1998年3月9日(その4)

ジャイアント馬場さん


いささか、旧い話になってしまうのですが、今年の1月に、ジャイアント馬場さんが 還暦を迎えられました。まことに、めでたいことです。

ジャイアント馬場さんをご存じない方はいらっしゃらないでしょう。全日本プロレスの 社長であり、現役のプロレスラーです。

「ええっ、まだ現役なの?」という声も聞こえてきそうですが、立派に現役を 努めています。もちろん、往年のスピード、体力、スタミナは望むべくもない のですが、ファンの失笑を買うようなことにはなっていません。

もし、あなたがプロレス・ファンなら、これから私が言うことは先刻ご承知、 いまさら何を、というところでしょうが、一般の方には馬場さんに対する 誤解がしばしば見受けられます。

例えば、馬場さんの動きがスローモーションのようだ、ということです。確かに 昔よりは遅くなっています。また、トップクラスのレスラーに比べても遅いことは 明らかです。しかし、馬場さんの巨体を考えると、一見ゆっくりに見える動作も、 実はとんでもないスピードなのです。ですから、あの逆水平チョップも、指先の 速度は超高速なのです。おそらくは、相対論的効果が確認出来るレベルの速度を 持っているに違いありません。だからこそ、時間経過が遅くなり、ゆっくりと 感じられるのです(はいはい、そうムキにならないで、もっと広くやさしい心で 読みましょうね)。とにかく、ゆっくり見えるのは巨体のせいで、実際は見た目 よりもずっと速いのです。

次にある誤解は、馬場さんの技は効いていない、というやつです。これは とんでもない誤解です。馬場さんの手は、一般人はもちろん平均的プロレスラー と比べても、格段に大きいことはご存じの通りです。一方、逆水平チョップや 脳天唐竹割りなどのチョップ技の効果は、運動量で表されますが、この運動量は 速度と質量の掛け算になります。つまり、質量の大きな馬場さんの手による チョップはそれだけ効果的なのです。さらに、馬場さんのチョップは秘孔、 つまり急所を狙ってくるのです。この技が効かないわけはありません。

馬場さんの技はもちろんチョップだけではありません、16文キック、ココナッツ・ クラッシュ、河津掛けからの河津落とし、そして私が一番好きな、芸術品とも 呼べる「世界を取った」ランニング・ネックブリーカー・ドロップ。いずれの 技も馬場さんの巨体を生かして、その威力を倍増させている技です。え? 32文ミサイル・キックはどうしたのか、って? 心優しいファンなら、その 技の名を出すことは控えるものです。

さらには、馬場さんはどんな技をつかっても、それを馬場オリジナルにして しまいます。わかりやすく言うと、技の名前の前に「ジャイアント」がつくの です。ジャイアント・コブラ・ツイスト、ジャイアント・ラリアット、 ジャイアント・スリーパー、ジャイアント・股裂き、などなどなど。 世界中にプロレスラーは何千人といますが、このような破格の扱いをされる レスラーは馬場さん以外には誰もいません。ま、この件に関しては、日本テレビ の倉持アナウンサー(以前、プロレス中継の実況を担当されていた、名アナウンサー です)の功績も大きかったのですが。

さらにさらに、馬場さんには幻の必殺技があります。32文じゃありませんよ。 あれは幻なんかじゃありません、良き思い出です。幻の必殺技というのは 「16文ラリアット」です。どうです、凄そうな技でしょ? この技はまだ 誰も見たことがないのです。きっと、馬場さんはこの技のあまりの威力に、 自らこの技の使用を封印したのだと思います。

これらのどの技をとっても、その破壊力は抜群です。それは誰が何と言おうと そうなんです。文句があるなら、馬場さんに言って下さい。

ここまで、お読みになってお分かりのように、私は「馬場さん」とさん付けで 呼んでいます。これは私に限ったことではなく、プロレス・ファン、プロレス・ マスコミ、もちろんプロレス関係者の全てがそうです。馬場さんを呼び捨てに することは、5秒以内の反則が許されるプロレスにおいても、許されない反則 なのです。いやいや、反則だからではなく、みんな敬意をこめて「馬場さん」 と呼んでいるのです。

唯一の例外は「馬場コール」だけです。でも、この「馬場コール」には、 私は注文をつけたい。このコールは「ば、ぁ〜、ば、(1拍休み)、 ば、ぁ〜、ば、(1拍休み)」と続きます。これは呼び捨てにしているだけ ではなく、どうもリズムに乗りにくい。そこで、「ば、ば、さん、(1拍休み)、 ば、ば、さん、(1拍休み)」とすれば敬意を表しつつ、いいリズムになって、 一石二鳥です。今これをお読みのプロレス・ファンの皆さん、今後はこの 「馬場さんコール」を広めていってはいかがでしょう?

馬場さんについて、語りたいことは山ほどあるのですが、今回はこのくらいで。 プロレス・ファン以外の方には、分かりにくかったかもしれませんね。ご質問は 受け付けますが、馬場さんに対する誹謗中傷の類いは受け付けませんので、 悪しからず。





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