2000年4月28日 おじさんのシアワセ


最終まであと 2 - 3 本という電車の中、吊革に掴まって立つ私の前には、 3人のおじさんが座っていました。その3人をAさん、Bさん、Cさんとしましょう。

A B C

こんなかんじです。3人ともスーツ姿のサラリーマンで、40 - 50 歳くらいでしょう。

Bさんは雑誌を読んでいましたが、AさんもCさんも居眠りしていました。いや、 居眠りというよりは熟睡でしょう。

Aさんは比較的しゃんとした姿勢で眠っていたのですが、CさんはBさんに大幅に 寄りかかっています。Bさんの左肩に、完全にAさんの頭が乗っています。 Aさんの髪の毛はBさんの首筋をくすぐっているように見えます。

私がBさんならば当然、肩を動かしたり座り直したりして、Cさんが寄りかかって 来ないように注意を促します。でも、Bさんは黙って耐えていました。 おじさんにあれだけ密着されて耐えられるなんて信じられません。もしかして、 BさんとCさんは会社の同僚なのかも、などと考えていました。

しばらくすると、Bさんはやおら肩を大きく揺すって、Cさんの頭を払いのけました。 やはり、その状況を楽しんでいたわけでも、会社の同僚というわけでもなかったのです。 単に耐えていただけなんですね。

Cさんは、一旦はきちんと座り直しましたが、10 秒もしないうちに再びBさんに 寄りかかり、頭をBさんの左肩に乗っけてしまいました。ああ、またBさんの忍耐が 試されます。私の基準からすると、Bさんの忍耐力は超絶レベルです。私なら 5 秒も 耐えられませんが、Bさんはその後、数分間に渡って耐え続けたのです。

Bさんの肩がCさんのよだれで濡れてしまわないか、気掛かりだったのですが、 幸いにして、Cさんの口は堅かったようです。

さて、Bさんの忍耐の日々も終わるときが来ました。Bさんは(多分)乗り換えのため、 電車をおりたのです。

A   C

こうなりました。Bさんが座っていた場所が空いたのですが、誰も座ろうとしません。 もちろん私も。みなさん、Cさんの寄りかかり攻撃を見ていたのですから、 当然のことです。Bさん並みの忍耐力を持っている自信のある人など、 そうそういるわけがありません。

さて、寄りかかるBさんを失ったCさんはどうしたでしょう?  反対側の人に寄りかかった?

ブブー!

空き席をひとつ超えてAさんに寄りかかったのです。間に一人分の空間がありますから、 寄りかかったという表現は適当ではありません。膝枕ですね。CさんはAさんの太腿に 頭を乗っけたのです。

Cさんの膝の上に置いてあったバッグは、床に落ちてしまいましたが、その程度で 気が付くなら、膝枕状態になどなりません。落ちたバッグはそのまま放置されています。

さて、勝手に膝枕をされたAさんですが、幸か不幸か熟睡中でありまして、 それにまったく気が付きません。膝枕をするほうもされるほうも、 それと気付かずシアワセに眠っているのでありました。

ほのぼのとした、心暖まる光景です。

そのまま数分が過ぎ・・・・

AさんがようやくCさんの膝枕に気が付きました。「ん? なんじゃこりゃ?」 という感じでCさんの頭を払いのけました。さすがにCさんも、 自分がどういう体勢だったのかに気付き、まっすぐ座り直します。

しかし、しかし・・・

その 10 秒後には、CさんがAさんの方向に傾き出したのは理解出来るとして、 それまではまっすぐ座って寝ていたAさんまでが、Cさんの方向に傾きだしたのです。

A→ ←C

そして、かつてBさんが耐えていた空間で、AさんとCさんのほっぺた同士が 近づき、愛のランデブーが・・・

というところで、自宅の最寄り駅に到着してしまい、後ろ髪を引かれる思いで 電車を降りた私でした。







                        
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