| コイン洗車場のオヤジ |
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私は自分の車をあまりかわいがるほうではなく、洗車なんて滅多にしないのですが、 えらく汚れが目立って来たときとか、かわいこちゃん(死語?)を助手席に乗せるとき なんかは、コイン洗車場におもむくこともあるわけです。 先日、前者の理由か後者の理由かはおいといて(おいといてもバレそうだけど)、 自宅近くのコイン洗車場に出掛けました。 そこは、土日の昼間はいつも混んでいるのですが、平日の朝ということで (会社は休み取ってたんです)、どうせ誰もいないだろう、などと考えて いました。ところが実際には、先客が 2 名いらっしゃいました。 その洗車場は自動洗車機が一台と、スチーム洗浄のためのブースが 4 つ、 そして、水気を拭き取ったり、順番待ちをするための駐車スペースが 10 台分ほどあります。私はささっとすませたかったので、自動洗車機を使う つもりでした。 私が洗車場に入った時、一台はスチーム洗浄用のブースに入っていて、 それはそれでいいのですが、もう一台が自動洗車機の入り口付近に停車 していました。 実を言うと、さっさと洗車を済ませて、待ち合わせ場所に行かなければ ならなかったので、自動洗車機がふさがっていると、ちょっとあせって しまうのです。遅刻しても、汚い車でも、ポイント下げてしまいますからね。 まあ、冷静に考えれば、自動洗車機を占有する時間はたかだか 5 分位な もので、それほどあせる必要はないのですが、その時は一瞬「まずっ・・・」 という気持ちになったのは確かです。 ところが、その洗車機の入り口に停っている車は、ちょうど洗車機に入ろう としていた、というわけではなかったのです。 その車のオーナーと思われるオヤジ(推定年齢 60 才)は、車の脇に立って ボディを拭いているのです。どうやら、自動洗車を終えた後、洗車機から 出たところ(つまり入り口を塞いでいる)で、ボディに残った水滴を拭き取って いるらしいのです。 拭き取りをしたかったら、そのためのスペースはいくらでもあるのに、 わざわざ入り口を塞いで停めているのです。 私の頭は、そういう行動を理解するのに時間がかかるようです。「とりあえず 軽く汚れを拭き取ってから、洗車機に入れようとしているのだろうか?」、 「二度洗いをしようとしてるのだろうか?」などと、合理的な(よく考えると 全然合理的ではないのですが、入り口を塞いで拭き取りをするよりは、ずっと 合理的に思われます)説明をつけようとして、上記の結論に至るまでには、 数秒を要しました。 私は「私はその洗車機に入りたいんだよ」という意志が充分に伝わるであろう 位置に車を停めて、件のオヤジがどくのを待ちました。 ところが、そのオヤジ、なかなかどこうとしません。こちらのほうはチラッと 見ているのですが、拭き取り作業を続けています。そのオヤジには、自分が 洗車機の入り口を塞いでいるとか、そこに停っている車(私の車)が洗車機に 入ろうとしているとかいう、きわめて当たり前の状況判断が出来ないようです。 しびれを切らして、といっても大した時間が経ったわけではないのですが、 私は車を出て「どいてください」と言おうかと思い、ドアノブに手をかけた 瞬間、かのオヤジはハタと何かに気付いたように、あわてて車に乗り込み ました。ようやく私の存在とその意味するところ、そして自分の位置と その意味するところを理解したのです。彼は私に謝るでもなく、車を空き スペースに移動しました。 うーむ、目くじら立てるほど待たされたわけではないのですが、こういう 状況判断能力の人がハンドルを握るのは怖いような・・・ エレベータや 電車で、降りる人よりも先に乗り込もうとする人も怖いけど・・・ さて、私はめでたく(?)洗車機に車を入れて、ミラーをたたみ、料金を入れ コースを選択し、スタート・ボタンを押して、洗車機から離れたところまで 下がりました。 すると、私の傍らに立つ一人のオヤジ。さっきのオヤジとは別人です。どうやら、 洗車機に注目しているようです。真剣な表情で洗車機を見つめています。 「ああ、この人はここの洗車場の管理人さんで、車が正しい位置に停っているかとか、 窓はきちんと閉っているかとかをチェックしてくれているんだ」 と私は考えました。いかにもそういう感じでしたから。 洗車機が動き始めても、彼は私の脇から離れようともせず、じっと洗車機を 見つめています。 「万一、機械の誤動作があって車を傷付けそうになったら、どこかにある緊急停止 スイッチでも押してくれるのだろう。親切なおじさんだ。いや、管理人さんなら それが仕事か・・・」 なおも、私は彼の行動を好意的に解釈していました。 ほどなく、自動洗車の行程は最後の乾燥に入り、それも 1 分程で終了しました。 すると、その時まで私の脇に立ち続けていたオヤジは、ふっと興味を失ったように、 その場を立ち去り、スチーム洗車用ブースに停めてある車に歩み寄ると、バケツから スポンジを取り出して、洗車を始めたのでした。 そう、そのオヤジは管理人などではなく、たんなる野次馬だったのです。 はあ・・・ 自動洗車がそんなに珍しいか? 野次馬してもいいけど、そんなに 露骨に当事者のすぐ脇で覗き込むか? なぁんてことを思わないでもなかったのですが、私のココロはそんなどうでも いいことに捕われてはいませんでした。これからの楽しいであろうひとときに、 思いを馳せていたのでした。 しかし、その後すぐ、私は渋滞にまきこまれてしまい、待ち合わせ時間に あわや遅れるかというキリキリとした思いを味わうのでした。
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