「まじめ まじめ まじめ コルト」という、
真面目なんだか不真面目なんだかわからないキャッチで売り出している三菱自動車のコルトですが、
例のリコール隠し事件以来散々だった三菱自動車にとっては久々のヒットとなったようで、
まずはめでたいことであります。
私はコルトに試乗したわけでも、ディーラーで実物を見たわけでもありませんが、
私が読んだ範囲での雑誌などの評価を総合すると、「確かに真面目な作りで良いクルマである。
ただし個性には欠ける」ということになります。
メルセデスの A クラスに似せた(似てしまった、ではないはず)デザインは、
ダイムラーに媚を売っているのか、それともダイムラーの要請なのか分かりませんが、
あれはとても真面目とは思えませんね。「プアマンズ A クラス」的に感じてしまうのは、
私だけではないでしょう。
それはさておき、実物を見てもいないし、乗ってもいない私にもはっきりわかる真面目な点が、
コルトにはあるのです。
それは GDI エンジンを搭載しなかったことです。いやあ、まじめまじめまじめです。パチパチパチ。
皮肉でも何でもありませんよ。私は本心から拍手しているのです。
GDI エンジンは「世界初」のガソリン直噴エンジンとしてデビューしました。
実際はメルセデス(ダイムラー)が随分前にやっているので、「世界初」は嘘でして、
三菱はこのコピーのせいで世界に恥をさらしてしまったのですが、
いまやダイムラーの傘下という皮肉な状態です。ルノーのセニックの真似をして、
ティーノを作った日産がいまやルノーの傘下にあるのと似ていますね。
まあ、それはさでおき GDI です。直噴というのはシリンダー内にガソリンを直接噴射する技術で、
それ単体として見れば、とても優れた技術だと思うのです。でも、三菱の間違いは、
直噴によって希薄燃焼(少量のガソリンを燃やすことで、ガソリンの濃度が希薄なのです)
を実現し、それで「低燃費と低公害を実現できます!」とうたってしまったことです。
GDI エンジンのデビュー当時、新聞の全面広告でそんなことを言っていたのを見て、
「おいおい、大丈夫なのか?」と心配した覚えがあります。
DGI エンジンは 10・15 モードのような特殊な条件では、確かに低燃費で低公害でした。
でも、実用上は全然ダメ。カタログを飾る数値は立派でも、
実際に使ってみたら良くて普通のエンジンと同じ程度だそうです。
某雑誌社がそういうことを指摘して、三菱とトラブルになったこともあったと記憶しています。
三菱がパジェロに GDI エンジンを載せた時には、「マジですかぁ?」と思ったものです。
素の技術では素晴らしいのに、使い方を誤り希薄燃焼のワナに落ちてしまい、
さらに恥の上塗りでパジェロのようなクルマにまで GDI を載せてしまうのです。
さらにさらに恥ずかしいことには、トヨタや日産なども三菱のやりかたに右へならえしてしまい、
それぞれの直噴エンジンを開発して、GDI と同じワナに落ちていったのでした。
エンジニアリング主導ではなくマーケティング主導(それも本来のマーケティングではなく、
極めて浅薄な市場性考察)でモノ作りをしているからなんでしょうね、きっと。
GDI 開発に携わったエンジニアの本音を聞いてみたいものです。
で、真面目なコルトは GDI を採用しませんでした。比較的希薄燃焼の効果が得やすいと思われる、
小型車のコルトにも GDI を載せなかったのですから、おそらく、
今後の三菱は急速に GDI 離れを起こしていくことでしょう。真面目なのは良いことです。
でも、「GDI では過大広告してしまいました」とは言わないでしょうね。まあ、
これは過大広告だけの問題ではなく、技術の使い方の問題もありますしね。
自動車業界にもし「Technology of the Year」なんていう賞があったら、
個人的には昨年の「Technology of the Year」は BMW の「バルブトロニック・エンジン」
に決まりです。最初に「バルブトロニック・エンジン」という名称を聞いた時は、
「ダサイ名前だなぁ」と思ってしまったのですが、中味を聞いてびっくり。
まさにコロンブスの卵。世界中のエンジン開発に携わる技術者達は、「してやられた」
と悔しがったに違いありません。全然関係のない私ですら、拍手しながらも、
そういう発想がなかった自分が妙に悔しかったですからね。「バルブトロニック・エンジン」
の詳細を知りたい人は、テキトーに検索してみてください。色々出てくると思いますよ。
もしそこで、「ミラーサイクル」のことにまで触れていたら、
その解説はかなりいいポイントを突いていると思います。
で、「バルブトロニック・エンジン」を開発した BMW が、
いよいよガソリンエンジンの直噴化に乗り出します。
BMW というメーカーはこけおどしの技術でカタログを飾ることはしないと思ってます。
ですから、BMW の直噴は GDI のような希薄燃焼型ではないと思われます。
GDI などとは全く異なる手法で、それも論理的に充分な説得力を持つ手法で、
低燃費と低公害を目指している BMW のエンジンの行方に注目しているのです。