例えば「塩酸ブロムヘキシン」、例えば「塩化リゾチウム」、
例えば「フマル酸クレマスチン」、例えば「塩酸ラニチジン」などなどなど。
これらは何だか分かりますか? 「そういえば、薬のコマーシャルで
聞いたような気がする」という方は多いかもしれませんが、
どのような物質で、どのような化学的性質があって、
服用するとどのような効果があるのかまでを詳しく知っている方は、
非常に限られていると思います。
医療関係の仕事に従事しているか、医薬関係の勉強あるいは研究をしているか、
それとも製薬会社関係か、そういった方々くらいしか「塩酸ブロムヘキシン」
の詳細を知っている方はいないでしょう。まあ、
雑学的に知っている人もいるでしょうが、その数は決して多くないでしょう。
自慢じゃありませんが、私だって「薬のコマーシャルで聞いたことがある」程度です。
ところが、家庭用医薬品のコマーシャルでは、これらの化学物質名が頻繁に
使われています。それも、例えば「塩酸ブロムヘキシン配合」ということを、
その医薬品の売りとしてアピールしています。多くの医薬品のコマーシャルにおいて、
難しい名前の化学物質がありがたい成分であることを、
積極的に知らしめようとしています。
「塩酸ブロムヘキシン配合」と言われて、そのありがたさが本当に分かる人は
どの位いるのでしょうか? 「レモン 1000 個分のビタミン C」も似たようなものかも
しれませんが、「ビタミン C」なら何となくは分かりますが、
「塩酸ブロムヘキシン」なんて、私にはなーーーんも分かりません。
各製薬会社が「塩酸ブロムヘキシン配合」的なコマーシャルを流しているのは、
いかがなものかと思うのです。少なくとも、一般消費者に対する誠実さは
感じられませんし、おそらくその狙いは「訳は分からずとも、
難しい名前で何となく効きそう、と思ってもらえる」ということなんでしょうね。
新興宗教やいかがわしいキャッチ・セールスの関係者の手口に似ている、
と思うのは私だけでしょうか? もちろん、「塩酸ブロムヘキシン」
の薬効を疑っているということではなく、難しい言葉で煙に巻く、
という感じが似ているのです。
例えば、「塩酸ブロムヘキシン」には副作用として「アナフィラキシー様症状」
があらわれる恐れがあるらしいのです。家庭用医薬品のコマーシャルにおいて、
副作用まで解説しろとは申しません。でも、「塩酸ブロムヘキシン配合!」
と主張するのなら、バランスとしては「塩酸ブロムヘキシン」
の副作用も言うのが当然でしょう。
医師や薬剤師に向かって「塩酸ブロムヘキシン配合!」と言うのなら、
効果も副作用も知っている(のかな?)人を相手なので、それはそれで良いのです。
でも、テレビ・コマーシャルで「塩酸ブロムヘキシン配合!」とやるのは、
キャッチ・セールス的手口と思われても仕方ないと思うのでした。
なーんてことを考えていたら、私の属するコンピュータ業界も
似たようなことをしているなあ、と思ったわけです。
「1.6GHz の高速プロセッサに 1MB の大容量 2 次キャッシュ搭載!」
(←実在の何かを指しているわけではありません、念の為)
なんてことやってます。まあ、PC ユーザの多くは、「1.6GHz」
も「1MB の 2 次キャッシュ」も分からない言葉ではないでしょうが、
これらのありがたさや落とし穴を本当に理解している人なんて、
本当に少数だと思うのですよ。ありがたさは比較的分かりやすいですけど、
落とし穴はかなり分かりにくいです。
これなんかも、家庭用医薬品ほど顕著ではないにしろ、難しい言葉で煙に巻く、
の類いかもしれません。