1998年8月24日

愛ちゃんと即・・・


会社の後輩の K と呑んでいたときのことです。

K が真顔で、

「高樹さん、相談があるんですけど・・・・」

K というのはなかなか 2 枚目であり、話しもうまく、私の 10 倍位は女に もてるやつである。ホスト・クラブで働くのが似合っている。もし、女の子を 紹介してくれ、なんて言ったら張り倒すしかない。

「なんだよ」

とりあえず気の無い返事。

「あのぅ、ソクをしたいんですよ・・・・」

「ソク?」

「はい、即ベッドです」

「はぁ、ソープのことか?」

「はい・・・」

K はもてるくせに、風俗にも通いつめている奴で、ヘルスありソープありなんでも ありなのです。因みに「即ベッド」というのは個室に入ってすぐ(入浴しないで) ベッドで一戦ということです。

「すればいいじゃん、勝手に」

「いや、でもその店は即ベッドのサービスはしていないんです」

「ほうほう、そりゃ無理だわなぁ」

「そこをなんとか」

「そこをなんとかって、俺に言ってどうするんだよ、女の子に頼めばいいだろ」

「いやぁ、高樹さんなら、なにかいい方法知っているかと思って」

何を勘違いしているのやら。どう考えても彼のほうが経験豊富です。 私もそういう経験がゼロとは言わないが、彼のように色んなところへ 行ったりはしていないです。そりゃあ、エッチ系の話題には強いけど、 風俗系のノウハウは持ち合わせておりません。

それでもまあ、とりあえず話をきいてみると、これがなかなかよい話でありました。

数日前、彼は飲んだ帰りにソープランドに寄りましたとさ。お相手は 愛ちゃん、推定 22 歳。

ところが、個室に入ってから気づくのが彼らしいのですが、お金が足りない。 (注:通常、ソープランドではフロントで入浴料を払い、それとは別にソープ嬢に サービス料を払うのです)

いや、厳密に言えば、ぎりぎりでサービス料は払えるのですが、払ってしまうと 帰りのタクシー代がなくなるというわけです。

さて、困った K は、愛ちゃんに正直に告白しました。すると愛ちゃんは良くできた 娘で、

「私もプロだから、仕事はちゃんとするし、そのお金もきちんと頂くわよ。 でも、歩いて帰れ、というのも酷だから、サービス料はまけられないけど、 私がタクシー代を貸してあげるわ。5000 円で足りる?」

この後も愛ちゃんは仕事を手抜きすることも無く、K は大満足で帰宅しました。

さてさて、K としては 5000 円を返さなければなりません。しかし、店のフロントに 行って、「これ、愛ちゃんに渡しといて」というのもアホらしいし、ここは 愛ちゃんの指名でもう一度行くしかありません。(K が、そう考えているのですよ)

ところが、K はどうやら愛ちゃんに惚れてしまったのでした。いや、プレイボーイの K のことなので、本気で好きになって、付き合ってほしい、なんてことはありません。 ソープ嬢として、ぞっこんに惚れてしまったということです。

そこで、K の相談事につながるのです。どうしても、愛ちゃんと即ベッドしたい、と。 普通に女性を口説くときのゴールはセックスですが、ソープではセックスするのは 当たり前。

私が思うに、愛ちゃんを口説いて、即ベッドするのが、彼なりの愛情表現 でもあり、ゴールでもあるのでしょう。

とにかく、彼は「即ベッド」に異様な情熱を傾けているのでありました。

その彼の純情(どこが?)にうたれた私は、しばし考え込み、ひとつの作戦を さずけました。

「その店では、ご案内のときはどういう手はずになっているんだ?」

「普通ですよ。待合室にボーイが呼びにきて、女の子が待っていて、エレベータで 個室に上がるんです」

「ふむふむ、それで、女の子はどうやってエスコートしてくれるんだ?」

「別に何も・・・、こちらへどうぞ、って言うくらいですよ」

「お前、愛ちゃんには嫌われてないだろうな?」

「それは自信を持って大丈夫です。この前もかなりいい雰囲気でしたから」

「よし分かった。じゃあ、エレベータに入って二人きりになったら、手をつなげ」

「はぁ、手をつなぐんですか?」

「そう、恋人ムードを作るんだよ。部屋に入ってから『即ベッドしよう』 なんていうのはヤボだろ? 自然にそうなる雰囲気を作らなきゃな」

「なるほど・・・」

「そういうの、お前、得意だろ? ああ、それから 5000 円はちゃんと返さなきゃ ならないのはもちろんだけど、お金を返すために来たんじゃなくて、君に会いたくて 来たんだよ、なんて言ってあげるといいんじゃないかな」

「なるほどなるほど・・・」

「お客とソープ嬢という関係じゃなくて、手をつなぐことで、男と女の関係に してしまうんだ。手をつなぐというスキンシップは効果的だぞ」

「なんとなく、うまくいきそうな気がしてきました」

K と私はその後しばらく、手をつなぐことの効用を話し合い、二人とも大いに その気になって分かれました。そして、それから約 2 週間後、K からの 結果報告がありました。

「高樹さん、ばっちりでしたよ。エレベータで手をつないで部屋まで行ったん ですが、もう雰囲気は恋人そのもの。部屋に入ったら、愛ちゃんは恥かしそうに モジモジしてました。あとはもう僕のペースで・・・」

つうことで、めでたしめでたしであります。

実は私もこの方法に自信があったわけじゃなく、酔った勢いで適当なことを 言っていたわけですが、うまくいってラッキーでした。

因みに、K は認めませんでしたが、私は彼が愛ちゃんをプライベートなデートに 誘ったことに、いささかの疑いも持っておりません。そして、それは多分成功 していることでしょう。

とまあ、今回はわりといい話なのですが、K とソープ嬢に関しては、もっと 凄い話があります。それは決していい話ではありませんが、機会を改めて したいと思います。






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