先日の通勤電車の中のことです。
運良く座ることができた私のとなりには、20 代後半と思われる OL さんが座っていました。
通勤電車ではよくあることですが、彼女、うつらうつらと眠っているようです。
ふと見ると、彼女の手に蚊がとまっています。小蝿とかウスバカゲロウとかではなく、
明らかに蚊です。血を吸う奴です。血を吸うだけなら許せるけど、血を吸ったあげくに、
痒くさせる不届きな奴です。
こういうシーンを目撃した時、私はどうすればいいのでしょうか? ちなみに、
おっさんの手に蚊が止まっていても、迷うことはありません。
蚊が自分の方にこないかどうか警戒する。以上です。
でも、20 代 OL さんの場合は迷うのです。彼女を助けて差し上げたいからです。
ピシャリと彼女の手にとまっている蚊を叩けば良いのでしょうか? 彼女を起こして、
「蚊が止まってますよ」と教えてあげれば良いのでしょうか? 彼女を起こさないように注意して、
蚊にふぅーっと息を吹き掛けて追い払えば良いのでしょうか?
いやあ、結構マジで悩みました。色んな考えが一瞬のうちにループするものですね。
「いきなり叩いたら、むちゃくちゃ驚くだろうな」とか、「起こして教えてあげた瞬間に、
きっと蚊は逃げてしまって、俺が悪者になるんだよな」とか、「息吹き掛けてるのって、
変質者っぽいよなぁ」とか。
結局、私は何もしなかったのですが、それは、私が優柔不断で何も出来なかったのではありません。
むしろ、冷静な状況観察によって、何もしなかった、と言うのが正しいのです。
というのも、蚊は彼女の左手親指の爪にとまっていたからです。
最初に蚊を発見した時から、爪にとまっていることは分かっていました。少々不謹慎ながら、
「蚊は爪を突き通して血を吸えるんだろうか?」とか「もし吸えるとしたら、
爪の下が痒いことになるなあ。それはたまんないだろうなぁ」とか考えてました。
蚊の様子を観察していると、明らかに戸惑っているようすでした。
血を吸うための器官と何と呼ぶのか知りませんが、
それを爪に突き立てようとしては断念し、足場を固めなおして再度突き立てようとして、
の繰り返しです。執拗に繰り返していますが、その様子は「戸惑い」と表現するのが最適でした。
もし蚊が日本語を喋れるなら、「あれっ? おかしいなあ」「入っていかねーなぁ」
「俺(ん、血を吸うのはメスか?)、何か間違ってる?」とでも言いそうな様子です。
ということで、私はピシャリもせず息を吹き掛けることもせず、でも、
何もしないことに対しての両親の呵責も感じることなく、平穏に過ごしたのであります。
やがて、爪から血を吸うことを諦めた蚊は、どこかへ飛び去って行きましたとさ。
めでたしめでたし。