1998年3月9日(その3)

階段での出来事


JR の某駅。私はホームへ向う階段を登っていた。私の左斜め前1メートル 位を同じくホームへ向う、女子高生が二人。

そのうちの一人はやたらスカートの丈が短い。最近の女子高生のスカート丈には 目を見張るものがあるが、その中にあっても一段と短い。もちろん、流行の ピークは過ぎたとは言え、まだまだ多数を占める白のルーズ・ソックスである。 彼女は決してスリムとは言えないが、お尻はバンと張っていておじさん好み である。バッグでお尻を隠すこともせず、粛々と階段を登っていく。

当然のことながら、期待は高まる。あの短さなら、然るべき角度から見れば、 きっと見えるはずである。しかし、問題が。私と彼女の距離が近すぎるので ある。言葉をかえれば、充分な高低差を確保出来ていないのだ。この先、 高低差を確保するためには、私と彼女の相対速度を変化させる必要がある。 分かりやすく言うと、私が立ち止まるか、彼女が速く登るかである。

こんな私の気を知ってか知らずか、彼女の歩みはのろい。私が、不自然になら ない範囲でゆっくり歩くのにも限度があるのだ。かと言って、立ち止まって 上を見るなんてバレバレのことは出来ない。「こらー、若者ならもっと速く 歩けー!」などと心の中で罵りながらも、「やっぱりダメかぁ・・・」と いうあきらめの気持ちも・・・

しかし!!

神様は私を見捨てなかった。突然、

「キャッ!!」

という悲鳴とともに、私の目の前にはブルーの縁取りをされた白いパンティー が! モロである。完全にモロである。丸見えという表現がこれほど当てはまる のはまんぐりがえしのほかには、これしかない、というくらい、モロである。

どうやら、彼女は階段に蹴っ躓いてころびそうになって、手をついたようで ある。しゃがんでしまったわけではないので、腰の高さはそのままで、前に 手をついたのだ。これはもう、モロにならざるをえない。

なんというラッキー! しかし、私にはこの幸運を噛み締めている暇はなかった。 「キャッ!!」という彼女の悲鳴の直後には、

「ワオ!」

とも

「オオ!」

とも聞こえるおやじの大きな声があがっていたのだ。

そのおやじは、私の右斜め前にいて、ことの始終を目撃していたと思われる。 この声に続けて、おやじは

「大丈夫か?」

「気をつけなさいよ」

「モゴモゴモゴ・・・」

と、彼女を気づかう言葉をかけていた。彼女は「はあ」とか「ええ」とか、 適当に答えていたが、彼女にも私にもはっきりと分かっていたことがある。

それは、あの大声は決して彼女を気づかったものではないということである。

「オオ! 見えた!!!」

とか、

「オオオ! やったー!!!」

とか続くはずだったのだ。人がちょっと躓いたくらいで、大声をあげるおやじ がいるわけがない。あの歓声は明らかに、彼女のパンティに対して発せられた ものである。そして、大声をあげてしまったことを自分なりに正当化するために、 彼女を気づかっている振りをしただけなのである。

彼女の連れもまた、モロに目撃していたはずであるが、賢明にも「あなた、 丸見えだったわよ」などとは言わず、単に躓いた友人に対する態度を崩す ことはなかった。しかし、この思いやりは、あの歓声のまえには空虚であり、 彼女の心には、あの歓声とそれに続くおやじの白々しいいたわりの言葉が、 小さな傷として残ったに違いない。

階段を登り終えて、改めて身支度を整える彼女の脇を、平常心を装って 通りすぎた私は、彼女の顔が紅潮しているのを見逃さなかった。それは、 単に恥かしい思いをしたため、というだけでなく、羞恥の喜びの発現で ある、というのは考えすぎであろうか。あれほど短いスカートをはいて いるのだから・・・・ いや、これ以上詮索しても意味はない。下衆の 勘繰りというやつだ。

彼女に幸あれ!





ここを押すと、私宛てにメールが届きます。


HOME