2006年1月17日


ライブドア強制捜査で「押収」について考える 


前々から不思議だったのですが、今回のライブドアへの強制捜査で、改めて不思議に思うのです。

家宅捜索して色んなものを押収するのはいいんですが、書類ではなく、コンピュータ・ システムのデータはどうやって「押収」するんでしょ???

考えれば考えるほど不思議です。

例えば、「コンピュータ・システムのデータ」ってのが、 マイクロソフトの Excel で作ったスプレッド・シートで、 そのデータは特定の PC の中にある、という状況なら、 その PC を押収してあれこれ調べればよい、というのは分かります。

でも、まともな会社なら、大切なデータであればあるほど、PC の中になど入れてないでしょう。 サーバ側で管理されている、ということです。じゃあ、サーバを押収すればいいのか、 っていうとコトはそんなに単純じゃありません。押収できないほどバカでかいサーバだってありますし、 「特定のサーバに保存している」のではなく、仮想化されたシステムで管理していることだって、 珍しくありません。つまり、サーバを特定できません。

そもそも、「サーバで管理」と言ったところで、「サーバのディスク」 にデータがあるとは限らないわけで、SAN なり NAS なりにあると考えるのが妥当でしょう。 つまり、物理的にはサーバのマシンとは別に、ストレージ・デバイスが存在している、 ということになります。しかし、ストレージ・デバイスだけを押収したところで、 それは単なる機械でしかなく、データを読み出すことは出来ません。もちろん、 ストレージについても仮想化されていて、 物理的なデバイスの特定があまり意味を持たないこともありえます。

サーバにしろストレージ・デバイスにしろ、家宅捜索対象の場所に存在しているとは限りません。 遠隔地のデータセンターにあるかもしれません。そのデータセンターは、 強制捜査対象ではない、第三者の提供するサービスとしてのデータセンターかもしれません。 データセンター・サービスを利用している場合、押収っていったって、下手に押収すると、 他の善意の利用者に迷惑がかかりますから、そんなことも出来ません。

また、古いデータなら、テープにバックアップを取って、システムからは消してあるかもしれません。 テープは災害対策のため、遠隔地の倉庫に置いてあるかもしれません。

一般にシステムに保存されているデータは、それ自身は意味のないビット列であって、 特定のソフトウェアを通すことで意味を解釈することが出来ます。 もし、そのソフトウェアが Excel ならば、警察でも使えるでしょう。でも、 独自のアプリケーションが独自に管理しているデータだとしたら(もちろん、 暗号化されているかもしれません)、そのアプリケーションが動く環境を整え、 そのアプリケーションを熟知している人が操作して初めて、 データはデータとしての意味を持つわけです。もちろん、警察にはそんなことできるはずがありません。

まだまだ色々と疑問点はあるのですが、このように、システムのデータというものは、 簡単に「押収」など出来るものではありません。まともな企業システムであるならば、 そのシステムの管理者なりが全面的に協力しないと、捜査の役に立つようなデータを入手することなど、 ムリムリムリーです。「押収」ってイメージではないですよ。「お願いですから、 システムを操作して、これこれこういうデータを見せて下さい」って感じ。

「これこれこういうデータを見せなさい」という命令なのかもしれませんが、 「これこれこういう」の部分が問題ですね。システムやアプリケーションの仕様に照らして、 意味のある「これこれこういう」を、捜査員が指示できるとも思えないんですよね。

「○○○○のデータを見せなさい」
「そんなこと出来ません」
「出来ませんじゃなくて、見せなさい。令状あるんだよ」
「見せたくても、そういう機能がないから出来ないんです」
「じゃあ、なんかそれに近いものを見せなさい」
「近いものって何ですか?」
「証拠になるようなデータだよ」
「バカ?」

みたいな会話が想像されてしまいます。

さて、実際の家宅捜索現場では、何が行われているんでしょう? 不思議です。




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