最終まであと 2 - 3 本という電車の中、吊革に掴まって立つ私の前には、
3人のおじさんが座っていました。その3人をAさん、Bさん、Cさんとしましょう。
A B C
こんなかんじです。3人ともスーツ姿のサラリーマンで、40 - 50 歳くらいでしょう。
Bさんは雑誌を読んでいましたが、AさんもCさんも居眠りしていました。いや、
居眠りというよりは熟睡でしょう。
Aさんは比較的しゃんとした姿勢で眠っていたのですが、CさんはBさんに大幅に
寄りかかっています。Bさんの左肩に、完全にAさんの頭が乗っています。
Aさんの髪の毛はBさんの首筋をくすぐっているように見えます。
私がBさんならば当然、肩を動かしたり座り直したりして、Cさんが寄りかかって
来ないように注意を促します。でも、Bさんは黙って耐えていました。
おじさんにあれだけ密着されて耐えられるなんて信じられません。もしかして、
BさんとCさんは会社の同僚なのかも、などと考えていました。
しばらくすると、Bさんはやおら肩を大きく揺すって、Cさんの頭を払いのけました。
やはり、その状況を楽しんでいたわけでも、会社の同僚というわけでもなかったのです。
単に耐えていただけなんですね。
Cさんは、一旦はきちんと座り直しましたが、10 秒もしないうちに再びBさんに
寄りかかり、頭をBさんの左肩に乗っけてしまいました。ああ、またBさんの忍耐が
試されます。私の基準からすると、Bさんの忍耐力は超絶レベルです。私なら 5 秒も
耐えられませんが、Bさんはその後、数分間に渡って耐え続けたのです。
Bさんの肩がCさんのよだれで濡れてしまわないか、気掛かりだったのですが、
幸いにして、Cさんの口は堅かったようです。
さて、Bさんの忍耐の日々も終わるときが来ました。Bさんは(多分)乗り換えのため、
電車をおりたのです。
A C
こうなりました。Bさんが座っていた場所が空いたのですが、誰も座ろうとしません。
もちろん私も。みなさん、Cさんの寄りかかり攻撃を見ていたのですから、
当然のことです。Bさん並みの忍耐力を持っている自信のある人など、
そうそういるわけがありません。
さて、寄りかかるBさんを失ったCさんはどうしたでしょう?
反対側の人に寄りかかった?
ブブー!
空き席をひとつ超えてAさんに寄りかかったのです。間に一人分の空間がありますから、
寄りかかったという表現は適当ではありません。膝枕ですね。CさんはAさんの太腿に
頭を乗っけたのです。
Cさんの膝の上に置いてあったバッグは、床に落ちてしまいましたが、その程度で
気が付くなら、膝枕状態になどなりません。落ちたバッグはそのまま放置されています。
さて、勝手に膝枕をされたAさんですが、幸か不幸か熟睡中でありまして、
それにまったく気が付きません。膝枕をするほうもされるほうも、
それと気付かずシアワセに眠っているのでありました。
ほのぼのとした、心暖まる光景です。
そのまま数分が過ぎ・・・・
AさんがようやくCさんの膝枕に気が付きました。「ん? なんじゃこりゃ?」
という感じでCさんの頭を払いのけました。さすがにCさんも、
自分がどういう体勢だったのかに気付き、まっすぐ座り直します。
しかし、しかし・・・
その 10 秒後には、CさんがAさんの方向に傾き出したのは理解出来るとして、
それまではまっすぐ座って寝ていたAさんまでが、Cさんの方向に傾きだしたのです。
A→ ←C
そして、かつてBさんが耐えていた空間で、AさんとCさんのほっぺた同士が
近づき、愛のランデブーが・・・
というところで、自宅の最寄り駅に到着してしまい、後ろ髪を引かれる思いで
電車を降りた私でした。