| まわる男 |
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まわる男は実在する。「まわす男」ではない。もちろん、「まわされる女」 でもない。ついでに言うと「まぐわう男」でもない(←かなり無理がある)。 まわる男である。 まわる女も実在するが、統計的には、まわる男の方が圧倒的に多いと思う。また、 年齢層としては、40 台以上が多いと思われる。少なくとも、5 才のまわる男は 見たことがない。 まわる男が棲息するのは電車やバスの中だ。彼らの活動時間帯は、概ね午後9時頃 から終電、終バスの時間までである。 まわる男は毎日まわっているとは限らない。それぞれ頻度は異なる。ほとんどに 共通して言えるのは、まわる男になるときには、酔っているということだ。 もちろん、酔い方の程度にもよるが、酔っていてもまわる男にならない人も多い。 まわる男になるための、資質のようなものはあるのだろう。 まわるというからには、回転運動の中心と半径が存在する。まわる男の場合、 中心は吊革の取付け位置になり、半径は彼らの酩酊状態に依存するが、およそ 20cm から 40cm と推定される。また、回転運動であるから、慣性モーメント、 角運動量、角加速度などに関しての考察も必要であるが、難しいのでパス。 以上をまとめて分かりやすく言うと、まわる男とは、酔って電車やバスに乗り、 吊革に掴まったまま寝てしまい、真っ直ぐ立っていられずに、吊革を中心に グルグルとまわってしまう男のことである。 我々一般の乗客にとって、彼らの存在は迷惑である。ただでさえ酒臭くて 閉口するのに、その上グルグルまわって体当たりされるのだからたまらない。 しかし、若くてきれいなお嬢さんがまわる女になった場合は、よろこんで体当たり を受けたいと思うことは、言うまでもない。彼女の後ろに立って、腰の動きを シンクロさせて、ランバダでも踊ろうかと思うくらいである。 まわる男は鈍感である。自分がまわっていることも、体当たりしていることも、 気付かないことが多い。仮に気付いても改めようとはしない。 比較的良心的なまわる男でも、体当たりしたことに気付き、 「ふぁ、しゅみましぇん」 などと言って、頭をカクカクと縦に 2 - 3 回振るのだが、その 5 秒後には、 また体当たりしてきたりする。 まわる男の被害を避けるには、遠ざかることが一番であるが、混んでいる車内では、 なかなかそうもいかない。ホームで待っているときに「私はまわります」という ゼッケンでも付けていてくれれば、そいつらの隣りにならないように出来るが、 それもまた無理な相談だ。 先日目撃したのはかなり悲惨な状況であった。 被害者は若い OL。午後 10 時を回った電車の車内はかなり混んでいた。彼女はなんと、 3人のまわる男に囲まれ、かわるがわる体当たり攻撃を受けていたのだ。 さらに悪いことには、3人が3人とも 180cm を超える長身で、うち1人は 100Kg を超えると思われるデブであった。彼女は完全に押しくら饅頭の中に埋もれてしまって、 逃げ出すことも出来ない状態。 もちろん、3人はお互いに体当たりをすることもあるのだが、まわる男同士の 連帯感からか、お互いに全然気にしていない。それどころが、お互いの体当たり のエネルギーをお互いに増幅しあって、体当たりの威力は時間とともに強力に なっていくようだ。 彼女には、お気の毒としか言いようがない。およそ 10 分間にわたり、体当たり 攻撃を受け続けたのだ。3人の輪の外側にいた男性が、わざと咳払いをして、 3人に注意を促しているのだが、もちろん何の効果もない。 ようやく電車が乗り換え駅に着き、多くの乗客が降り、車内が空き、彼女は 3人の輪から抜け出すことが出来た。彼女は私が立っているほうに歩いてきて、
という大きな溜め息をついた。 もし彼女が日記猿人に登録している日記書きなら、必ずこの出来事を書くに 違いないが、多分そうではないだろうから、私が代りに書いて、彼女の無念を 晴らしてあげよう、ということで、筆をとった次第である。
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