| エンジニアの良心 |
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私はソフトウェア・エンジニアだったこともあり、エンジニアの良心 というものを基本的には信じています。良心などと言うと、いささか 大げさなのですが、つまるところ「良いものを作ろう」という意志です。 いくら現場のエンジニアに良心があっても、時間、予算、人が限られた なかで製品開発をするのですから、理想主義的にエンジニアの思う通りの ものを作れるわけではないでしょう。 それでも、各々のエンジニアは色々な制約のなかで、最良なものを求めて いるんだと思います。そうでなければ、エンジニアの仕事の面白さなんて、 どこに求めればよいのか分かりません。 これはソフトウェアに限らず、ハード・ウェアでも家電製品でも車でも、 なんでも一緒だと思っています。 出来上がった製品が、エンジニアにとって満足のいくものになることは、 おそらく稀なことでしょう。もし、満足のいく製品を作れたとしたら、 それはそのエンジニア(達)にとって、非常に幸福なことだと思います。 私自身の経験からしても、そういう幸福な思いは経験がありません。もっと あそこをこうすれば良かった、という反省ばかりと言っても過言ではありません。 ソフトウェア製品の場合、バグというものがつきまといます。バグの多い製品は、 言うまでもなく使いにくいものですし、製品としての価値は相対的に低くなり ます。 ただし、私はバグが多いからといって、その製品を開発したエンジニアに良心が なかった、とは思いません。こういう機能を実現しようとしたのだろうが、 そのテストに充分な時間をかけることが出来なかったのだなとか、こういう 特別な条件での動作については、見落としがあったんだな、ということで あって、エンジニアが「良いものを作ろう」という意志を持っていなかった、 ということではないのだろう、と思います。 ところが、世の中には色々なソフトがあり、なかにはエンジニアの良心どころか、 エンジニアの悪意を感じさせるものもあります。 例えば、マイクロソフトの Outlook Express です。よく言われているように、 このメール・ソフトはデフォルトでは「リッチ・テキスト形式」でメールを 送信します。もちろん、普通のテキスト形式でも送信出来るのですが、それには 設定が必要で、何も設定せずに使うと、「リッチ・テキスト形式」で送信されて しまうのです。(Windows 98 では変わっているのかな? 使ってないので不明) 一方、「リッチ・テキスト形式」のメールを読めないメール・ソフトというのは、 世の中にまだまだ多数存在します。メールというのは相手が存在する双方向の コミュニケーションなのですから、最大公約数的な作法でデータをやり取りする べきなのです。 今現在、「リッチ・テキスト形式」が最大公約数であるとは思えません。つまり、 Outlook Express は、ちょっと見た目が良い、でも相手によってはそれを 読むことが出来ないデータを、自分勝手にタレ流すように作られているのです。 こういう事情は、Outlook Express を作ったエンジニアであれば、分からない はずがありません。つまり、これはバグと同列におかれるものではなく、完全な 確信犯なのです。 Outlook Express を作ったエンジニアは、どういうつもりだったのでしょうか? ビル・ゲイツの考えは分かります。「技術革新」と称して、こういうお行儀の 悪いこと(ただし自社の環境では何も問題が起らないし、ちょっと見はきれいで かっこよく思われる)を何も知らない一般のユーザに広め、自社の環境に囲い込もう としているのでしょう。 しかし、現場のエンジニアはどうなのでしょう。ビル・ゲイツの考えに賛同 して、「リッチ・テキスト形式をデフォルトにすることで、マイクロソフトの 世界征服の役にたてるんだ」と思っていたのか、それとも、「本当はこんな ことはしたくないんだけれど、会社の方針だから仕方ないよ・・・」なのか。 機会があれば、Outlook Express を作ったエンジニアに話を聞いてみたいのですが、 残念ながら、今のところそういう機会はありません。将来も多分ないでしょう。 本来であれば、「エンジニアの良心」として、「リッチ・テキスト形式をデフォルト にするべきではない」と思うのが正常でしょう。また、「会社の方針だから・・・」 なら、多少は同情の余地もあります。 しかし、良心の痛みを感じることなく、こういうソフトを作っているとしたら、 それはかなり怖いことです。そして、私は Outlook Express だけではなく、多くの マイクロソフト製品に、類似点を感じます。それらが全て「納得ずく」だと したら、本当に怖いことです。 私がマイクロソフト製品を使って感じる嫌な思いというのは、決してバグが 多いということではありません。このような、確信犯的なムチャクチャがまかり 通っていることです。 いっそのこと、マイクロソフトに転職して、内情を探ってから辞めて、 暴露本を書くと売れるのではないかとも考えられるのですが、あんな会社には 絶対に行きたくないし、先方もこんな人材を欲しいとは思っていないでしょうな。
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