マンション・アパティア・11
☆
その翌日、リキはラウールのラボへ向かうクラヴィスを見送った。
「リキくん」
後ろから声がかかる。
帰蝶だった。
「クラヴィスは、もう帰ってこないですよ」
「帰蝶?」
「あの人は、今日例の被験体になるのですよ」
「例の?例のってなんだ」
いやな予感にリキの表情が蒼くこわばる。
「あんたの帝王様がやってるコールドスリープの被験体」
「!!」
「あれはもう完成していて、あとは人体実験だけ。
クラヴィスは望んで申し出たとか」
リキはそのまま、最後まで聴かず自分のバイクを置いてある場所へ駆け出した。
ラウールのラボへ向かうために。
☆
リキはクラヴィスよりも先にラボへ到着した。
後から着いたクラヴィスに待ちかまえたように駆け寄る。
「あんた、実験体になるってホントか?」
興奮で声がうわずっている。
「リキ・・・」
ラボの入り口に怒ったような表情で立つリキにクラヴィスも戸惑った。
「な、なんで・・・。昨日何も言わなかったじゃねぇか」
「リキ」
クラヴィスは少し微笑んだ。
「別れるのがつらいからだ」
「じゃ、じゃ本当に」
「ああ、そうだ」
クラヴィスはゆっくりとラボの廊下を歩き始めた。
リキがその後を追う。
「なんでなんだ。なんでこんな馬鹿げた実験に」
「私は自ら望んでそうするのだ」
「ンな、ワケがわかんねえよ」
リキは思わず泣き声になった。
エレベーター前でクラヴィスは立ち止まり、リキを見つめた。
「リキ、それほど心配してくれるのか」
クラヴィスはリキを穏やかな瞳で見つめた。
「私には、どうしても未来で会わねばならぬ人がいるのだ」
☆
そうするうちにエレベーターが到着し、クラヴィスが乗り込む。
リキも後を追う。
「未来っていつ。いつ、いつその人と逢えるってんだ?」
「いつ?分からぬな」
「分からないぃ?10年先か100年先かも分からないってのか?」
リキはオーバーに言ってみせたつもりだった。
「100年・・。もっと先かもしれん」
クラヴィスが言う。
「絶対にそいつがあんたを捜してくれるのか?ここへ来るってのか?」
エレベーターのドアが開く。
ここは関係者外立入禁止の区域に繋がっているフロアだ。
「クラヴィス!」
クラヴィスはそのまま、前へ進もうとした。
リキはクラヴィスの腕をかろうじて掴んだ。
クラヴィスが振り返る。
「リキ・・・、お前に会えていろいろと楽しかった」
クラヴィスは小柄なリキの身体を片腕で抱いた。
☆