夢と現と翁草



クラヴィスは、夢を見た。

金の髪の女王候補と共に歩く夢を。

ひときわ暖かな光に照らされながら、

ただひたすら、前へと歩む。

闇に閉ざされていたはずの道は、

彼らが進むたびに春を迎える...



しばらくすると、

目の前に分岐があった。

左右に分かれたその道端の、

右には紫色の翁草、左には青色の夜香蘭が、

やさしい風に撫でられている。

その景色をクラヴィスが静かに眺めていると、

傍らにいた彼女は分岐へと歩み寄っていった。

小走りに戻ると、

彼女はにこやかに言った。

「これ、クラヴィスさまに差し上げます」と。

差し出されたのは、道端に咲いていた『花』

クラヴィスはそっと手に取った。

− 夢はそこで終わった−

しかし・・・

それがどちらの花だったのか、

覚えていなかった。







あくる日の晩。

特別寮を訪ねたクラヴィスは、

「眠れない」と言う彼女を連れて

夜の公園へ向かった。

噴水の前で、

クラヴィスは、静かに彼女に尋ねた。

「紫色の翁草と青い夜香蘭、
  
おまえはどちらを好むのか・・・」と。

突然の問いに戸惑いながらも、彼女は答えた。

「翁草・・・です」

その時、

ほんの僅かにクラヴィスは笑った。

微笑をたたえたまま、彼女に背を向けた。




彼女を部屋へと送り届けたクラヴィスは、

闇のサクリアで一夜の安らぎを与えた。

小さな寝息が聞こえるのを確かめると、

そっと、その場を後にした。








彼女が目を覚ました朝。

大陸の中央の島には、

彼女の導く民たちが新しい生活を始めようとしていた。

−女王試験が終わったのである−

金の髪の女王候補が『女王』となった日・・・。

最後に与えられたサクリアこそ、

闇の守護聖によるものであったことなど、

式の準備に追われる彼女が知る由もなかった。



夢の中でも現でも、

彼女の選んだ花こそ、彼女が選んだ『道』だった。

紫の翁草は告げていた−「あなたを信じて従います」と。

女王即位式で...

クラヴィスは新女王への忠誠を誓った。

かつて見た彼女の笑顔を

心の奥に収めたまま・・・








〜 花言葉 〜
『紫の翁草(アネモネ)』:あなたを信じて従います。
『青色の夜香蘭(ヒヤシンス)』:あなたとならば幸福になれる。



たくみともみさま作 
 30000ヒットのお祝いにいただきました。たいへん美しい物語をありがとうございます。

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