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去年の夏だった。
「めぐちゃんを頼むね。僕に何かあったらめぐちゃんを頼むよ。」
こんちゃんからの電話に思わず絶句した。
「だめだよ。こんちゃんが逝ってしまったら、めぐちゃんも死んじゃうよ!」
「怖いし。話さずにはられなくて。頑張るけど、何かあったら、めぐちゃんを頼むね。」
もう、言葉もなく、ただ、頷くしかない自分がいた。
それから、どれほど、願っただろう。どれほど、言葉をかけただろう。自分でもよく憶えていない。
その言葉はどれほどの力を持っただろう。
「もう、僕のことはほっておいてくれ。」
聞こえてくる彼の言葉に途方に暮れる。心からの言葉も、彼の心をすり抜け、通り抜けていく。
あの夏の日、彼の言葉を受け取った日から。その日が来ることを互いに知っていたのかも知れない・・・。
そうして、
平成12年1月3日。こんちゃんは彼岸へ旅立っていった。
結局。何もできなかった。
言葉なんて・・・。・・・・・・無力だ。
願いも、祈りも。良い言葉も!励ます言葉も!!!!
言霊なんて嘘だ!何もできないじゃないか!!
こんちゃんが旅立つ数日前、夢を見た。
「僕、引っ越ししたから、案内するよ。」
そういって、こじんまりとした2階建ての家を教えてくれた。柱廊からはおさびし山と湖が見えた。
一面の銀世界。きれいすぎるこの街は人間の住み処ではなかった。
思ったより安らかできれいな顔をなでながら、
「よく、頑張ったね。お疲れさま。ゆっくり、休んでね。」
と、声をかけた。
めぐちゃんとこんちゃんのお父さんに、夢の話しをした。
「良かった。きれいなところに住めて。」
二人は、意外なことに、笑顔を見せてくれた。
感慨深げなこんちゃんのお父さんを前に私は言葉を尽くした。
夢に見た風景を、見たままに二人に告げた。
きっとこんちゃんは、めぐちゃんやお父さんに直接想いを伝えるよりも、私に伝えることを選んだ。
自分が逝ってしまったあと、私の言葉が二人の心を癒すことを信じて・・・。
・・・・・・。良かった。こんちゃんの行く先を伝えることができて。
言葉は・・・・役に立つのだな・・・・・・。
その時、私が伝えた言葉は、二人にとって抱いていた思いを肯定する役に立ったのだ。
私が、言葉を持たなければ、こんちゃんの想いを伝えることはできなかったのだ。
ならば。肯定しよう。
言葉の持つ力を。
言の葉を奏でよと、さだめられた我が身を。
人の思いを受信せよと、さだめられた我が心を。
自分の欲ではなく、自分の勝手な想いではなく。
すべては溢れ来る想い。すべては湧き出る想い。
良い言葉を、素敵な言葉を、明るい言葉を。力強い言葉を!
厳しい言葉を!!優しい言葉を!!!!命の溢れる言葉を・・・・・・・・!
たとえ、相手の心をすり抜けようと、相手の体を通り抜けようと。
十萬編も、百万編も。
姿を変え、形を変え、見た目を変え。でも、想いはひとつ。
あなたを愛しているよ。
ずっと、ずっと、そう、奏でよう。
あなたを愛していると。 |