1998年3月9日(その2)

電車での出来事


オープン記念というわけじゃないけど、自己紹介だけではあまりにもさみしいので、 いくつかの雑記など。

あれはもう 10 年近く前の冬のことです。当時、私は東海道線沿線に住んで いました。その日、会社の仲間とちょっと一杯やって、ほろ酔い気分で帰宅の 途についた私は、とんでもない光景を目撃するにいたります。

東海道線は比較的空いていました。席はほとんどふさがっていましたが、 立っているひとはちらほら、といった状況です。私も立っていまして、 何気なく車内を見渡すとなにやら不審な人物が。

不審といっても、痴漢行為におよんでいるとか、ビニール袋に顔を突っ込んで いるとかいう類いの話ではありません。

その二人は向かい合うようにして立っています。50cm 位の間を空けています。 そして、お互いに見つめあっているようにみえます。二人は無言です。でも、 二人の顔には幸せそうな微笑みが。

さて、どこが不審なのでしょう。よくありがちなバカップルなら、「ケッ!」 とは思っても、不審には思いません。何が不審といって、その二人が二人とも 「おじいさん」なのですから、これはもう立派に不審です。

「な、な、なんなんだ、この二人?」

と思った私は、さらに観察を続けます。

二人とも、60 歳前後でしょうか。見た目はごく普通の、健康そうなおじいさん です。一人は 8 割ハゲで、もう一人は 8 割白髪。こんな二人が、幸せそうな 笑顔で見つめあっているのですから、かなり不気味ではあります。

二人ともコートを着ているのですが、良く見ると、コートの前のボタンは全て はずし、お互いに左手をポケットに入れて、斜め前に突き出すようにして、 相手の右腰のあたりにもっていっています。つまり、向かい合った二人の間 には、二人のコートで囲まれた、他人からは見られない空間が存在することに なります。

さらに良く見ると、二人とも右手をその空間の中で、握手をするような角度 で差し出しています。でも、握手ではありません。二人の手は交差しています。 そうです、二人はお互いのチンポをまさぐりあっているのです。いや、見えた わけではないのですが、角度からいって間違いありません。それも、ズボン の上からではなく、モノを外に出しているようです。なぜなら、手がストローク するように動いていて、そのストロークの角度はモノが外に出ているとしか 思えないからです。

彼らは見つめ合っているだけではなく、ときどき自分や相手の股間に目をやり、 その後相手になにやら、色っぽい(ゲゲッ!)目配せをしたりもしています。 それはあたかも、

「ほれ、こうすると気持ちいいだろ」

とか、

「おぅ、そこが感じるぞ」

とか言っているように思えます。その間も終始二人は恍惚ベースの笑顔を 絶やしません。ニコニコニコニコしています。

私はそっちの趣味は全然ありませんが、あまりに珍しい光景に、目が釘付け 状態です。すると、8 割ハゲの方が私の視線に気が付いて、すっと右手を ひっこめました。相方の 8 割白髪もそれに呼応して、右手をひっこめ、 二人はお互いにあさっての方向を見ています。それでも、チンポはすぐに ひっこめられるわけもなく、コートで囲んだ秘密の空間はそのままですので、 充分に妖しい状態ではあります。

私がしばらく視線をそらしていると、また二人の右手が活動を始めます。 そして、再び私の視線を感じると、右手をひっこめます。こんなことが 2 - 3 回続いたでしょうか、他の乗客はこの二人に気付いた様子もなく、 私と彼らとの静かな戦いの様相を呈してきています。

彼らはこの行為をやめる気は全然ありません。見られているときだけ、 チンポから手をはなすだけで、すぐに再開します。何故そうまでして 車内での行為を続けたいと思うのかは、彼らのみ知るところです。

そのままいってしまったらどうなるのか、というのも興味あるところ です。いくときには声がでるのだろうか、あるいは膝がガクガクしたり はしないのだろうか、それから、ティッシュやハンカチでくるんでいる 様子もないので、ザーメンがそのへんに飛び散ったり、床にポタポタ落ち たりするのだろうか・・・ そうか、きっとコンドームをしているに違い ない。それなら、いっても取り敢えずは安全なはず。でも、二人のタイ ミングを合わせていくのは、きっと難しいはず。「もうすぐいきそうだ」 などと言葉を発するわけにはいかないのですから。

いくのを見届けるためには、彼らの邪魔はしないで、好きにさせておこう、 などと考えていたのですが、結局最後まで見届けることは出来ませんでした。 電車は私の降りる駅に着いてしまったのです。私は未練たらたらで電車を 降ります。彼らの脇を通りすぎて出口に向いながら、さりげなく秘密の 空間をチェックしましたが、私は彼らにとって既に要注意人物。ガードは 固く、中を覗き見ることは出来ませんでした。ホームに降りて、改札に 向かいながら車内を振り返ると、そこには、これでやっと邪魔者はいなく なった、とばかりに見つめ合い微笑み合う二人の姿があったのでした。





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