2000年1月19日 アンクレット


10 年程前のことになります。都内某所のキャバクラに春香(仮名)ちゃんという 女性が在籍していました。

私はその店に通い詰めていたわけでもなく、春香(仮名)ちゃんと会ったのは 2 回 程度だったと思います。彼女はちょっと甘えたような声で話すのですが、色々と 細かい心づかいが感じられ、とても良い印象でした。

彼女はいつも右足首にアンクレットをしていました。

「アンクレット好きなの?」

「うん、大好きだからいつもしてるわ」

という会話があった記憶があります。

その店には行かなくなってしまいましたが、時々は春香(仮名)ちゃんのことを 思い出しては、どうしているかな、などと思っていました。

そんなこんなで 2 - 3 年後のことです。男性向け雑誌を立ち読みしていた私は、 春香(仮名)ちゃんに良く似た女性の写真を発見しました。

浅川優子という名前です。浅川優子さんは AV 女優さんです。つまり、 その雑誌の AV 紹介コーナーに、春香(仮名)ちゃんにそっくりな浅川優子 さんの写真が出ていたというわけです。

もちろん、浅川優子というのは本当の芸名ではありません。それほど有名な女優さん ではありませんが、当時は雑誌の AV コーナー等では時々見掛けた名前です。

我ながら単純ですが、その雑誌を読んでから暫くすると、浅川優子さんの出演している ビデオを借りていました。

見れば見るほど似ています。声も話し方もそっくりです。「あの春香(仮名)ちゃんが こんなことしてる・・・」という驚きというか感動というか、そういうものはもちろん あったのですが、とても綺麗なおっぱいが印象的でした。AV 女優美乳コンテストが あったとしたら、私は迷わず浅川優子さんに一票ですね。あまり大きくはないのですが、 全体の形も良く、乳輪と乳首の色と形も非の打ち所がありません。

というのは本題とは関係ありません。とにかく、私の印象としては、浅川優子さんは 春香(仮名)ちゃんに間違いなかろう、ということでした。

その後、雑誌などで時々「浅川優子」の名前を見掛けることありました。何だか 色々なことにトライしているようでした。風俗系のお店に出ていたり(おそらく、 客寄せのためで仕事はほとんどしていなかったと思われます)、水商売のお店に 出たり・・・

そしてさらに時は過ぎ、去年の秋のことです。

私がたまたま寄ったクラブに、なんと浅川優子さんがいたのです。「AV 女優の 浅川優子」として店に出ていました。単なる客寄せではなく、AV の仕事のないときは、 きちんとお店に出ているということでした。

浅川優子さんが私の隣りにやってきました。妙に緊張しました。

「はじめまして、・・・・ですよね?」

と彼女。確かにその店は初めてでした。私は、

「ん・・・、うん」

と曖昧な答えをしていました。

ありふれた世間話をしていると、やはり春香(仮名)ちゃんにそっくりです。すでに 10 年以上前のことですから、それなりに歳を重ねていて、おそらく 30 歳に近いはず (あるいは超えている)なのですが、とてもそういう年齢には見えません。

公称は 24 歳ということですが、彼女が春香(仮名)ちゃんならば、それは確実に サバヨミです。メクジラ立てるつもりはありませんが・・・

過去のことを詮索するのは失礼かとも思ったのですが、私はとうとう誘惑に負けて 聞いてしまいました。

「昔、春香(仮名)という名前で働いていたことなかった? ○○というお店で」

「??? ありませんよ」

彼女の表情は変わりません。何か警戒しているのかと思い、

「○○で、春香(仮名)ちゃんには 2 回くらい会ったことがあるんだけど、とても いい娘で、優子にそっくりなんだよ」

「私、色んな人から誰々に似ているって言われるのよ」

「他人のそら似かなぁ。それにしてもよく似ているんだよなぁ」

「とてもいい娘だったんでしょ? 私はそれほどじゃないから」

とまあ、こんな会話があって、私も「気のせいか・・・」と思いました。なにせ、 春香(仮名)ちゃんには 2 回しか会っていませんし、10 年以上も前のことですし、 話した時間だって合計で 1 時間位ですから。

浅川優子さんも嘘を言っているようには見えませんでしたし。

その後は普通に普通の会話をしました。会話の調子も春香(仮名)ちゃんに似ている のですが、あまりそんな話ばかりしても失礼なので、あえてその話題は避けていました。

浅川優子さんは謙遜していましたが、接客態度はきちんとしたもので、AV 女優が いいかげんに仕事しているわけではありません。ホステスさんとしても、一流だと 思いました。

「それにしても似ているけど、本人が違うと言うんだから違うんだろう」と思い ながらも楽しい時間を過ごし、時間も遅くなったので、私は帰ることにしました。

お勘定を済ませ、出口まで送ってくれた浅川優子さんの姿を見て、私はとても 大切なものを見落していたことに気付きました。

彼女の右の足首には、銀色のアンクレットが光っていたのでした。

何か気の効いた一言を、とも思ったのですが、結局、私はそのことには触れずに、 店を後にしました。







                        
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