いにしえの旋律 〜聖夜に捧ぐ〜


遥か昔。
女王の統べる宇宙の片隅に、聖なる夜を祝う街があった。
人々は教会に集い、歌い、祈っていた。
貧しき者も豊かな者も、皆が一緒に肩を並べ
互いの幸せを祝っていた。

ところが、数十年が経過した後、
その街に争いが起こり、多くの命が奪われてしまった。
力を得た一握りのものだけが繁栄を見せ、
いつしか民の心は荒んだものになっていた…。
互いに憎しみあい、互いに排他しあう街へと変貌し、
よき風習であった「祈り」もすでに過去のこととなった。

あと数日で新年を迎えるという或る日。
女王陛下の勅命を受けた闇の守護聖は、その地に降りた。
殺伐とした雰囲気が漂うその街に、クラヴィスは心を…痛めた。
この辺境の地こそ、
守護聖の任につく前に訪れた場所。
僅かに残るあたたかな想い出が在る処だった。
しかし、
そのことを知る者のはクラヴィスただ一人だけであった。
「もう、ここには残っていない…」
クラヴィスはそっと呟いた。

街の外れの瓦礫の中で、
クラヴィスは歩みを止めた。
優しい旋律が、どこからか聞こえてきたのである。
「これは…あの時の…」
破壊された教会から流れるその旋律は、
はるか昔の記憶にあるそれと同じであった。
ゆっくりと近づくと、そこには
まばらな人影が月明かりに照らされ、
「祈り」の歌を捧げていた…。
彼らは互いに歌い、笑い、平和を「祈って」いた。
その祈りは、
東の空が明るみはじめるまで続けられた。

翌日、聖地に戻る朝。
クラヴィスはその地に安らぎのサクリアを与えた。
彼らが聖なる夜を穏やかに過ごせるように…
いつまでも「祈り」が続けられるように…
ささやかな願いをこめて・・・。

end

XmasMENU