日本映画オールタイム・ベスト10

「キネマ旬報」は、3回日本映画史上ベストテンを発表していますが、11位までの作品にほとんど異同がないと思われます。「キネ旬」の伝統の方式でランクしてみました。

キネマ旬報「日本映画オールタイム・ベスト10」
題名'89-01'95-11'99-10備考コメント
七人の侍
 ('54-04・東宝、黒澤明)
121'54キネ旬3位野武士と戦うために侍を雇うエピソードの前半と野武士との戦の後半まで、素晴らしい描写の世界に誇る最高傑作。
東京物語
 ('53-11・松竹、小津安二郎)
213'53キネ旬2位久方ぶりに上京した老夫婦が、息子や娘の家を泊まり歩き、人情の機微と悲哀、家族の普遍性を描く大傑作。原節子が最高に美しい。
浮雲
 ('55-01・東宝、成瀬巳喜男)
432'55キネ旬1位妻のいる男を執拗に追いすがり、ついには病に倒れる女の宿命を描く大傑作。高峰秀子の凄みが表れている。
飢餓海峡
 ('65-01・東映、内田吐夢)
553'64キネ旬5位10年前に殺人を犯した男が、当時に金を恵んだ女に出会い殺してしまう。画面の荒れた粒子を荒らんだ心理として表現している。
幕末太陽伝
 ('57-07・日活、川島雄三)
6105'57キネ旬4位遊郭で無一文になり居残りになったが、要領の良い佐平次が抜け目なく懐を暖め、頃良く逃げ出すという痛快な喜劇。
生きる
 ('52-10・東宝、黒澤明)
3811'52キネ旬1位癌を患い死を自覚した役人が、絶望の後に生きることを決意する。死後、葬式でエピソードを語るシークエンスが素晴らしい。
西鶴一代女
 ('52-04・新東宝、溝口健二)
7511'52キネ旬9位貞淑な娘が男を手玉にとって、ついには堕落していく様を鬼気迫る演出で描いている。田中絹代の演技は、監督と対決し凄まじい。
羅生門
 ('50-08・大映、黒澤明)
(15)75'50キネ旬5位盗賊による強姦と殺人事件をめぐり、それぞれの証言が食い違い、人間の身勝手が描かれる。世界に日本映画を認めさせた作品。
人情紙風船
 ('37-08・PCL・前進座、山中貞夫)
(13)4(18)'37キネ旬7位ろくな人間のいない長屋で、終始暗いストーリーだが、映像が美しい。見終わって寒々とした心に、忘れられない思いが残る。
雨月物語
 ('53-03・大映、溝口健二)
8(12)10'53キネ旬3位物欲や執念に溺れた人間たちの浅ましさ弱さを描く。死霊の場面の揺れるカメラが良く、映像の様式美を完成させた大傑作。
二十四の瞳
 ('54-09・松竹、木下恵介)
10(17)8'54キネ旬1位師弟の愛情をあたたかく感傷的に描いているが、女教師の教育に対する信念が表現されていて素晴らしい。
赤い殺意
 ('64-06・日活、今村昌平)
 (26)7'64キネ旬4位夫の封建制にあえいでいた女が、強盗に犯され、その後に関係を続ける。女は本来強く逞しいことを描いている。
仁義なき戦い
 ('73-01・東映、深作欣二)
11(22)8'73キネ旬2位ヤクザ映画の代表作で、個人的に大嫌いであり、二度と観たくない。この席は「キューポラのある街」が相応しい。
用心棒
 ('61-04・黒澤プロ・東宝、黒澤明)
8(18)(19)'61キネ旬2位二つのやくざが対立している宿場に来た浪人が、喧嘩を仕掛けてお互いに疲れたところを残り全員を殺し、去って行くという痛快な物語。
丹下左膳余話・百万両の壺
 ('35-06・日活、山中貞夫)
 9(55) 「丹下左膳」シリーズのパロディだが、物語の面白さと独特な構図の映像が素晴らしい。天才、山中貞夫の最高傑作。
天国と地獄
 ('63-03・黒澤プロ・東宝、黒澤明)
11(34)(38)'63キネ旬2位子供を誘拐して身代金を要求するという凶悪な犯罪に対して罪が軽い法律に、敢然と触発した。この作品をきっかけに刑法が改正された。
麦秋
 ('51-10・松竹、小津安二郎)
 11(21)'51キネ旬1位「晩春」に続く紀子三部作の第2章で、家族の別れを枯れた演出で描いている。「東京物語」とともに原節子の美しさが映える。
キューポラのある街
 ('62-04・日活、浦山桐郎)
 (58)(31)'62キネ旬2位残念ながらベスト10に入選しなかったが、上記作品にも勝る傑作として末席に置く。吉永小百合の演技力を広く認めさせた作品。
選出された作品は、'50年代と'60年代の作品で占められていることに気が付いただろうか。余りにも偏った評価と思ったのか、'80年代にも優秀な作品があるということで、'90年9月に「'80年代のベストテン」が選出されている。
1位には「ツィゴイネルワイゼン」(鈴木清順)/'80年キネ旬1位 、2位には「泥の河」(小栗康平)/'81年キネ旬1位、3位には「ゆきゆきて、神軍」(原一男)/'87年キネ旬2位、4位には「家族ゲーム」(森田芳光)/'83年キネ旬1位 である。そして、9位には「細雪」(市川崑)/'83年キネ旬2位 が選出されている。鈴木清順監督や市川崑監督のベテランも健在であるが、小栗康平監督、原一男監督、森田芳光監督などの新人が台頭してきているのが特長である。

(c) J. Shinshi

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