1999年1月14日

ナースさおりの「センセ、お注射してして!」


高樹センセったらまた遅刻? 診療時間まであと 5 分よ。まったくもう、 朝起こしてくれる人がいないと起きれないのかしら。

今度、私が起しに行っちゃおうかしら。あ、でも私も寝坊しちゃうといけないから、 前の晩から泊りこまなきゃ。いやんいやん。

ああ、私は さおり、高樹小児科医院のナースよ。ときどきは「てんし」なんて 名前も使うわ。なにせ殿方あこがれの「白衣の天使」ですからね。おほほ・・・

でも、ここは小児科、いいオトコとの巡り会いはないのよね。

あ、センセが来た。

「センセ、おはようございます」

「あ、ああ、おはよう、早いね」

「私が早いんじゃなくて、センセが遅いんです!」

「ふむ、そうか・・・・、そうだな、うん」

センセはまだ寝惚け顔。ノロノロと椅子に腰掛けて、さっき私が出しておいた カルテに目を通してる。

でも、私は見逃さなかったわ、いや、聞き逃さなかったわ。センセが座る瞬間、 「ブッ!」という音がしたのを。

センセは何食わぬ顔をしてるけど、絶対にあれはオナラね。もしかしたらセンセ、 わざとやってるのかしら、この前もしていたわ。

私のモトカレがそうだったのよね。いつも私の前でオナラして、私の愛情を試して いるみたいだったわ。ええ、私は平気よ。好きな人ならね。気を使わないでやって くれたほうが好き。

それでね、モトカレの与える試練はオナラだけじゃないの。わざと大きな音でハナを かんだり、私の見ている前でハナクソほじったり、鼻毛抜いたり、耳を小指で ホジホジして、フッと吹いたり。

もちろん私は平気よ。愛情があれば。耳垢なんかは大好き。あ、違う違う、耳垢が 大好きじゃなくて、耳掃除してあげるのが大好き。もちろん、膝枕でね。うふっ。

それでカーカー寝ちゃったりしたら、ほんとカワイーって感じ。チョー幸せな 気分になるわ。

ああ、懐かしい。彼は今どうしてるかしら。一番大好きな人だったわ。

いつかセンセの耳も掃除してあげたいな。でも、私、湿った耳垢は嫌い。センセの 耳垢が湿ってたらちょっとブルー。

あ、いけない。患者さん呼ばなきゃ。

「○○さん、お入りくださーい」

若くて綺麗なおかあさんに連れられた、こうたくんが入ってきました。

「こうたくん、今日はどうしたのかな?」

なんて言ってるけど、センセったら、こうたくんじゃなくておかあさんのほうに 興味があるみたい。まあ、いつもの事だけど。

「ゆうべから風邪をひいたみたいで、熱も少しあるようです」

「さあ、こうたくん、ぽんぽん出してセンセに見てもらいましょうね」

「いやじゃ、しゃおりせんせいに見てもらうんじゃ!」

こうたくんはいつのまにか、私の名前を覚えている。

「私は先生じゃないのよ、高樹センセに見てもらいましょうね」

「いやじゃ、しゃおりせんせいがええ」

まあ、おませさんだこと。

「いいこだから、私の言うこと聞いてね」

と言って私がこうたくんの前にしゃがみこんだその瞬間、

「ヘプシュ!!」

こうたくんのハナミズが私を直撃。

でも、もちろん私は平気よ。愛情があるから。(泣)






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