネルネイチャーが、駆け寄ってき
た! 素晴らしいっ! 感動の展開ですっ!』
 「うむ。我が拳も感動しているぞ」
 ジンがわけわからんことを言う。これってもう競馬じゃないぞ……
 瞬間。あたしは異様な錯覚を覚えた。それは、滝のよーな涙を流しつつ、夕
日に向かって青春している馬達の光景だった……
 ……セリフまで聞こえてきた……
 『ををっ! 我が娘よっ!』
 『お父さま……』
 『義父さんと呼ばせてくれっ!』
 ますます頭痛が激しくなってきた。何でこんな光景が……?
 「どしたの……? リナ」
 ナーガが不思議そうに見る。
 「何でもない……」
 
 レースの方は、いよいよクライマックス!
 第4カーブにさしかかる馬二頭! 両者ぴったり並んでいる!
 『おーっっと! 並んだ並んだ! いや違うっ?! わずかながらにジョセ
ガサイキョー前へでる! どっちだっ!? どっちだあああああっ!?』
 その時!
 「もォォォォォォォォォォォォ我慢限界ィィィィィィィィィィィィィっ!
  行くわよァァァァァァァァァァっ! ポプリ! ジンっ!」
 レミーさんが吠えた!
 『らぢゃーっ!』
 それにならう二人!
 をひをひをひっっ!?
 いったい、どーやったのか、あたしが瞬きしている間に、既に三人は、コー
ス上へと爆走していった。
 「さあ覚悟しろっ! 我が拳によって永遠の闇の恐怖を味わえいっっ!」
 ジンが意味不明な奇声を上げ、迷わずジョセガサイキョーの前に立ちふさが
る。刹那……

 ぐちゃっっ! ぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりっ!

 あ、ひかれた。
 これほどのユカイな見物は他にない。これで、レース無効にでもなるはずだ
が、そんなものはすっかり忘れて、固唾をのみつつなりゆきを見守るあたし。
 (冷静になったなァ……あたしも……(笑))
 『斬るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!』
 二人でイッた声上げ、突っ込むレミー&ポプリ。だが……

 ぎぢぃぃぃぃぃぃぃぃんんんっ!!

 馬の首を一薙にするっ! しかしなんと! 刃はあっさり弾き返されるっ!
 『うぞおおおおおおおおおおおおおおおおおっ?!』
 悲鳴を上げて間もなく、やはり吹っ飛ばされる二人。
 ほんとに馬か……? あれ……
 その疑問に答えるべく、ミリスが言う。
 「あの馬さん、魔力強化されてますぅぅ……」
 「それってイカサマじゃー……?」
 まあ、全部の馬があんなんじゃ、イカサマもクソもないとも思うが……
 『さすがですっ! 金貨三億枚かけて魔力強化された、ハイパーホースの前
に敵はないっ!』
 ……なんだそれわ……
 「ほーっほっほっほ! ドコの馬の骨か知らないけど覚悟するコトねっ!
  ……はぐうううううううううううううううううっっ?!」
 当たり前なコトを言うナーガ、カンペキにつぶされたよーだ。
 あほ。
 あ、ゴールしたな。
 『ただいまのレース。ジョセガサイキョー1位です』
 無情な実況中継が流れる。
 「うにょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?
  そんなっ! 我が賭けはカンペキだったはずだっ! なぜ負けたっ!」
 カイルが絶叫を上げた。
 「しらん」
 冷淡に言い放つあたし。
 こうして、意味のない一日は過ぎてゆく……

 後日・競馬場アリーマが、何者かによって跡形もなく吹っ飛ばされたこと
は言うまでもない。


  (ふん。三人同時竜破斬はストレス解消にちょうどいいわっ!)
                       リナ&ポプリ&ミリス談

                             おしまい!