2003年2月27日


「シ」と「ツ」の悲劇


カタカナの「シ」と「ツ」は手書きの文字だと紛らわしいことがしばしばあります。 「ン」と「ソ」も紛らわしいです。

子どもの頃、「『シ』の最後は下から上にはねるようにして書く」、 「『ツ』の最後は上から下におろすように書く」と習った記憶があります。 「ン」と「ソ」も同様です。それはそれで間違いではないのでしょうが、 二つの文字を混同しない書き方としては、「『シ』は左を揃える」、「『ツ』は上を揃える」 の方が良いと思います。もちろん、「ン」と「ソ」も同様です。

でも、この「左を揃える」「上を揃える」ということは、 もしかしたらあまり広く知られてはいないのかもしれません。私がそう言ったら、 目からウロコ状態になった人を何人か知っていますし、実際、私がそれを知ったのも、 成人する頃だったかもしれません。

実は「シ」と「ツ」の紛らわしさに関連して、私には忌まわしい思い出があるのです。

中学生の頃のことです。中間試験か期末試験かは忘れましたが、国語の試験の時です。 配られたテスト用紙に一問だけ抜けがあったらしく、 試験監督の先生が黒板に手書きで問題を書いたのです。 漢字の読みを三つの選択肢から選ぶ問題でした。

その時の試験監督の先生は社会科の先生で、悪筆で有名でした。 そのS先生は黒板に次のように書いたのです。

諮問
 1. ツモン
 2. キツモン
 3. サモン

もちろん正解は「シモン」です。しかしながら、S先生の手書き文字では、1. は「ツモン」 にしか見えないのです。最後の画は下から上に書いたのかもしれませんが、 そんなのはいちいち見てません。そして、上がきっちりと揃ってしまっています。 「キツモン」の「ツ」の字と 1. の最初の字は同じに見えます。本人は、「シモン」 と書いたつもりなのでしょうが、どう見ても「ツモン」です。

彼の書く「シ」と「ツ」には、本人にしか分からない微妙な違いがあるのかもしれませんが、 私にはそんなものは分かりません。文脈から想像することだってできません。

私に「諮問=シモン」という確固たる信念があれば、「ああ、1. は「ツ」に見えるけど、 本当は『シ』なんだな」と思えたのかもしれません。でも、 その時の私は三つの選択肢を前に悩んでしまったのです。「『ツモン』ってのは聞いたことないなあ。 でも、『キツモン』も『サモン』もこんな字じゃなかったはずだし、うーーーーん」

結局、私が選んだのは 2. の「キツモン」でした。 もちろん不正解です。

S先生が書いたのは「ツモン」ではなく「シモン」だったんだ、 と気付いたのは採点された答案が返された時でした。既にアフターカーニバル。

S先生に文句を言ったところ、「そんなに紛らわしいかぁ。悪かったな」とは言ったものの、 それでテストの点が上がるわけでもありません。

テスト用紙に印刷ミスがなければ、あるいはミスがあっても、 その時間の試験監督が別の先生だったら、あるいは選択肢が平仮名で書いてあったら、 私の国語の成績はもう少しだけ良くなっていたはずなのです。

ということで、私は「シ」と「ツ」に関してはうるさいのです。 小学校では「左を揃える」「上を揃える」ということをしっかりと教えて頂いて、 私のような不幸な生徒が二度とでないように、 国語教育関係各位の一層の奮起を期待するものであります。




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