子どもと科学よみもの

No.259(1996.3.1)

パンテオンでフーコーの振り子を見てきました   鈴木 将  

 コペルニクスによって地動説が発表され、ガリレオやケプラーが天体観測の結果を元に地動説を唱えたことはよく知られています。

 しかしその当時、誰もが納得のいくような地動説の証拠というのはなかなか見つかりませんでした。

 太陽を中心にして地球がまわりをまわっているという「公転」については、「年周視差」という現象があって、それが見つかれば証明できるとはコペルニクス自身もいっていることでした。しかしその年周視差が発見されたのは、コペルニクスの300年も後、1838年でした。もちろんその前に「光行差」という現象によって、事実上の地球公転の証拠は見つかっていました。1727年の事です。

 一方、地球は公転をしながら「自転」もしています。これについても、夜空の星が北極星を中心にまわっていることから、無数にある星が一斉に動くのと、1個の地球が動くのと、どちらが起こりうるかを考えれば、地球が自転していることもわかることでした。またガリレオは太陽の黒点の観測によって太陽自身が自転していることを示し、コペルニクスの考えを支持したのでした。しかし絶対的な証拠となると何ともいえません。

 そのようなときに、この地球自転の証拠として一般市民の前に明らかにされたのが、フーコーの振り子です。振り子の振動方向が一定不変で、地面の動きに対して無関係であることは、それ以前からもいわれていました。一説によると、ガリレオの弟子のヴィヴィアーニのヒントによるともいわれています。

 ともあれ、実際に振り子を使って実験したのは、フランスのレオン・フーコーです。彼は、1851年1月8日、パリのアサ通りにある自宅の地下室で、長さ2mの振り子で最初の実験を行い、その後2月3日にパリ天文台の子午線ホールで11mの長さの振り子で実験しそれを人々に公開しました。それから3月の末に、ナポレオン3世の要請により、パンテオン寺院の高いドームの下から長さ67mの針金に28kgのおもりをつるして実験したといわれ、これが有名なパンテオンの実験です。また1855年、パリの万国博覧会のときにも同じパンテオンに振り子がつるされ、大勢の人が見学したといわれています。

 わが国では、 1934年に上野の国立科学博物館に、高さ21m余りの振り子がつり下げられました。見学された方も多いことと思います。

  わたしは、このフーコー振り子の本物が高等学校にも欲しいものだとかねてから考えておりました。しかし学校にはそんなに長いものをつるせる場所はなかなかありません。20年ほど前に、新設の高校に転勤することになったとき、真っ先にその場所を探しました。見つけたのです。高さは7mとややもの足りません。でも問題は振り子の周期です。周期が長いほど長時間振れ続けます。長く振れないと地球の自転を証明するのは難しくなるからです。科学博物館の振り子の周期は、約9.2秒です。長さが3分の1になると周期は1.7分の1になりますから約5.4秒です。これなら何とかなるだろうと思いました。そして作りました。都立高校では初めての多分唯一のフーコー振り子です。性能は科学博物館のと大差ありませんでした。ワイヤが短い分、ワイヤに対する空気の抵抗が小さくてすむからだろうと思われました。そのため意外に長時間振れ続けます。といっても完全に止まるまでに24時間ほどです。試しに、直径20cmの球の断面積と、直径1.4mmで長さ21mのワイヤの断面積を比較してみて下さい。

 この振り子でクラブの生徒と24時間連続測定をやったこともあります。ちなみに杉並区立科学教育センターの振り子は、この振り子がモデルです。

 その頃から、ぜひフーコーの実験した振り子そのものを見てみたいものだと思っておりました。

  そのチャンスが訪れたのです。1995年9月から96年3月まで、パリのパンテオンでフーコーの振り子を再現するという新聞記事がありました。

 95年の12月に行って見てきました。ところが残念なことにそばへは近寄れないのです。昔の人たちが、すぐそばで振り子の振動面が回転していくのを感動して眺めたのと同じというわけにはいきませんでした。遠くから眺めるだけです。でもストップウオッチで、周期だけはしっかり測ってきました。その周期は、16.41秒で、そこから振り子の長さを逆算すると67mになり、フーコーが1851年に実験したときの値と一致しました。

 出かける前にも、何とか情報を得たいとインターネットで捜しました。どうしても見つかりませんでした。見てきたことで、振り子をつるしたのは国立科学技術博物館であることがわかりました。それをたよりにやっと見つけました。やはりインターネットに載せてあるのです。写真と断面図と詳しい解説でした。今回は残念ながら行けませんでしたが、国立科学技術博物館にはフーコーのやった色々な実験装置なども展示されてあるそうです。

 機会があったらぜひパンテオンや科学技術博物館に行ってみて下さい。もちろん上野の科学博物館のもぜひ見て下さい。普及部の佐々木さんがとても詳しい方です。 以上

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