夢と現と翁草
クラヴィスは、夢を見た。 金の髪の女王候補と共に歩く夢を。 ひときわ暖かな光に照らされながら、 ただひたすら、前へと歩む。 闇に閉ざされていたはずの道は、 彼らが進むたびに春を迎える... ☆ しばらくすると、 目の前に分岐があった。 左右に分かれたその道端の、 右には紫色の翁草、左には青色の夜香蘭が、 やさしい風に撫でられている。 その景色をクラヴィスが静かに眺めていると、 傍らにいた彼女は分岐へと歩み寄っていった。 小走りに戻ると、 彼女はにこやかに言った。 「これ、クラヴィスさまに差し上げます」と。 差し出されたのは、道端に咲いていた『花』 クラヴィスはそっと手に取った。 − 夢はそこで終わった− しかし・・・ それがどちらの花だったのか、 覚えていなかった。 ☆ あくる日の晩。 特別寮を訪ねたクラヴィスは、 「眠れない」と言う彼女を連れて 夜の公園へ向かった。 噴水の前で、 クラヴィスは、静かに彼女に尋ねた。 「紫色の翁草と青い夜香蘭、 おまえはどちらを好むのか・・・」と。 突然の問いに戸惑いながらも、彼女は答えた。 「翁草・・・です」 その時、 ほんの僅かにクラヴィスは笑った。 微笑をたたえたまま、彼女に背を向けた。 ☆ 彼女を部屋へと送り届けたクラヴィスは、 闇のサクリアで一夜の安らぎを与えた。 小さな寝息が聞こえるのを確かめると、 そっと、その場を後にした。 ☆ 彼女が目を覚ました朝。 大陸の中央の島には、 彼女の導く民たちが新しい生活を始めようとしていた。 −女王試験が終わったのである− 金の髪の女王候補が『女王』となった日・・・。 最後に与えられたサクリアこそ、 闇の守護聖によるものであったことなど、 式の準備に追われる彼女が知る由もなかった。 ☆ 夢の中でも現でも、 彼女の選んだ花こそ、彼女が選んだ『道』だった。 紫の翁草は告げていた−「あなたを信じて従います」と。 女王即位式で... クラヴィスは新女王への忠誠を誓った。 かつて見た彼女の笑顔を 心の奥に収めたまま・・・ 〜 花言葉 〜 『紫の翁草(アネモネ)』:あなたを信じて従います。 『青色の夜香蘭(ヒヤシンス)』:あなたとならば幸福になれる。 |
たくみともみさま作
30000ヒットのお祝いにいただきました。たいへん美しい物語をありがとうございます。