カタカナの「シ」と「ツ」は手書きの文字だと紛らわしいことがしばしばあります。
「ン」と「ソ」も紛らわしいです。
子どもの頃、「『シ』の最後は下から上にはねるようにして書く」、
「『ツ』の最後は上から下におろすように書く」と習った記憶があります。
「ン」と「ソ」も同様です。それはそれで間違いではないのでしょうが、
二つの文字を混同しない書き方としては、「『シ』は左を揃える」、「『ツ』は上を揃える」
の方が良いと思います。もちろん、「ン」と「ソ」も同様です。
でも、この「左を揃える」「上を揃える」ということは、
もしかしたらあまり広く知られてはいないのかもしれません。私がそう言ったら、
目からウロコ状態になった人を何人か知っていますし、実際、私がそれを知ったのも、
成人する頃だったかもしれません。
実は「シ」と「ツ」の紛らわしさに関連して、私には忌まわしい思い出があるのです。
中学生の頃のことです。中間試験か期末試験かは忘れましたが、国語の試験の時です。
配られたテスト用紙に一問だけ抜けがあったらしく、
試験監督の先生が黒板に手書きで問題を書いたのです。
漢字の読みを三つの選択肢から選ぶ問題でした。
その時の試験監督の先生は社会科の先生で、悪筆で有名でした。
そのS先生は黒板に次のように書いたのです。
諮問
1. ツモン
2. キツモン
3. サモン
もちろん正解は「シモン」です。しかしながら、S先生の手書き文字では、1. は「ツモン」
にしか見えないのです。最後の画は下から上に書いたのかもしれませんが、
そんなのはいちいち見てません。そして、上がきっちりと揃ってしまっています。
「キツモン」の「ツ」の字と 1. の最初の字は同じに見えます。本人は、「シモン」
と書いたつもりなのでしょうが、どう見ても「ツモン」です。
彼の書く「シ」と「ツ」には、本人にしか分からない微妙な違いがあるのかもしれませんが、
私にはそんなものは分かりません。文脈から想像することだってできません。
私に「諮問=シモン」という確固たる信念があれば、「ああ、1. は「ツ」に見えるけど、
本当は『シ』なんだな」と思えたのかもしれません。でも、
その時の私は三つの選択肢を前に悩んでしまったのです。「『ツモン』ってのは聞いたことないなあ。
でも、『キツモン』も『サモン』もこんな字じゃなかったはずだし、うーーーーん」
結局、私が選んだのは 2. の「キツモン」でした。
もちろん不正解です。
S先生が書いたのは「ツモン」ではなく「シモン」だったんだ、
と気付いたのは採点された答案が返された時でした。既にアフターカーニバル。
S先生に文句を言ったところ、「そんなに紛らわしいかぁ。悪かったな」とは言ったものの、
それでテストの点が上がるわけでもありません。
テスト用紙に印刷ミスがなければ、あるいはミスがあっても、
その時間の試験監督が別の先生だったら、あるいは選択肢が平仮名で書いてあったら、
私の国語の成績はもう少しだけ良くなっていたはずなのです。
ということで、私は「シ」と「ツ」に関してはうるさいのです。
小学校では「左を揃える」「上を揃える」ということをしっかりと教えて頂いて、
私のような不幸な生徒が二度とでないように、
国語教育関係各位の一層の奮起を期待するものであります。