2004年3月29日


六本木ヒルズ回転ドア事故の隠れた責任者 


六本木ヒルズの回転ドアの事故。

あの回転ドアは何回か通ったことがあります。ある時は、修学旅行と思われる中学生が、 扉を押すようにしてしまい、非常停止装置を働かせて何回も止めてました。「ボケッ!」 と思ったのは言うまでもありませんが、別のことも考えました。

あの事故の責任について、管理者の森ビルとメーカーの三和シャッターが矢面に立たされています。 まあ、尤もなことではあります。また、一緒にいた大人の責任を云々する意見もあるように思います。 私には詳細な状況がわからないので、尤もなことかどうかは何とも言えません。

私個人としては、もう一人、はっきりと責任のある人がいると思うのですが、私の見聞きした範囲では、 そういう見解を述べている人やメディアはありませんでした。

私が思うもう一人の責任者とは、あのビル、ヒルズ・タワーをデザインした人(あるいは人々)です。

ヒルズ・タワーに行ったことがある方はお分かりでしょうが、あれは典型的なかっこつけビルです。 利用者の利便性とか、火事などの時の避難のしやすさなんかは、ほとんど無視されていて、 ちょいとかっこの良いことだけを詰め込んだような印象です。

エレベータが二階建てになってます。ですから、行き先が遇数階か奇数階かで、 エレベータに乗る階も違ってきます。セキュリティにはうるさいビルなのですが、 設計時には「二階建てエレベータを採用すること」が優先されたのでしょうね。 アホらしいかぎりです。

最初にヒルズ・タワーに入ったのは去年のことですが、「あーあ、またかっこつけビルだよ」 「二階建てエレベータもヘンだし、その制御プログラムもさいてー」 と同行者にブチブチ言ってたのを思い出します。利用者にストレスを与えてどうするんでしょうね。

回転ドアにしたって、あれはかっこつけ以外の何物でもありません。ビル内の空調という意味では、 回転ドアの意味はなくはないでしょうが、ビルへの出入りのしやすさ、その効率、 安全性などにおいて、回転ドアが優れているとはとても思えません。最初に書いた 「別のこと」とは、こういうことです。

あの種の回転ドアですが、私であっても入る時になにがしかのプレッシャーを感じます。 自分の進む方向やその速さに対する自由度が極端に低くなることのプレッシャーです。 私でもプレッシャーなのですから、子供や老人でしたらなおさらでしょう。 あれはビルに出入りする人のことなど、何も考えていないと言っても過言ではありません。 あの回転ドアが使いやすいと思っている人など、ほとんど皆無だと思います。 みなさんはどうでしょう、使いやすいと思います?

デザインに係わる人たちの多くは、実用性というものを重視しているとは思うのです。 実用性を充分に満たした上で、美しさやかっこよさを追求するのがプロのデザインでしょう。 かっこよさだけの追求なら、素人でも出来ますから。

ただ、実用性を犠牲にしたデザインが決して少なくないのもまた事実です。特に日本においては。 自動車、建築物、家具、広告、Web には、特に実用性を無視したかっこつけが多いような印象があります。 自動車に関しては言うに及ばず、ビフォーアフターとかいうリフォーム番組を見ていても、 「けっ!」と思うことが少なくないですね。

巨大なオフィスビルの出入り口に求められる実用性というのはどういうもので、 実用性と相反する要素にはどのようなものがあって、それらをバランスよく満たすためには、 どのようなデザインをすべきか、なんてことは、ちっとも考えられてなかったか、 仮に考えたとしても、実用性を軽んじ、かっこつけを重視したことは間違いないでしょう。

以前にも書いたことがありますが、有楽町の国際フォーラムなんかもさいてーのデザインです。 きっと高名な建築家のデザインなんでしょうが、そんなものはくそ食らえです。一人の利用者として、 最低点をつけさせてもらいます。

ヒルズ・タワーも同様です。

ヒルズ・タワーをデザインした人に、今回の事件の刑事責任があるとは思えませんが、 少なくとも道義的な責任はあると思うのです。誰のデザインだか知りませんが、 「安全性よりも、イメージや美しさを優先したデザインでした。建築家として反省しています」 とでも表明してくれれば、今後の建築物に対して、良い影響があるんじゃないかと思うのです。

何に限らず、実用性を無視あるいは軽視したデザインをするデザイナーには、 私は極めて厳しいのです。以前、読者の方から教えて頂いたのですが、 デザイナー業界には「カフェ・マップ」なる言葉があるそうです。オシャレなカフェのショップ・カード (というのでしょうか、名刺みたいなやつです)の裏に地図が書いていることがありますが、 それが全くわけわからんことがあります。地図としての意義が皆無です。で、 そういうわけわからん地図を「カフェ・マップ」と呼んでいて、仲間内ではバカにしているのだとか。

どんどんバカにして頂きたいものです。カフェ・マップならば「ばーか」で済みますけど、 自動車や建築物の場合は、人の命に関わることだってあるわけで、「ばーか」では済みません。 とはいえ、良心的なデザイナーや我々ユーザが、かっこつけデザインに対して「ばーか」 と言う事は、かなり大切なことじゃないかと思うのです。




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