マンション・アパティア・3

「やめてくれ」
リキは精一杯の抵抗をする。
惑星行きから帰り、久々にアパティアを訪れたイアソンは、服を脱ぐのももどかしく
リキを押し倒しにかかっていた。
「何をそう嫌がる。まあ、それはそれで面白いがな」
イアソンはリキの拒絶などお構いなしだ。
「あ・・・」
「リキ、そうだ。もっと素直になれ」
だが、リキは気が気でなかった。
(あの水晶球。)

結局のところ、リキは
いなかった日の分までイアソンのいいようにされて
くたくたになり、泥のように眠り込むこととなった。

こうして翌朝、
リキはイアソンより少し遅れて仕事に向かうはめになった。
飛び出すように向かった最上階フロアのエレベーター前で、
クラヴィスとばったり鉢合わせる。
「・・・」
「・・・」
エレベーターが来て二人が乗る。
「・・リキ」
「・・・」
「・・・リキ?」
「なんだよ」
「どうした、機嫌が悪いのか」
「別に」
「そうか」
「今日は仕事なのか?」
「ああ」
「今日、初めて?」
「・・・ああ、そうだ」
「緊張するこたないって」
「・・・」
高速エレベーターは地上に到着していた。

結局、リキは少し遠回りしてクラヴィスの乗るエア・ライナーのところまで送った。
「金に不自由していないのに、公共交通機関で通勤か・・・変わったヤツ」
クルリと方向を変えると自分のバイクの元へ走る。
「くそ、遅刻だぜ」リキは舌打ちをした。

夕刻。
そそくさと仕事から退散しようとしたリキをカッツェが呼び止めた。
「よお、リキ。今朝はごゆっくりだったようだな」
「カッツェ」
「そう、あせって帰らんでもいいだろう。もう一仕事して行ったらどうだ」
「く」
「この薬品をあのラボに運ぶだけだ。簡単な仕事だろう」
「ラボ・・・って。あのラウールの」
「その通り」
「・・・カッツェ、てめえ」
「怒るな。どうせ帰り道だろうが。たまには御大にご機嫌伺いしておけ」

「ほお、これは珍しい。お前、まだこの街にいたのか」
ラウール・アムは白衣を着てリキを出迎えた。
「最近。この薬品がやたら必要なんだな」
「ふ。お前、ぼんやり仕事をしているわけではなさそうだな」
「これでも、商品管理の一部は任されてるからな」
「スラムの雑種ごときが、たいした出世だ」
「あんたも、面と向かってよく言うな」
「お褒めに与ってうれしい・・・と言えばいいか?」
「・・・。今、ここで何か新しいことでもやってんのか」
「新しいこと?それは答えられんな。知りたければイアソンに聞いてみるがいい」
「イアソンは最近、一段と忙しくしているみたいだから」
「・・・」

「リキ・・・」
「イアソン。今日はやめてくれ、頼むよ」
「リキ、残念ながらお前には選択権はない・・・」
毎日、ご苦労なことにイアソンはリキを押し倒し、アパティアの夜は更けるのであった。

「最近、何か新しいこと、やってんのか」
ひとしきりコトが済んだあと、リキは切り出した。
「ほお、関心があるのか?」
「あんた、自ら辺鄙な惑星へ出かけたり、ラウールのラボでは妙ちきりんな薬品をがんがんに消費している」
「そうか」
「これ以上、手を広げなくてもブラックマーケットは安泰だろう」
「それは、私のことを心配してくれているのか」
「何言ってんだ!ンなワケねぇだろう」
「じゃあ、何だと言うんだ」
「今のままでも十分じゃないのかって・・・それだけだよ」
「心配だから、危険な新しいプランには手を出すな・・・そう言いたい?違うのか」
「もう、いい!聞いたオレが悪かったよッ」
「すねるな。でないと、今夜は寝られんぞ、リキ」
縮みあがるリキ。
「ふ。先だっての惑星行きは新たな大陸の購入だ」
「大陸の購入だって?」
「ああ、人にあまり荒らされていない土地が必要なのでな」
「何のために」
「新しい大がかりな施設を作る」
「何の」
「・・・・」
「イアソン」
「冷たいベッドルームが並んだ・・・ちょっとした高級ホテルだ」

つづく