大好き!クラヴィスさま<妄想編・3>
〜闇の執務室〜(全3章)
コツコツ。
執務室のドアをたたく。
部屋の中からは何の応答もない。
ドアノブを回してみるが明らかに鍵がかかっていて、この部屋の主(あるじ)は不在のようだ。
「アンジェリークではありませんか」
廊下をやってきたのはリュミエールだった。
「クラヴィスさまはご不在ですか」
「それはお珍しい。あの方が外出なさるとは」
闇の守護聖は昨日も不在だった。
アンジェリークはいったい何度、このドアをノックしただろう。
そして、今日も。
☆
先ほど、一つ隣のジュリアスの部屋に行って育成を依頼したアンジェリーク。
何気ない風を装って、クラヴィスの所在について尋ねた。
「あの者がどうしたというのだ。そのようなことは気にせず育成に励むのだ。大体、そなたはここへ来るのは何日ぶりだと思っているのだ。光の必要性を理解せぬ愚かな女王候補とは思いたくはないが・・・」
ひとしきり生真面目な忠告が続いた後
「まあ、良い。とは言え大陸の発展は順調と言えるからな」
ジュリアスがそう言葉を結んだのを幸いにアンジェリークは光の執務室を飛び出した。
どうやらジュリアスは、クラヴィスの話になると条件反射のように機嫌が悪くなるようだ。
☆
リュミエールも特に何も知っている風ではない。
特別な任務で出かけている…とか病気で倒れている…というわけでもないらしい。
☆
アンジェリークは三日前の日の曜日を想い描いた。
あの見晴らしの木の上で、これまでにないほど近くに闇の守護聖の姿があった。
だが、木登りをするなんて、子供だと思われたに違いない。
闇の守護聖の瞳があきれたように見開かれたのをアンジェリークは見逃さなかった。
あれは自分が聞き分けのない子供を見つめる時と同じだ。
☆
「女王候補であることをもっと自覚しなさい」
ロザリアの言葉がよみがえる。
このまま育成が順調に進めば遠からずエリューシオンの発展は中央の島に至る。
ロザリアのフェリシアより早く。
もし、そうなったら。
☆
そして、アンジェリークはここまでやって来た。
しんと静まり返る林の奥深く。
ひっそりとたたずむクラヴィスの館だ。