恥ずかしい瞬間というのがあります。私の場合、着替えを見られたからといって
恥ずかしくはありませんが、恥ずかしいことなどいくらでもあります。
他人から見るとどうでもいいようなことでも、本人にとってはどうしようもなく
恥ずかしいこともあります。自分の心の内を、それもあまり大っぴらに出来ないような
ことを見透かされた時には、かなり恥ずかしいものです。
昨日、私は見知らぬ誰かに、そういう恥ずかしい瞬間を体験させてしまいました。
新宿に所用のあった私は、電車で出かけることにしました。土曜日なので、電車は
混んでいません。私が乗ったときには、あちこちに空席がポツポツとありました。
どこに座るか決めるにあたっては、若い女性の隣りがいいとか、ミニスカートの
お嬢さんの正面がいいとか、その手のことを考えてしまうのは当然でありまして、
その時もオジサンに挟まれた席と、女性に挟まれた席のうち、後者を選択したのは
言うまでもないことであります。
私が座ろうとするのを見て、私の左隣りにくる女性がちょっとだけずれて、スペースを
空けてくれました。
その女性はピンクのサマーセーターにグレーのミニスカートといういでたちでした。
従って、彼女の正面に座ると、もしかしたらいいことがあるかもしれないのですが、
その席は既にふさがっていたのでした。
その席には、40 歳位の気の弱そうなオジサンが座っていました。
さらにオジサンにとって幸いなことに、彼女がちょっとずれたため、彼女の位置は
彼の真正面になったのです。
私が席に着いて、「正面からなら見えるかも・・・」などと考えて、ふとそのオジサン
を見ると、彼はじーーーーっと彼女の股間方面を見つめているところでした。そして
次の瞬間、彼が視線を上げたため、私とバッチリ目が合ったのです。
「あわわ・・・・」
としか表現のしようのない表情で、すばやく視線を持っていた雑誌に落とすオジサン。
そんなに慌てなければいいものを、あれだけあせった表情を見せたら、今まで
彼女の股間に注目していたことがバレバレであります。
さらに、あのあせり具合いから推察するに、しっかりと見えていたのでしょう。
「ボ、ボクはなーーんも見てないからね」
と主張するかのように、じーっと雑誌を読む、いや読む振りをするオジサン。
私に弁解しなくてもよろしいのですよ。男同士ではありませんか。それに私は彼女の
連れでも何でもないのです。今回はたまたま、アナタに運があっただけ。立場が
逆転したら、私も同じ方面に注目するでしょうからね。
でも、私なら、それが他の男にばれたからといって、そんなに慌てないと
思いますが・・・
第一、彼女は多分、アナタに見られていたなんて気付いてませんよ。そんなにアタフタ
すると、それで気付かれてしまうかもしれませんよ。
彼女は、膝に置いたバッグの位置を直すこともしませんでしたので、きっと気付いて
ないのでしょうが。
それはともかく、私と目があって、スケベ心を見透かされたオジサンの心の傷は
大きかったようで、その後は、絶対に雑誌から視線をはずそうとはしなかったの
でした。
ああ、私がアナタを見なければ、アナタは至福のひとときを過ごせたのですね。それを
一瞬で奪ったのが私なのですね。申し訳ないことを致しました。
でもね、やはりアナタ、修行が足りないと思いますです。