Medical Tribune (1991年10月17日、p46)

私の不妊診療-------15 

岐阜市。古田産科婦人科病院副院長 古田周行氏に聞く

地道に努力し開業医としてできる限界に兆戦

 古田産科婦人科病院は、外来の90%が不妊症患者。そのうち8割が遠方から来院している。今年改造し、GIFTや外受精の設備を整えた。しかし一足飛びにここまできたのではない。古田氏が京都大学卒業後、医局にいた昭和30年代は超音波断層装置もなくホルモン剤の種類も乏しい時代。昭和40年、父親が開業していた病院で不妊症を受け持つことになって以来、新しい機器や薬剤の知識について勉強を重ね探り入れてきた。「今後も地道に努力を続け、開業医としてできる限界に兆戦したい」と語る。

良い卵、良い精子、良い環境を揃える診療を工夫

 妊娠が成立するためには「良い卵」「良い精子」「良い環境」の3つの条件が揃うことが必要で、そのための工夫をした診療を行っています。

 精子側に原因がある場合が多いです。それも数、運動率、形態が生常なのに妊娠しない例が案外あります。

 その原因の一つとして、精しょう中に免疫性受精阻害因子が存在する可能性が考えられます。もう一つの原因は、運動性が良くても直進運動をする精子が少ないこと。こう考えて、私は swim up 法 で精子を洗浄し、AIH を行う方法を積極的に進めています。精子数が多い場合は、極力精子にダメージを与えないため遠心せずそのままswim up させます。しかも長い距離を泳がせる。こうして阻害因子を洗い流し直進して上がってきた精子は”エリート” というわけです。

 女性で多い不妊のタイプは軽度の排卵障害です。これに対しては、OHSS の危険のない程度に過排卵を起こす治療をします。その際ホルモン検査を十分行い、排卵障害の原因を調べ、プロラクチンの間与が考えられる場合はプロモクリプチンをベースにして、必要に応じクロミフェン、hCGGnRHアゴニストなどを併用します。こうして成熟した良い卵が得られます。

 着床しやすい良い環境をつくるためには、黄体機能が正常であることが必要です。黄体機能を調べるために、基礎体温はもちろんですが、特に重視しているのはプロゲステロン値です。高温相の中間期に測定し、10 ng/ml以下を黄体機能不全としています。基礎体温とプロゲステロン値の測定によって、排卵があるか黄体機能不全か、あるいはLUF(luteinized unruptured follicle)かを区別することもできます。また、黄体機能の検査として子宮内膜の組織診も行っています。

排卵白予測に子宮内膜の厚さを重視

  排卵の時期を予測するため、ホルモン検査と平行して超音波断層検査を1周期に5~6回は行います。超音波断層検査では、卵胞径とともに子宮内膜の厚さを、排卵日予測の重要な手掛かりにしています。子宮内膜が薄ければ、たとえ卵胞径が大きくなっていても卵は未熟なのです。

    また、私は超音波断層検査で撮影した写真を毎回患者さんに渡して、基礎体温表にはってもらうようにしています。その周期で妊娠が成立しなかった場合、次回の治療で排卵時期を患者さんとともに検討する資料にするためです。

 私が初診で、年齢を問わず全部の患者さんに対して必ず行っていることは、お乳をしぼることです。そうすると、お乳が出る人が意外と多いのです。その3割くらいは、実際に検査するとプロラクチン値がやや高いです。

 将来は、GIFTや対外受精法も採り入れたいと考えています。これらの新しい治療法を理解し、不妊症の知識を深めてもらうために、定期日に日を決めて患者さんのための教室を開く予定にしています。(談)

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