2003年1月28日


スキップ


先日の帰宅途中のことです。最寄駅で降りた私は家に向かって歩いていました。 時間は夜の 10 時位です。

私の 10m 程前をコートを来たおじさんが歩いていました。サラリーマン風の服装です。 歳は 60 前後でしょうか。髪はかなり薄くなっていて、 おじいさんと言っても良いような歳だと思われます。彼は左手に黒い皮のブリーフケースを持ち、 右手にはビニール製の大きな袋を持っていました。百貨店などで商品を入れるのに使うような、 手提げ型の袋です。その中にはカサのある何かが入っているのですが、 それが何なのかはわかりません。

彼は時々手提げ袋を気にしています。中の物が落ちないかどうか気にしているわけでもなさそうです。 単に袋の中を覗いているだけに見えました。おそらく、かなり嬉しい買い物だったのでしょう。 袋を中のソレを見てはニヤニヤしているといった、そういう印象でした。

「そういう印象でした」と書きましたが、実際にその時にそう感じたのかというと、 ちょっと自信がありません。もしかしたら、彼のその後の行動によって、 過去に遡ってその印象が形成されてしまったのかもしれません。

「その後の行動」というのは何かというと、 歩きながら時々手提げ袋の中を確認していたおじいちゃんですが、何を思ったのか、 いきなりスキップをしたのです。

見間違いではありません。確かに彼は私の目の前でスキップをしたのです。 ほんの 2 - 3 ステップしかしていないのですが、間違いなく我々がスキップと呼ぶ足運びです。 あまりの嬉しさに無意識のうちにスキップしてしまい、それに気づいて「いかん、いかん」 と思い、ほんの 2 - 3 ステップでやめたように見受けられました。

60 歳位のサラリーマン風の男が、夜道でひとりスキップする光景と言うのは、 かなりシュールでございます。せせこましくて紛らわしい足運びではなく、 膝が高く上がっていて、正しいスキップなのです。両手が塞がってますから、 腕の振りはありませんでしたが、下半身の動きだけを見れば、おもいきりスキップしていました。 正しくは両手ぶらりスキップということになります。

私はあっけにとられつつも、「これはネタに使える」と思い、 この出来事を自分にメールするために携帯電話を取り出しました。 すると、またしても彼はスキップをしたのです。

今度は先ほどよりもちょっと長めで、4 - 5 ステップくらいです。 やはり膝がきちんと上がっている両手ぶらりスキップです。

何が彼をスキップに駆り立てたのかは不明です。二回もスキップしてしまうのですから、 手提げ袋の中味は、本当に嬉しい嬉しい買い物だったのでしょう。

二回目のスキップが終わったあとすぐに、彼は後ろを歩いている私の気配に気付いたようです。 つまり、彼としては私にスキップを目撃されたことも分かったわけです。

すると彼は急に早足になって、逃げるようにして先の小路を曲がっていきました。

まあ、恥ずかしいことでしょうね。逃げ出したくなる気持ちもわかります。 それにしても、不可思議な光景でした。




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