20 年も前の事をウダウダ言いたくはないのですが、最近になって、
その 20 年前のことを思い出させるようなことがありますもので。
当時学生だった私は、コナンとかゾンガーとかエルリックとかエレコーゼとか
ホークムーンとかグイン(まだ続いている)とかハリィ・ディールとかアンバーの八王子
とか、まあそういう類いの本をガシガシと読んでいたわけです。
ヘロイック・ファンタスィという奴ですな。ヘロイックとは言えないようなものも
ありますが、まあ、堅いことは言わないで。
そんな流れの延長線で、「指輪物語」というやつにも手を出してしまったのですよ、
これが。これ、最近になって聞くでしょ? 首都高環状線みたいなタイトル
(←ちと無理があるか)の映画の原作でおます。
「金 享」という方が書いたらしいです。英語では「トール・キン」
と言うらしいですけど。
で、その「指輪物語」です。よせばいいのに、
全 6 巻のうちの 4 冊を最初に買ってしまったのですよ。20 年程前のことですけどね。
かなり気合いが入っていたのです。6 冊全部ではなく、4 冊に留めておいたのは、
その時の持ち金の事情だったと思われます。忘れましたけど。
もしかしたら、5 巻目だけが売りきれで、飛ばして 6 巻目を買うのがためらわれた
からかもしれません。とにかく気合いを入れて買ったのですよ、はい。
最初の 10 ページでくじけました。
だから翻訳モノは嫌いなんだよな。きっと原作は面白いに違いないのに、
全然面白くないんだものなぁ、と涙目になって読み進むことをあきらめた、
若き日の高樹でありました。まあ、こういう経験をした人は少なくないでしょう。
私に原書が読めるはずもなく、自分の英語力のなさを棚に上げて、
分厚い 4 冊の「指輪物語」を前に翻訳者を罵っていたのでございます。
とはいえ、独り言で罵っていたわけではなく、サークルの仲間に愚痴っていたのです。
学生にとって、無駄になったこの出費はいたいのです。
そんな私を見て、同じサークルに属していたアメリカからの留学生の William
君が飲みに誘ってくれました。まあ、特別なことではありません。
彼と二人で飲んだ経験はあまりありませんが、
何人かで飲みにいくことはしばしばありましたから。
彼は日本語がたいそう達者でして、日常会話は日本語でオッケーです。
因みに、ファースト・ネームが William ですから、
愛称は Bill となります。我々は当然、「ビル」とカタカナで呼んでおりました。
そのビルですが、居酒屋に行くと必ず「ビルはビール」という駄洒落を言うのです。
もちろん彼は、日本人が Bill をビルと言い、 beer をビールと言うのを
知っているのです。彼にとって、駄洒落は立派な日本文化なのかもしれません。
アメリカ人のくせに日本語の駄洒落を連発するのです。
デーブ・スペクターみたいなもんです。
その日も居酒屋で、「ビルはビール」が出ました。
その時に気付くべきだったのですよ、その次の駄洒落に。
でも、あまりに高度な展開でありまして、私には到底そういう発想はなかったのです。
自分のビールを注文したビルは、私に向かって言いました。
"You, beer?"
突然の英語ですが、この位は分かります。「お前もビールか?」と尋ねているんです。
「うん、俺もビール」などと私が答えるか答えないかのうちに、彼は言いました。
「ユービア物語」
きっと彼はこれが言いたくて、私を飲みに誘ったに違いないのです。