日産キューブの最近のテレビ・コマーシャルで、
アメリカを旅行中と思われる若い男がヒッチハイクをして、
カップルが乗っているキューブに乗り込む、という設定のものがあります。
私はあれを最初に見た時に、「あーあ、またやっちまった」と思ってしまいました。
以前から何回か書いているように、
自動車メーカーの CM における見識はあきれるほどに低いものでして、
ちょっと前までは後席でシートベルトをしていない乗員を平気で登場させてました。
さて、前述のキューブの CM のどこがいけないのでしょうか?
ヒッチハイクした若い男はキューブの後席に乗り込んで、きちんとシートベルトをしています。
その点では OK なのですが、次の瞬間に全てを台無しにしてしまう行動をとるのです。
おそらくキューブのセールスポイントのひとつなんでしょうが、
後席シートの背もたれがリクライニング可能なんですね。
で、後席の若い男はゆっくりとくつろぎたいのか、これから走り出そうという時に、
背もたれをリクライニングさせてしまうのです。
これで、全てが台無しです。このシーンだけで、私は日産というメーカーが信用出来なくなります。
リクライニングさせた状態では、腰から肩にかけて、
体に密着していなければならないシートベルトが完全に浮いてしまっています。
その状態のままで事故があった場合、シードベルトは本来の働きが出来ません。
シートベルトの下をくぐるようにして前に飛び出してしまう、
いわゆるサブマリン現象が起こることも考えられますし、
衝突の衝撃で上体が前方に投げ出されるようになり、
浮いているシートベルトで首を切ってしまうことも考えられます。
後席であれ前席であれ、走行中のリクライニングは基本的にはタブーです。
シートベルトの意味がなくなりますから。
シートベルトの引出し口を背もたれの肩の部分にするなどして、
リクライニング時でもシートベルトが正しく装着されるような工夫があり、
なおかつリクライニングの角度を制限し、
シートの座面がアンチ・サブマリン仕様になっていればよいのですが、
そうでなければリクライニングはシートベルトの機能を殺してしまうのです。
キューブの後席シートがアンチ・サブマリンかどうかはわかりませんが、
シートベルトの引出し口は車体側にあり、リクライニングをするとベルトが浮いてしまいます。
つまり、危険なクルマです。百歩譲って、停車中の休憩のためにリクライニング機構があるとしても、
CM では走行を前提としてリクライニングさせていて、
浮いているシートベルトがはっきりと確認できますから、
この CM はまったくもってとんでもない CM なのです。
悪いお手本をセールスポイントであるかのように CM に使ってしまうのですから、
空いた口が塞がりません。
日産の見識の低さにはあきれるばかり。まあ、自動車メーカーがこれだけ見識が低ければ、
平均的な国民の見識だって高くなりようがないでしょうね。まあ、
話は日産に限ったことじゃないのでしょうが。
私はカルロス・ゴーンさんが社長になってから以降の最近の日産を、
比較的高く評価していたのですが、あの CM でかなり印象を悪くしてしまいましたよ。
日産の中の真面目なエンジニア氏は、「キューブの後席にリクライニング機構をつけるなら、
シートベルトの取り出し位置を変えないと危険だ」という意見を持っていたと想像します。
おそらく、コストやら何やらの理由で、シートベルトにお金をかけることは却下されたんでしょう。
でも、リクライニング機構だけは生き残り、あまつさえ、
CM で危険な使用法をアピールしてしまって、真面目なエンジニア氏は泣いていることでしょう。
私の個人的な想像ですが、ドイツや北欧であの CM を流したら、
消費者から袋叩きにあうんじゃないかと思います。それくらいとんでもない CM です。
日本のユーザは舐められてるのかもしれませんよ。「後席リクライニングは便利だ、
とは思ってくれても、シートベルトが浮いて危険だ、なんて思うのは一部の評論家とクルマ好きだけ」
なんて思われているのかも。