2002年5月17日


遠山の金さんの謎


遠山の金さんといえば何回も何回もドラマ化されていて、みなさまよくご存知のはず。 水戸黄門とまではいかなくとも、国民的な時代劇と言っても過言ではありません。

遊び人の金さん(実は北町奉行)が事件を解決し、お白砂で桜吹雪の刺青を見せて大団円、 という美しい予定調和の世界であります。そのお白砂の場面は、

「これより木場の船大工、弥助殺しの一件について吟味致す。一同の者、面をあげい」

などと始まり、

「廻船問屋播磨屋藤右衛門、そのほう、逢坂からの将軍家御用達の荷を一手に引き受ける 立場を悪用し、ご禁制の品の抜け荷により私服を肥やさんとしたばかりか、 その悪事をたまたま耳にした船大工の弥助を、そこの浪人田辺主水と図り殺害せしこと、 取調べにより明白である。左様、相違ないか」

などと続くのであります。もちろん、播磨屋藤右衛門は自らの罪を認めるはずもなく、 シラを切るのです。で、あーだこうだとやり取りがあり、奉行も白々しく、 金さんが重要な証人になるかのように話を展開し、

「遊び人の金さんなる人物がそれを目撃しておる」

などと言う訳です。すると藤右衛門は勝ち誇ったように、

「お奉行ともあろうお方が、そのような遊び人風情の申し立てを信じるのでございましょうか。 その金さんとやら、この場に連れて来ていただきたいものです」

とうそぶきつつ、ドラマの展開に協力的なところを見せます。さてさて、ご存知のように、 次の展開は、

「やいやいやいやいやい、黙って聞いてりゃいい気になりやがって。お天道様はごまかせても、 この遠山桜はすべてお見通しでい。目ん玉かっぽじって、よーく見やがれ」

で、「へへー」となって話はおしまいです。

何でこんな、あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々しい展開をわざわざ書いたかと言うと、 枕詞とは全然関係ありませんで、小学生の頃から遠山の金さんを見ては疑問に思っていたことが あるからです。

お白砂には色んな人がいますが、奉行の斜め後ろあたりには、書記と思われるおっさんが座っていて、 なにやらサラサラと書いています。その場のやり取りを記録しているのでありましょう。 彼は「これより木場の船大工、弥助殺しの一件について吟味致す」とか 「廻船問屋播磨屋藤右衛門、そのほう、逢坂からの将軍家御用達の荷を・・・」 とか書いてるはずです。

ということは、彼が職務に忠実であるならば、「やいやいやいやいやい」とか 「目ん玉かっぽじって、よーく見やがれ」とか、そういうことだって書いているのでありましょうか?  お奉行ともあろうお方が公の場で「やいやいやいやいやい」などと発言したことを、 公式記録に残してしまってよいのでしょうか?

テレビを見る限りでは、奉行がべらんめえ口調になってからも、 書記のおっさんは全く動じることもなく、さらさらと何事かを書き続けています。 彼は忠実に記録しているのか、それとも事前に奉行に言いくるめられていて、 「まーた、あの展開かよ」などとぼやきつつも、適当な言い回しに翻訳しつつ記録しているのか、 その点が小学生の高樹の疑問なのでありました。

そして、それは未だに解決されない疑問でもあります。




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